「大半がワクチン接種済み」の検定:米クルーズ船のコロナ陽性

米クルーズ船で48人がコロナ陽性、大半がワクチン接種済み」というロイターの記事がありました。タイトルが「大半がワクチン接種済み」と、曖昧な表現である割に、本文内にきちんと数字があり、6091人中48人が陽性(乗船者95%、陽性者98%がワクチン接種済み)ということがわかりました。これを使えば大まかな検定ができます。このデータだけからでは、差はあるが有意な差とは言えない、というのが結論です。(少人数なので、当然の結論)

まず記事はこちら

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[20日 ロイター] - 米クルーズ運航大手ロイヤル・カリビアン・グループは20日、クルーズ船「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」に乗船していた48人から新型コロナウイルスの陽性反応が出たと発表した。
ロイヤル・カリビアンによると、48人は無症状、もしくは軽度の症状を発症していた。
このクルーズ船には乗員乗客6091人が乗船し、11日に出港した後、18日にフロリダ州マイアミに帰港した。
乗船していた人の95%、および陽性反応が出た人の98%ワクチン接種を完了していた。
オミクロン変異株の感染拡大がクルーズ船業界の回復を頓挫させる可能性があるという懸念が強まる可能性がある。

陽性者48人のうち98%ワクチン接種済みなら、47人が接種済み、1人が未接種ということになります。

一方、6091人中95%がワクチン接種という場合、実際の人数は少し曖昧です。計算した所、接種人数が5756人~5816人ならば95%という数字になります。この数字から、ワクチン未接種者は、335人~275人になります。

ということで、とりあえず接種人数5756人非接種335人の例で考えてみます。

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全体の陽性率は、48/6091なので0.788%です。だから、もしも接種済み、未接種で差がなければ、どちらもこの比率で陽性者が出るはずだ、と考えます。すると上の表は

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となります。接種済み、未接種のグループどちらも陽性率が0.778%になるように、太枠の中だけを修正したものです。これを期待度数と呼びます。(整数でなくてもOK)

続いて仮説検定。独立性の検定を使いました。接種済み、未接種で陽性率に差がない、本来下の表のはずが、偶然上の表の結果が得られた、と仮定します。この仮定で、上の結果が得られる確率を求めるとp値になります。それぞれの4数字の差の2乗和を計算、χ2乗分布というものを使って計算します。

結果はp値=0.297でした。偶然起きる確率が3割程度。多少の差はあるが、有意な差とは言えない、という結論です。(接種有無で陽性率に差があるとは結論できない。差がある可能性もあるが、無い可能性もある、わからない、となります。)


一方、接種人数5816人非接種275人であった場合は、

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という表が得られ、同様の計算からp値=0.415が得られました。この場合、最初の場合よりも未接種者を少なく見積もっているので、差は出にくくなります。(半分位の確率で、偶然だ、となります。)

この事例だけではサンプル数が少ないため、差が確認できませんでした。これがとりあえずの結論です。


検定について補足。
このように統計の特徴として、サンプル数が少ない時は、有意な差が出にくくなります。上の例では傾向はあっても有意差までは確認できませんでした。特に未接種者の感染が一人であるため、偶然の可能性が高くなっていると理解できます。
もっと大人数の結果であれば、偶然である確率は下がってきます。例えば全部の値が10倍だとすれば、数字(比率)の信頼性が上がり、p値は0.01より少し小さくなります。このような結果が起きる可能性は1%以下だ、めったに起きないはずだ、となります(事前に危険率を1%としていた場合)。つまりサンプル数が増えることで、データに信頼性が出て来るわけです。

データが少しづつ集まるとき、最初は症例として出て来ます。この状態で検定を行っても、数が少ないため有意な差は得られません。まだ何とも言えない、となります。しかしデータが集まってくると、段々偶然でそれが起きている可能性が減ります。だから信頼性があがる、と結論できるようになります。

言い換えると、統計的な有意差が出るより前に、大まかな傾向はわかります。だから普通、その筋の専門家が傾向に気づき、危ないと考えれば警鐘をならします。データが集まると同時に、様々な分析が行われるはずです。

新型コロナのワクチンの場合も、1年位前まではワクチンに関して多くの疑問が報じられ、不安要素も指摘されていました。しかし今年実際に接種が始まり、副反応の多さが注目する発言があっても、それは「反ワクチン」というラベリングと共に封じこめられてしまった。そして死亡者がどんどん増え統計的有意差が出てもなお、ワクチン推進が止まらない状態です。異常としか言いようがないと思います。


何かの問題で統計で有意な差が確認できたら、実はもう遅いのです。
多くの公害、薬害から私たちは学んだはずです。
私たちはまだ知らないけれど、何かの因果関係があるはずだ、と。

今からでも遅くない。科学的な評価を無視しないで欲しい!