ワクチン効果減少のグラフアップデート

新型コロナウイルス感染対策アドバイザリーボードの事務局提供資料で、「未記入を未接種に」問題がありました。これによってワクチンの効果が高いように見えていた問題です。さらに、古い人口データを使っていたため、さらに10万人あたりの感染しやすさの誤差が大きい明らかになっています。(概略は、「なぜ1年前の人口データを使うことが問題なのか 」にまとめています。)

しかしこれまでデータを処理してみたもの、いくつも推測を含んでいるので気になっていました。今回は、いくつか仮説を立て、人口補正に関してもより実態に近いと思われるものを使い、最新情報まで含むグラフを作成してみました。


以下はアドバイザリーボード第80回(4月13日)~第92回(7月27日)のデータをそのままグラフ化したものです。感染確認の対象期間としては、3月28日~7月17日になります。

例えば最新のデータはこちら:

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このようなデータを元にグラフを作成しました。1つの棒グラフはほぼ1週間分(上は例外的に17日分)。各年代それぞれ右に行くほど新しい情報になっています。

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20代~80代(60代は60~64歳、65歳~69歳)に分類した上で、未接種、2回、3回接種で陽性確認された人数を、人口10万人あたりにし、そこからワクチンの有効性を計算したものです。

このデータでは、実際の効果の数値は信頼できません。年代別に大きく値が変わっていることからもわかります。それでもワクチン接種の効果が時間と共に下がっていると推測できます。

このグラフの元情報では、人口は令和3年(2021年)1月1日現在の住民基本台帳を使っているとの記載があります。確認すると、1回接種の人数が掲載されていない分、対象年齢毎の合計が変化しているように思いました。(これまでは、この部分の変化を誤差として無視していました)

そこで人口データの修正を行いました。すでに1年半経過しているので、今回は2021年1年間でどの程度の増減があったのかを調べ、仮に1年3か月後(2022/4/1)の人口で再計算してみました。

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元データを使った場合より、直感的にもより自然になっていると思います。それでもまだ65歳~69歳だけ、かつ最近のデータだけ特異的に小さな値になっている部分があるので、補正に問題が残っているのかも知れません。全機関で同じ人口データ=2022/4/1相当を使っているので、少しづつずれが大きくなっている可能性があります。


なお、このデータは後ろ向きの評価ですから、このままワクチンの効果が低い、と結論することはできません。


1回接種人数について:2021/11/14分までは、アドバイザリーボードは1回接種の人数を発表していました。そこから推測すると、今は1回接種の人数は記載していないもの、未接種、2回、3回の合計が変わるのは、1回接種人数の変化によるものと推測できました。(住民基本台帳の数値は固定で、1回接種人数がかわっていると考えられる)

人口の修正方法:2021/1/1現在の住民基本台帳の数値と、e-Statで調べる人口データにずれがありました。このため修正は、e-Statで2021/1/1と2022/4/1の差を2021/1/1の住民基本台帳の数字に加えた形としました。
以前は、e-Statで見つかった2022/4/1のデータそのものを使っていましたので、今回の修正方法とは異なります。従って結果も少し異なっています。

接種歴不明問題:ワクチン接種歴未記入は未接種にはならなくなったものの、接種歴不明の割合は相変わらず多い状態が続いています。例えば90歳以上では27%(第92回資料)となっています。この誤差は小さくないと考えられます。

後ろ向きの評価:このデータは後ろ向きの評価ですから、結果からさかのぼってワクチンの有効性を推測していることになります。本来行われるべきランダム化実験(前向きの評価)ではないので、データに様々なバイアスが含まれている可能性があります。