傑作だったフェアリーテイルレクイエム
以下プレイ後の内容にも触れた感想
フェアリーテイルレクイエムの読後感がかなり良かった。精神疾患を題材にしている作品としてさよならを教えてなどは幻覚を幻覚と思わず読者も共有して、ネタ晴らしで真実に気づかせる。今作はあらかじめ主人公も周囲のキャラクターも精神疾患の治療をしていることを自覚したうえで幻覚も交えた会話をすすめていく。だからこそだろう、背景のグラフィックなどが悪趣味な絵本じみているセンスの良さでもう大好きな世界観だと思わせてくれた。
最後レクイエムモードのネバーランドストーリーの後味の悪さ、狂気はさよならを教えてよりも強いのではないかと思うほど。最初にこれが正規エンドかと思って読み進め、一度問題を解決し正気を取り戻していくかと思わせてから前より深い谷に落とす救いの無さに驚愕していた。シーン鑑賞が埋まっていないことで正規エンドが在ると分かり少し安心した。ドロシーの出番少なすぎたし。
正規エンドでは超常的な展開もありつつ、それを踏まえてでも読み進めるのが面白かった。一人一人のエピソードを明らかにしていき、解決に向かうと思いつつも先にネバーランドルートを読んでいたためかもしかしたら現実から目を背ける幸せという結末に行くのではないかと不安もよぎっていた。全員が生存して結末を迎えられることに幸福感を抱けたのも、最後に至るまでの段階で過酷な描写もありつつどの登場人物も魅力的に描かれていたからこそだと思う。
一度できたつながりや関係性が失われることの悲しみを、せめて物語の中だけでも幸せな形でむかえて欲しい。大切な時間、時期を共に過ごした仲間の存在は掛け替えのないものなのだろうから。
最初から最後まで世界観やキャラクターや童話ごとの文体、グラフィックの良さ、全てが本当に良かった。好きな作品と出会えて本当に良かった。そして前々から気になっていたゲームではあったのだけれど、絶対にやろうと思うきっかけは杏花さんがイラストを大石竜子さんに依頼していたため。改めて杏花さんに今後もついていこうと思う。