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リニューアルした藤田美術館は〈理想の美術館〉そのものだった

皆様ごきげんよう。

6月某日。ようやく、ようやく藤田美術館に行ってきた。

2017年に建て替えに伴い1度閉館し、今年4月に満を持してリニューアルオープンした大阪市都島区の藤田美術館。
凄いことになっているという噂は聞きつつ行けていなかったが、ようやく初探訪と相成った。

リニューアルの経緯についてはこちらが詳しい↓


外観  筆者撮影
ピッカピカ



券売所が無い

ガラス張りの館内に入ると、エントランススペースがダァっと間仕切りなしに広がっている。


入場料を支払うスペースはもう1つ扉の先なのかと蔵の入口をくぐりかけるとスタッフのお姉さんに引き留められた。
入場料はスタッフさんと直接やり取りする仕組みだそう(失礼しました)。
将来的には全面キャッシュレスを目指しておられるということでデビットカードで入場料1000円を支払う。なるほどこれは便利だァ


キャプションが無い

入場料を支払うと、館内のWiFiとキャプションのページリンクのQRコード2種類をスマホで読み取り展示室内へ。

そう、これが今回めちゃくちゃ感激したポイント。

キャプションとは展示品の来歴や意義を100~150字程度で解説したものである。

私は博物館・美術館をよく訪れるようになってからずっとひそかに思っていた。

ぶっちゃけ展示室で読んでも内容頭に入らん、と。
あとから自分で調べたことの方が記憶には残る、と。

(※学芸員の方々が文の作成に大変心を砕いておられるのは存じ上げております🙏)

しかし不思議とその展示品、モノと対峙した瞬間の光景は覚えているものなのだ。

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話が少し逸れるが、私はある年の正倉院展で、隣で鑑賞していたご婦人に話しかけられたことがある。

奈良時代の履物を見ながら、「私のおばあさんは朝鮮半島にルーツがあり、昔これと同じようなクツを見せてくれたの」「大陸から海を渡って文化が入ってきたのね」と彼女は感嘆しながら私に語ってくれた。

合っているとか合っていないとかそういう問題ではないのだ。

あぁ、学術的な情報や歴史的事実をなぞっているだけでは見えてこないものがあるんだな、とストンと腑に落ちた。

その時から、もっと人それぞれの【鑑賞体験】【展示品との対話】を大切にしたいと思うようになった。

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展示室内に入ると、落ち着いた照明のなかでまるで展示品が浮かび上がるかのような空間が広がっている。

展示室内  筆者撮影

順路は自由なので、好きなように見て回ることができる。そして展示品との距離がかなり近い。

まさに【じっくり対話する】にはうってつけの環境……!!

月替わりで1章ずつ展示が変わっていく3章構成の展示は、サラッと見ようとすれば小一時間もかからない。私は曜変天目で気づいたら15分時間が溶けていた。

↓現在見られる展示


また、スマホで読める展示品解説のキャプションは、全く読まずに見ることも出来る。もちろん見ながら回っても良い。

まさに人それぞれの鑑賞体験。

できるだけモノと対峙する、対話することの妨げになるものが減らしてあることで、人それぞれの鑑賞体験が尊重されていると感じた。素晴らしい仕組みですよ……

写真撮影・シェア可

めっちゃびっくりした。

全て、である。

重要文化財も国宝も全て。

スマートフォンでの撮影に限られているが、写真撮影可能なのである。

展示されているのが全て藤田美術館の所蔵品であるから為せること……スゴすぎる……

↓6月末まで公開されていた国宝 曜変天目も撮影可能だった

藤田美術館が所蔵、展示しておられるのは【美術品】である。
かつて様々な人物にその美を見初められ、愛され、世の中を渡ってきた美術品たちだ。

自分の目で見て「美しい」「良い」「好き」と感じたことを、他の人に写真を使って伝えることが出来る…… 

かつて数寄者たちは茶会で自らのコレクションを披露したと言うが、これは令和の新しい 美のシェア の形なのかもしれない。


開かれているが閉じている、閉じているが開かれている

かつては収蔵庫としての役割をフィーチャーされがちだった博物館・美術館も、最近は「開かれた」空間であることが求められるようになってきた。

しかし迂闊に厨房設備を伴うレストランなどを併設すると、今度は収蔵品を守る環境が脅かされることもある。

蔵(展示室)の外は明るく開かれた空間
蔵の中は展示品とじっくり対話できる場

藤田美術館のメリハリの効いた空間構成は、どちらも両立させているのではないだろうか。

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おわりに

博物館や美術館がリニューアルオープンする時に立ち会えることはそう多くない。

気になったら是非1度足を運んでみてほしい。

「良すぎて秘密にしておきたいけど、やっぱり誰かに教えたい」

そう思うこと請け合いである。

展示室を出たところ  筆者撮影
庭園を臨む  筆者撮影


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