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認知症診療・ケアの過去と未来についての雑感

認知症診療の変化と急増した患者数

この10年で認知症の診療は、大きく様変わりしました。一番変わったのは、高齢者人口の増加に伴い、患者さんが増えたことでしょう。現在認知症は「コモンディジーズ」といってかかりつけ医で見ていきましょうという方針が立てられました。
そして、多くの施設ができて、認知症ケアも、随分と一般的になりました。この急激さに相まって、認知症の診療もケアも随分のバラエティに富んだものになってきていると思います。


質の担保と負担増加の課題

ただ、たくさんの人が関わっていただける反面、医療もケアも提供される質の担保の課題が大きくなってきました。そうすると今度は、さまざまな資格ができたり、施設基準が増えたりします。診療報酬になると、書類やカルテへの記載事項が増えます。従来から頑張ってやっていた人にとって結構な負担になる場合もあります。患者さん・利用者さんを見るよりもどの加算が算定できるかばかり見てしまう人が出てきても無理もありません。


維持コストの増加

また一つ一つの改訂に合わせて、技術的なコストに支払う額もバカにならなくなります。オンライン資格認証の仕組みには導入時には補助金がありますが、そのメンテナンス費用や更新費用については担保されていません。今回の電子処方箋は、持ち出し分も結構ありそうです。これも認知症の人にはとてもついていけない制度ですね。


認知症の人口予測と介護業界の未来

これらの問題は、認知症を発症した人にとっても、厄介なことです。認知症の診断をただ得たいだけなのに、どの病院を選ぶか迷ってしまいます。介護保険制度は中立、自立支援が基本のはずですが、ケアが市場化されてきていることから、競争原理が激しくなっているようにも思います。お任せでは適切なケアが受けられない可能性もあります。
わが国では、認知症の人はますます増えるという予測がたくさんされています。日本以外の欧米諸国では認知症の人は減少傾向になっています。理由は諸説ありますが、はっきりしていません。日本でもレカネマブの登場で早期診断を希望する人が一定するおられると思いますが、私や私の周囲の専門家の一部では欧米と同じように認知症の人の数は減ってくると予想しています。認知症に関する医療・介護はこれから10年で、さらに大きく変動していく可能性もあると思います。

https://globe.asahi.com/article/13850368




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石原哲郎|脳と心の石原クリニック院長
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