感動は分かち合えない
思えば,大学生になってから,長期休みは必ずどこかに出かけている.
必ずしも全て旅行ではないが,特に夏休みは家賃を払うのが勿体無いくらいにアパートにいない.昨年の夏休みはその極みで,8月上旬〜9月下旬でアパートで寝たのはたぶん5日もない.
一人でする旅と,友人とする旅.どちらが好きかと言われると,完全に前者だ.
友人と行く旅は必ずプラン決めは友人に任せる.というより,旅に行きたい友人に誘われたから行くという方が正しいように思う.別にこれが嫌という訳ではないが,大抵誰かと行った旅行は「そこに行ったことがある」という事実以外あまり印象に残らない.たぶん,「行ってみたい」のレベルがそこまで高くないからだろう.
「本当に」行ってみたいところには,一人で行きたい.なぜか.
それは,そこに着いてしまったら満足してしまうから.本当に行ってみたいところに行くときは,そこへの道中が一番楽しく,到着して写真に数枚収めたらもう十分なのだ.周辺のお店を散策したり,お土産を見てもいいけれど,その頃には既に気持ちが冷めてしまっている.そこに誰かいるとはっきり言って面倒だ.そこに行くのが目的なのであって周辺地の観光は目的ではない.お土産選びを楽しんでいる友人を待つ時間ほど虚無なことはない.そう感じている自分に気がつくのもなんとなく嫌だ.そこで「観光がしたい人」には付き合えない.
だから,「ここ行こうよ」と友人を旅行に誘うことは基本ない(付き合いの深さに関係なく).食事レベルならまだいいが,旅行は無理.
思えば,かつての私にとって東京は憧れの土地だった.東京での暮らしが夢だった.最初は全てが新鮮だった.テレビでしか見たことのない場所が歩いて行けることに気づくと感動した.その感動は2ヶ月後には消え去っていたが,どれも一人で味わっていた.
本当に見たい世界の感動は一人で味わいたい.
新しい土地に行くことは全く嫌いではない.死ぬまでに47都道府県全て行くという野望を秘かに持っていたりもする.でも本当に行きたいと思っている場所には一人で行きたい.私はおそらく,他人の感動を分かち合うことはできない.