
路線バス
路線バスに乗って、終点まで行くのが好きだ。
まずは電車に乗って、知らない駅で降りる。駅前のバス停をウロウロして、なるべく長く乗れそうなバスを探す。バスの運行図や停車する数を見ているのは、とても楽しい。
そしてなんだか良さそうなルートを選び、バスに乗る。座る位置は、歩道側。理由は、街の様子がよく見えるからだ。終点に到着するまでの間、街中でのできごとや景色を存分に楽しめる。
バスは駅前から急に細い道に入ることもあれば、予想外の大きな通りに出ることもあり、驚かされる。時には、生活空間にまで入ったかのような錯覚にとらわれて、おもしろい。
車窓から見える景色も、移動と共に変化して行く。駅前では、低いビルやチェーン店がよく見受けられる。ビルに入っているテナントの看板を眺めているうちに、だんだんと人の数も少なくなり、小さな雑居ビルや住まいが多くなっていくようだった。
住宅街に近くなると、住民の生活にぐっと近くなるように思う。豆腐屋さんや八百屋さんといった、小さな商店でお買い物をする人々。公園で遊ぶ子供たち、両親に連れられて来る幼な子、飼い主さんと楽しそうに歩く愛犬たち。普段通りの日常が垣間見え、窓越しに同じ時間を過ごしているような気がして、楽しくなる。
自分の居住空間とほぼ同じ光景であるにも関わらず、心を奪われるのは、きっと、車窓の外だからだろう。バスの移動と共に、すべてが後ろへ後ろへと過ぎ去っていく。いつもとは比べ物にならないスピードで、たくさんの情報が入って来るからかもしれないとも思えた。
終点に着くと、いったんバスを降りる。次の発車まで時間がある時は、少し歩き回ってみるのも楽しみの一つだ。冒険でもしているかのように、来た道を戻れるように覚えながら、街路樹や公園、商店などを見て回る。
ただし、周りが住居のみの場合は、バス停からは動かない。ウロウロして不審者と間違われては困るから。そんな時の強い味方が、オーディオブックである。イヤホンをつけて、静かに耳読を楽しむことが多い。移動できなくても、知らない街の風を感じながらいると、なんだか小旅行にでも来た気分になるから不思議だ。
路線バスに乗って終点まで行くと、その街ならではの時間の流れを感じることができる。また来たバスで戻ることもできるし、別のバスでさらに違う場所へと行くこともできる点も好きだ。
いつも違った景色や発見にも出会うことができる、知らない地域の路線バス。のんびり屋の自分に、ピッタリだな!と、よく思う。