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メタモルフォーゼとわたし〜その中で何が起きているの?〜
夫が大学構内の木からアゲハチョウの幼虫を何匹か連れ帰ってきて育てているのだが、先週末から日毎一匹ずつ羽化して飛び立つのを見送っている。
今朝も一匹、羽化した。
慎重な子なのか、朝からずっとベランダの内側の壁に止まったままずっと羽を乾かしているようだった。
お昼前、用事を済ませた後不意に気になって網戸越しにそっとのぞいてみると、まだそこにいる。
仕事中の夫に「今日の子まだベランダにいるー」とLINEしてみる。
「本人のペースで」と短い返信。
そうだよねえ…と思いつつ
「あなたはのんびりさんだねぇ。かわいいねぇ。思う存分そこにいたらいいよー」
などとのんきに話しかけていると、アゲハチョウは羽を震わせた後、ふわふわふわーっとわたしのそばにやってきた。
あ…と思った瞬間、そのまま華麗に向きを変え、ベランダの柵を軽やかに越えて、空高く飛び立っていった。
わぁ…なんて素敵なんだ。
ここのところ毎日こんな風に、メタモルフォーゼの神秘に感嘆しつつ美しく飛び立つ蝶を見送っている。
人間の心にもドロドロになった後には華麗な変態があるのだ。
そう信じたくて、こんなしんどい仕事を諦めずにやっているのかなわたし、と今日のアゲハチョウを見送りながらなんかすごく思ったのだった。
わたしはあおむしが好きだ。
鮮やかな緑色も、むにむにと動く姿も、
びっくりしたらツノと臭いを出して相手を威嚇しようとするところも。
それを気持ち悪いと感じる人が少なくないことも知っている。
だけどわたしは好き。
そこからサナギになる。
わくわくする。
「その中で何が起きているの?」
ドロドロになる過程を経て完成する、蝶の美しさに心底圧倒される。
「その中で何が起きているの?」
知りたい。見つめたい。見守っていたい。
目の前の人は自力を尽くして蝶になり、まばゆい光を受けて羽ばたく。その姿を見送る。
そのうつくしさを目の当たりにしたくて、
わたしはこんなしんどい仕事を諦めずに続けているんだろう、きっと。
なんかそんなことを思った。
たくさんの苦悩を分かち合った後にその日が来て、目の前から飛び立っていく、色とりどりの蝶をこれからも、眩しく見送りたい。
わたしは大丈夫だ。
こんなことでへこたれたりはしない。
いつか来るその日のために、わたしはここで待ち続けよう。
わたしの中のサナギとも向き合いながら。