Who can read the future?(2)~”風”が通り過ぎた後に~
妹曰く。
昨日の朝、父のいつもと違う様子(しんどそう)に母が気づいた。
(我慢強すぎる父がしんどさを訴えるなんてありえない事態)
慌てて母、かかりつけ医に電話。積雪もひどいので救急車を呼ぶよう勧められたが父が拒否。
母必死で雪かきをし、なかなか歩みの進まない父をなんとか車に乗せ、
かかりつけ医院まで出発しようとしたところに妹がたまたま電話をかけた。
娘たちにとにかく心配を掛けたくない両親は、このことを言わないつもりでいたが、電話がかかってきてしまったので隠しきれず妹に話した。
妹、心配しながらも気を付けて行くように言い、また、
妹はそうきっぱりと告げ電話を切った。
しかし、そうか、今日姉とかわいい姪っ子はLIVEに行くと言っていた。
すごく楽しみにしている様子だった。
・・・いつ話そう。
意を決して電話をしたら、ちょうど会場に着いたところだと。
・・・言えない。
今は話せない、と思った。
あちらは大雪という。運転は危険だ。帰りのドライブも気を張っているだろう。無事帰ったことを確認して、深夜に電話をしよう。
無事帰宅したようだが深夜のLINEには返信が来ない。
疲れて眠ってしまったのか。
そんなわけで、、結局昨日のうちには話せなかった。
妹は泣いた。
そこでやっとわたしは、
あたたかい風に吹かれ、夢を見ている間に
自身をとりまく現実が大きく形を変えていたことを思い知ったのだった。
母は昨日から今までいったいどんな気持ちでいるんだろう。
父は?
どうやら今朝また母は、病院に呼ばれている。
父は朝、入院先でまた新たな危機に直面したよう。
そのまま緊急手術になったとのこと。
時間は刻々と過ぎていくけれど何の連絡もない。
不安が募る。
こんな時、物理的な距離は心理的な距離をなかなか埋められない。
母のそばにも、
妹のそばにも、
いることができないのが苦しかった。
(地元は日帰りできない距離、妹の住む所はうちと地元の中間地点くらい)
・・・帰ろう。
夫も帰っておいでと言ってくれた。
子どもたちのことは何とかするからと。
少し不安そうな表情をした娘が
お守りを作って持たせてくれた。
ありがとう。
その日はまだ大雪で
駅に行き着いてからローカル列車が走っていないことを知るのだが、
なんとか最寄りのスーパーまでタクシーを呼ぶことができ、
ぼこぼこの氷の夜道をJRの駅まで急いでもらった。
すぐに乗れる特急列車のチケットを、と窓口へ。
「あと5分ほどで、遅れている特急が来ます」
その日は中間地点の大阪で一泊。
事情を話したら「おいで」と快く招いてくれた親友は、
翌朝乗る高速バスのターミナルそばのホテルを取ってくれていて、
一緒に泊まってくれた。
あたたかさに泣いた。
そのやさしさに守られて、安心して眠れた。
翌朝、バスターミナルにて妹と合流。ふたりで高速バスに乗った。
嘘みたいな状況だ。昨日までこんなことになるなんて思ってもみなかった。
そもそも、金曜の時点では、
わたしも妹も、それぞれ父と、フツーに「いつもどおり」電話をしていたというのに。
高速バスの終点で迎えてくれた、いつも若々しかったはずの母は、
おそらくこの2日ですっかり老け込み、背中も丸くなってしまっていた。
(・・・続く)