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【ポケットモンスター金銀】雑談 なぜワタルははかいこうせんを撃ったのか(ただのワタル語り)

2023/1/31、「はねろ!コイキング」(以下はねコイ)というスマホアプリゲームがAppStoreからのDL可能期間を終了しました。はねコイとは、コイキングを育てて世代交代しながら「はねる」によってどれくらい高くはねることができるかを競う大会に出るという超ゆるゲーです。わたしにとっては、友達に「何も考えなくていいゲームやりたい」と言われた時に秒でオススメしたところ、一緒にはまった思い出のあるゲームであり、グラフィックが可愛くて音楽も耳に残るとにかく何も考えなくていい優しい癒しのゲームです。
そんなはねコイのDL終了を聞き、わたしは感傷に浸りながら当時のスクリーンショットを漁っていたところ、以下のスクショを見つけました。

ドラゴンとマント好き…?
有名なトレーナーさん…?

ゲームを進めると出てくるイベントの一つ、ファンレターを貰えるイベントです。ペンネーム「ドラゴンとマント好き」は十中八九ワタルだと思われますが、アホすぎてめちゃくちゃ可愛くないですか??本編におけるワタルの自称は「ドラゴン使い」だと思うのですが、そこにマントの要素を入れることで近年マント好きというネタ属性を付与されているワタルに特定されるわけですね。それでドラゴンとマント好きというペンネームになり、ちゃっかりドラゴンが好きということまでアピールしちゃってて可愛いです。
懐かしいな、わたしワタル好きだからテンション上がったな、ワタルってコイキングのはねる高さを競う大会に出場していたはねコイ主人公にファンレター送っちゃったりする可愛いやつなんだな…と当時を思い起こしていたところ、なんだかめちゃくちゃテンションが上がって今ワタルがアツイ!!
なので熱の冷めないうちに語っておこう。そんな次第で語ります。

なぜワタルははかいこうせんを撃ったのか


ワタルの魅力は人によって様々かと思いますが、わたしはそもそも自分が強キャラという属性が好きであるので、ワタルに関してもそこが一番大きい要因かなと思っています。(あとマントが好き…)
ワタルはポケモン屈指の強キャラです。強キャラとは?という話から始めますが、ここでいう強キャラってのはわたしが勝手に名付けたキャラクター分類の一つであり、一般用語じゃないんであんまり真に受けないでいただきたいところです。雰囲気伝わればいいんですけど、作品の中でも、
・格が高い
・常に余裕がある
・強い(物理、メンタル)
このへんの要素が備わっていたら大体強キャラです。ポケモン金銀のワタルは、主人公と一緒にロケット団と戦い、最後にチャンピオンとして主人公と戦うキャラクターですが、まさにこの3条件を満たしたキャラクターなんです。

ポケモン金銀のシナリオ

ここで、ポケモン金銀というゲームの話をさせてください。ポケモン金銀はポケモンシリーズの2作目に相当します。ハードはゲームボーイカラーで、めちゃくちゃ古い作品ですね。当時のハード性能は今より低く、グラフィックはドットでサウンドは8bit、容量だって今よりずっと少なくて、表現できる幅だって今よりずっと狭いはずです。とはいえ、だから最新のゲームより劣るのか?といえばそんなことはなく、当時のゲームには当時なりの良さがあったわけですよね。当時のプレイヤー達はドットのグラフィックから壮大な冒険を想像したわけです。
金銀はポケモンシリーズ2作目ですが、記念すべき初代の赤緑はどんなシナリオかというと、ポケモンを仲間にして旅を続け、道中悪の組織を倒しつつも、目標であったチャンピオンを目指すというシンプルなものです。今に至るポケモンシリーズの全てが、このシナリオをベースに作られていることがよくわかるほどに、今のポケモンのスタンダードたるシンプルなストーリーラインとなっています。

では、2作目のポケモン金銀はどんなシナリオだったのか?ポケモンはシリーズを通して主人公は無口無個性キャラであり、プレイヤーの分身です。なので赤緑からの伝統であるベースライン以外の、メッセージ性やストーリーテリングの役割は基本的にサブキャラに担われます。それがポケモン金銀の場合、主人公のライバルにあったわけです。

金銀ライバルは、歴代でもかなりのヒールキャラです。冒頭からいきなり、研究所のポケモンを盗むというストレートな犯罪から話は始まります。プレイヤーは旅の先々でライバルと出会い、バトルし、負けるたびにライバルは自身が負けた理由を「ポケモンが弱い」「使えない」「もっと強いポケモンを捕まえてやる」といったセリフを吐き捨てて去っていきます。金銀ライバルは最強のトレーナーを目指して旅をするキャラクターであり、そのためには強いポケモンが必要だと考えていて、弱いポケモンには価値がない、俺が大事にするのは強いポケモンだけ…と、そういうスタンスのキャラクターなのです。

おれもいいポケモンもってるからな
どういうことか おしえてやるよ


金銀ライバルの転機は、ロケット団イベントでワタルと出会った時に訪れます。金銀ライバルは主人公に、ワタルというドラゴン使いと戦って負けたこと、更にワタルからこのように言われたと語ります。
「きみにはポケモンへの愛と信頼が足りない」
金銀ライバルはこういった甘い考えが大嫌いで、酷く憤慨します。そのまま主人公と戦うこともなくその場を去っていくのですが、次回主人公と戦ってまたも負けた時、いつものように「ポケモンが弱いせいで負けた」旨の発言をせずに、「なぜだ、なぜ負ける」と思い詰めたように話します。金銀ライバルはこの時から、ついに自分と主人公やワタルとの違いに気づき始めるのです。
「あのワタルってやつがいうように、
おれにはポケモンへの、
あいじょうが…
しんらいが…
たりないからかてないってのか。
なんのことだかわかんない」
わたしポケモン金銀でも屈指でこのセリフとこのシーンが好きなんですけど、金銀ライバルはワタルに指摘されたことをここでようやく反芻し、自分の弱さと何か足りないものがあることに気づき始めるのです。ここから金銀ライバルの態度は一気に軟化し、主人公の強さと自分の弱さを認め始めます。金銀ライバルは今の手持ちのポケモンたちと共に成長することを目指し、自分に足りないものを見つけるために必死に努力を始めるんです。いやもう、金銀ライバルの変化はまじで最高ですよね。今でも大好きなキャラクターです。

金銀ライバルに足りなかったもの、強くなるために備えるべきもの。それはポケモンへの愛と信頼。ポケモン金銀のシナリオは、「ポケモンへの愛情と信頼の心こそトレーナーの強さ」というのがテーマです。それがわからなかった金銀ライバルは、ワタルの指摘から人間として成長し、自分の手持ちポケモン達が自分について来てくれることに気づき、ポケモンへの愛情の信頼を抱くようになっていきます。ポケモン金銀のこのテーマは非常に重要で、システムにも組み込まれて数値として説得力を持たせているほどです。それが今作初登場の「なつき度」システムであり、なつき度によって進化するポケモンはもちろん、ほぼ全てのポケモンが習得できる「おんがえし」の威力にさえ跳ねてくるわけです。(「やつあたり」もあるけど…)愛情をもって接すれば強くなる、そのテーマを対戦にさえ落とし込んだのが今作ということになります。金銀ライバルも終盤手持ちのゴルバットがなつき進化のクロバットに進化しているということで、手持ちポケモンにもライバルとポケモンの関係性の変化が現れているところがいいですよね。
※補足ですが、「ポケモンの愛情と信頼こそトレーナーの心の強さ」がシナリオテーマと話していますが、あくまで寓話的な教訓であり、そのままの意味でポケモンが強くなるには愛情が大事とか、なつき度システムのことを指しているわけではありません。ポケモンに愛情と信頼を、ということを通して、優しくすることとか何かに攻撃的に接するのは良くないとか、そういった思想やコミュニケーション全般、人生観を間接的に指していると思います。何かしらのチームやコミュニティーに属していて、何かしらの経験のあるひとの発想です。普通はポケモンの強さ=愛情、信頼とは結びつかない、だから金銀ライバルは「なんのことだかわかんない」んですね。言葉が少し幼くなるのも、ライバルが子供で発展途上であることを表しているのかなと思います。


ポケモン金銀の体現者

ポケモン金銀における、ワタルのキャラクターの役割はなんなのか。わたしは、ワタルがポケモン金銀における強さの象徴と考えています。ただ漫然と強いという個性を与えられたわけじゃない。ワタルはポケモン金銀のシナリオテーマである「ポケモンへの愛情と信頼の心こそトレーナーの強さ」を体現する、ポケモンに愛情と信頼を抱き、正しい心を持つ、ゆえに強いキャラクターなのです。

だから、ワタルが飛び抜けて強い描写には物語として意味を持つ。ワタルがポケモンへの愛情と信頼を持ち正しい心を持つキャラクターであり、事実として飛び抜けて強いことでプレイヤーにシナリオテーマへの説得力を持たせなくてはいけないのです。だから、シナリオ中のワタルは一線を画した存在でないといけないし、それをプレイヤーに伝えないといけない。
しかし、ポケモン金銀時代はダブルバトルが存在せず、ワタルの手持ちが見れるのはチャンピオン戦のみ。ワタルにやられたキャラクターに「マントのドラゴン使い、強すぎる」といったセリフを随所に言わせたりと、ワタルの強さを匂わすシーンはありますが、プレイヤー目線ではワタルが戦ってるところを自分が相対するまで一度も見ることはないわけです。
だから、ワタルははかいこうせんを撃ったのです。プレイヤーはこのシーンを見ることで、ワタルがカイリューという高レベル帯のポケモンを使用し、はかいこうせんという赤緑時代最強の技をぶっぱなしている、ワタルのトレーナーとしての強さを感じることになります。ポケモンへの愛情と信頼を重んじ、ロケット団という悪を憎む正しい心を持つ男。金銀ライバルも、ロケット団を嫌っている点では実は一緒です。二人の違いはポケモンへの接し方であり、ここが強さの分かれ目。ポケモン金銀の世界では「悪の組織と戦う正しさ」が強さではなく、「愛情と信頼を持てる正しさ」が強さなのです。

いや、そんな話聞きにきたわけじゃないよ、ワタルが人にはかいこうせんを撃ってるのはどうなの?そもそも人に向けて撃っているの?という話になるかと思いますが、些細なことです。このシーンではワタルがカイリューを使ってはかいこうせんを撃つという強さをアピールすることが重要なので、ポケモンバトルの描写をグラフィック上簡略化しただけなのか、まじで人に向けて撃っているのかは、あまり大したことではありません。一応、ほぼ前者の可能性が高いと思います。愛情と信頼からの強さの象徴たる、シナリオテーマで重要な役割を持つワタルが、人に向けてはかいこうせんを撃つという、強さが暴力のイメージに連想しがちなことをさせるとは考えづらいからです。一方で、ワタルはロケット団という悪の権化に対して容赦のない態度というのはシナリオでも結構見せており、強さのアピールの副産物としてかもしれませんが、主人公への物腰柔らかな態度の裏腹、結構ロケット団には容赦ない性格がうかがえます。その容赦のなさゆえ、人に向かってはかいこうせんを撃ってビビらせる、という可能性もないこともないし、そもそもグラフィック上は完全に人に向かって攻撃しています。さすがに直撃はさせないんじゃないかな…とは思いますが…一応ワタルは正しいキャラクターなので…
このシーンはプレイヤーからも散々ネタにされてますし、それを受けて公式も完全にネタにしているので、今となってはそういうギャグシーンや定番ネタとしての意味合いの方が圧倒的に強く、実際の真相は闇の中です。わたしもずっとおもろいと思ってるよ。

ワタルはなぜはかいこうせんを撃ったのか。
それはワタルが強いキャラクターであるとプレイヤーに伝えるためである。
なぜワタルが強いキャラクターであると伝える必要があるのか。
それはワタルがポケモンへの愛情と信頼を重んじる性格であり、そのワタルが最強クラスのトレーナーであることで、「ポケモンへの愛情と信頼の心こそトレーナーの強さ」というポケモン金銀のシナリオテーマを満たす存在だからである。

以上が今回の話です。

HGSSの演出面の変更点から考えるワタルの好きなとこ

金銀からHGSSの変更点について、個人的な好みの観点からめちゃくちゃ言いたいことがあるので語ります。あらかじめお伝えしますが、わたしはHGSSというゲームが金銀の完璧なリメイクでほぼ全ての面がアップデートされた上位互換たるゲームだと思っています。ですが、一部変更された演出面が非常に気に入らなく、前述の通り素晴らしいリメイク作品であることも理解しつつ、どちらかといえば愚痴っぽい内容になります。あまり気持ちの良いものではないので、一応お伝えしておきます。

HGSSは完璧なリメイク作品である。金銀でも、チャンピオン戦後にカントーにマップが拡張されることのワクワク感といったらたまりませんでした。しかしカントーマップは容量の都合でいろんな要素が削られていたりして、ここも遊べたらどんなに良かったか…と思ったものです。HGSSは当時のそんな夢希望を詰め込んだ、カントーまでたっぷりの大満足作品となっています。本当に素晴らしいリメイク作品であるにも関わらず、わたしはどうしても一部変更点に不満を抱かざるを得ない。その話についてさせていただきます。

まず初めに、こればかりは変更された理由が微塵もわからない、どうしても納得できない変更が、チャンピオンワタルに話しかけた時にBGMが止まり無音になる演出が消えたことです。あの強者と相対することをプレイヤーに真に伝える演出が好きだったんだけど!?と思って、ワタル好きとして非常〜〜に残念だし、なんで変更されたのか理由も全くわからない変更点だと思っています。基本的にはリメイクはいろんな要素をアップデートしつつある程度原作に忠実な再現をすると思いますが、無音演出を消した方が演出のレベルが上がったとか、無音にする演出を再現することが技術的に難しいとかあり得るんでしょうか?これ、ラジオ聴きながらめちゃくちゃハッピーな音楽でチャンピオン戦突入することもできますからね。金銀時代はどう足掻いても無音になるので金策のために500回チャンピオンに挑んでワタルをボコボコにしようがチャンピオンと相対するその瞬間だけは緊張感を強制させられており、そのワタルの絶対王者感が好きだったんだよなあ…と本当に悲しくてずーっと言ってます。これはかなり邪推まじりの意見ですが、金銀のチャンピオンワタルと裏ボスのレッドという立ち位置に対し、HGSSではワタルが中ボスでラスボスがレッドという印象が強かったなと思います。だからワタルの扱いが金銀より軽く、「なぜワタルははかいこうせんを撃ったのか」で散々記載した「ポケモンへの愛情と信頼の心がトレーナーの強さというポケモン金銀のシナリオテーマの体現者」という格別の扱いが薄まっていた印象です。率直に、ワタル好きとして悲しいです。

ここからはなんとなく理由はわかるが自分の好みからは外れてるんだよな、という変更点についてです。
一言で言うと、HGSSは金銀の頃の尖った印象がなくなったというか、全体的に演出面で丸くなったなと言う印象です。一番わかりやすかったのは金銀ライバルで、ワタルの話を放ってライバルの話を延々とするくらいにはライバルが好きで思い入れがあるのですけど、ライバルはセリフの改変どころかストーリーまで変わっており、なんで変わったのか理解する反面好みで言えば金銀の哀愁だったなあ…と思っています。金銀ライバルはポケモンへの愛情と信頼を自覚し自分の弱さを認識するという成長を見せますが、ストーリーとしてはチャンピオン戦前に主人公に延々と挑んで延々と負け、「もっとポケモンのことを考えてやる必要があるということか」と足りないものを見つける最中で終わってしまいます。ハッピーではないですが、自然な感じでポケモンへの愛情が芽生えていることや、いくら負けようと最強への夢を諦めずに前向きに努力を続け邁進していることが伝わって、すごく好きなシナリオです。一方、ポケモンが盗まれたウツギ研究所では一生助手が盗まれたポケモンの心配をしているセリフを喋っていました。そりゃそうですよね…。
HGSSではこのシナリオが大きく改変しています。良いなと思うのはライバルが研究所にポケモンを返しに来たという演出が追加されており、ウツギ博士の返事や助手の反応含めて、(盗んだことは圧倒的に犯罪ですが)金銀のオチに比べると圧倒的にハッピーエンドで爽やかなものとなっています。これはプレイヤーの心象的な意味でも、良い追加演出だったと思います。
一方で、ライバルのセリフの改変が結構著しく、セリフが変わった印象どころかライバルに関しては性格まで変わったという印象を抱かざるを得ません。一言で言うと「ツンデレ」みたいな安易なキャラ付けをされた気持ちがわたしの中でどうしても拭えず、ポケモン金銀のシナリオだからこそ意味があり存在感のある味のあるキャラクターに比べると、なんだか量産型のツンデレでどこにでもいそうなチープなキャラクターになったなと思ってしまっていました。とはいえ、金銀のキャラクターが尖り過ぎてた一方、HGSSは意地はって可愛いやつという印象で、プレイヤーの好感度は恐らく後者の方が高いのではないかと思います。納得のする改変ではありますが、わたしの好みの面でいえば残念だなと感じています。

ワタルに関してはライバルほど著しい変更は加えられていませんが、印象は結構変わったと思います。なんなら「カイリュー はかいこうせん」だけは原作に忠実に再現されたくらいです。はかいこうせんネタ好きとしては嬉しかったけど、はかいこうせんネタ以外にシリアスな面でもっと忠実に再現すべきところがあったんじゃないですかね…。
ワタルは基本的に金銀の再現がされているのですけど、自分の好きなセリフはなぜかピンポイントで変更が入ってしまいました。その一つが、アジト参入時の「そこのロケットだんいんがていねいにおしえてくれたよ」、もう一つが、主人公がロケット団に2対1で勝負を挑まれた時にワタルが介入して来た時の「そんなこといわずに、どっちかあそんでくれないか」です。
「ていねいにおしえてくれたよ」はロケット団員からアジトの情報を聞いたというセリフなのですが、そのご指名のロケット団員は「うう、強すぎる」といったセリフを喋っており、ワタルの口ぶりに対して態度にかなり差があることがわかります。とても丁寧に教えたと表現する状況にあったとは思えない。ワタルが圧倒的強キャラパワーで団員に勝ち、涼しい顔で「丁寧に教えてくれたよ」なんて主人公に話している状況だと思われます。ワタルの強キャラ感、正義のキャラクターでありながら、悪への容赦のなさ、苛烈な面が見えなくもないシーンです。HGSSでは独自に調べて主人公に情報連携してくれるだけになっており、ロケット団員をボコしてません。
「そんなこといわずに」は、金銀では2対1という無謀な戦いを挑まれかけたところにワタルがこの一言だけ言って割り込んできて、協力してタイマン勝負になるシーンです。挑発的な態度がめっちゃかっこいいです。HGSSではダブルバトルが採用されているため、ワタルとの共闘展開となります。それはそれで嬉しい展開でもあるのですけど、この時の挑発的なセリフ回しが全然再現されず、「ちょっと待った!2たい1でしょうぶとはずいぶん不公平じゃないか(以下略)」と長々セリフを言ってダブルバトルとなるシーンとなっています。金銀の挑発的なセリフを一言だけ言って割り込んでくるスマートさが好きなので、悲しいです。
金銀の「ていねいにおしえてくれたよ」「そんなこといわずに、」のセリフは、あるかどうかでワタルのキャラクター性をめちゃくちゃ左右するセリフです。悪を憎み正義を愛する物腰柔らかな態度のワタルが、なんか結構ヤバイやつなんじゃないか?悪に対して相当容赦ないんじゃないか?好戦的でまあまあ苛烈な性格してるんじゃないか?と匂わせるセリフになっていたと思います。「カイリュー はかいこうせん」のシーンも、その苛烈さを思えば納得できるんですね。わたしは、ワタルのこういう正しさの体現者でありながら好戦的で苛烈な一面を持つところが好きでした。
HGSSではやはりそういう尖ったところは全部丸くなって、ワタルは悪を憎み正義を愛する、心優しい、それ以上の個性はないキャラクターになっています。ゆえに余計「カイリュー はかいこうせん」だけ残されてもネタ以上の意味はない。ワタルのキャラクターに合ってないからです。HGSSワタルの性格なら絶対ポケモンバトルの一環のはかいこうせんだったと思いますし、一方でHGSS時代の技術ならポケモンバトルの描写ができるはずなのにネタとして残したゆえに原作再現のダイレクトアタックとなっている。
金銀時代の、ワタルの圧倒的強者感を出すことでポケモン金銀のシナリオテーマの体現者であるということから外れ、HGSSはワタルが朗らかな人でチャンピオンでもある(中ボス)という一介のキャラクターにすぎず、特段強キャラを匂わす演出はされない。特別ではなくなった、という印象です。

これらの変更点がどうしても納得いかず、HGSSがゲームとして優れている反面、自分の好きだったリメイク元のポケモン金銀の思い入れに敵わない。そんな心境でいます。あ、デザイン好きなのでワタルは大体HGSSのデザインでいてほしいなと思ってます!!マントの感じとかファンタジーっぽくていいよね!!好き!!

追記:なぜワタルは特別ではなくなったのか

考えてたらまとまったので追記。
上記の通り、金銀のワタルの特別感はHGSSでは格落ちするというのがわたしの見解なのですが、やはりそれにはシナリオの構成の違いのためではないか、と思いました。
金銀のシナリオについては「ワタルはなぜはかいこうせんを撃ったのか」に記載の通りに考えています。金銀はポケモンへの愛情や信頼の心を持つことが大切で、それこそがトレーナーの強さなんだということを寓話的に伝えており、その教訓の体現者がワタルだった。だからワタルの性格はただの個性に収まらず、金銀のメッセージ性そのものなんだということです。
ではHGSSのシナリオはどうだったのか?ストーリーラインは多少の変更があるものの、ほぼ同じです。それなのに、不思議と金銀と違って「ポケモンの愛情や信頼こそがトレーナーの強さ」というメッセージ性が強く伝わってきません。ゆえに、そのメッセージを担うワタルの特別感も薄いのです。なぜそう感じるのか、そしてHGSSのシナリオはどういうものだったか?を考え、一つ自分なりの結論に辿り着いたため語ります。

HGSSでも、金銀同様にストーリーのドラマ性はライバルが担います。ライバルの成長を通してHGSSのシナリオの個性があるわけです。その点は金銀と変わりません。ほとんど変わらないはずのストーリーラインの中で、金銀と違いを感じる要素の一つに、ライバルの人間性の成長があります。
金銀では、強いポケモンを使ってこそ最強になれると思い込んでいたライバルが、ワタルに愛と信頼について指摘され、少しずつ考え方が変わっていく、そして芽生えつつあるポケモンへの愛と信頼とともに努力を続けて最強の夢のために邁進していく…というストーリーになっています。
HGSSにおける、ライバルの成長は金銀以上に多岐にわたります。HGSSでもワタルに愛と信頼について指摘され、自分に足りないものについて気づくシーンがあります。一方、それ以上に成長らしいシーンとして、自分の悪行を反省しポケモンを返しにくる描写が追加されました。また、内容は同じシーンなのにテキストをほぼ全文書き換えたりと、正直金銀ライバルとHGSSライバルは別人レベルです。それも、序盤は大して変わらないのに対し、後半になるほどテキストが変更されています。なんといっても、ダブルバトルで主人公と共闘するイベントが追加されました。特にこのシーンでは、ワタルが当初主人公をペアに誘うのですが、それを聞いたライバルはイブキのことをこんな変な格好のやつと戦えるか!○○、俺と一緒にワタルをぶったおそう!!と、わざわざ主人公をペアに選びます。これらの著しい変更量を踏まえると、なんとなくわたしはHGSSライバルの成長の理由が、ワタルよりもむしろ主人公にあるのではないかと感じ始めました。金銀では、間違いなく転換点はワタルであり、そしてワタルというメッセージ性に導かれて金銀ライバルは変化していきます。HGSSでは、確かにワタルは転換点の一つではありますが、それ以上にいろいろな成長が見られます。それは、主人公というライバル、友達を見つけたからではないでしょうか。HGSSは、一人になることを選択したライバルが、主人公という最高のライバルであり友達を見つけて、誤った道から正しくて楽しい人生を歩み成長していくシナリオだったのではないか、と思うのです。
金銀は当時のゲーム容量的にもいろいろシンプルにする必要があって、シナリオもシンプルかつストレートに、寓話的な内容にしています。ポケモンへの信頼と愛情が大切で、それこそがトレーナーの心の強さなんだということを、ワタルが体現者となってライバルを導くシナリオになっています。ゆえに金銀ワタルはゲーム内でも特別な扱いで、正しくて優しくて強い。他のキャラクターと一線を画す存在感になっています。
HGSSはどちらかというと、金銀みたいな教訓じみたシナリオテーマ云々というより、各キャラクターの人間ドラマとして描いているのではないでしょうか。孤独で道を誤りかけたライバルが、主人公と交流して道を正していく。ワタルはそのなかの、気の利いたキャラクターの一人でしかない。だからワタルはHGSSでは金銀ほど重要な意味を持たず、特別扱い要素が減った。正しさは強さ、というシナリオテーマがないから。
ではどうしてHGSSでは「ポケモンへの愛情や信頼が大切でそれがトレーナーの強さなんだ」というシナリオテーマをやめたのか。それは、もうそんなのはポケモンシリーズのスタンダードになっているからではないでしょうか。
金銀とHGSSで違うもの、ゲームとしての表現の幅の違いはもちろんですが、それ以上に、決定的に経験値が違います。金銀はポケモンシリーズ2作目であり、まだ荒唐無稽の世界観を構築している最中です。金銀はそんなポケモンの世界の価値観やビジョンを作っていった。そしてそれらをベースにして新作がたくさん生み出されていって、今のポケモンがあるわけです。HGSSの時点では既に、ポケモンのプレイヤー達にとってポケモンへの愛情や信頼が大切なんてのは当たり前で、みんな知っている。だから今更寓話的な世界観で描写する必要はなく、金銀のストーリーラインをなるべく崩さないまま別の観点でプレイヤーにアプローチしたのではないでしょうか。それこそが、ライバルの誤りを誰も正すことができなかった彼の抱える孤独と強さへの羨望、そしてそれを救う、交流、友達、ライバル、ポケモン……それらを象徴する主人公(プレイヤー)という存在。HGSSライバルは主人公という最高のライバルであり友達を見つけて、世界が変わるのです。
りゅうのあなのダブルバトルイベントで、ワタルもそれを語ります。「ひとりで強さをおいもとめて、はてしなく上を目指すのもいいだろう。でもポケモンで戦う楽しさってのはそれだけじゃないんだよ。まあこんなのはわざわざ言葉にしなくても、君たちは気づいていると思うけどね」
一人の道を否定しないけど、楽しいことって他にもあるよねってことを、ワタルはテキストで伝えています。HGSSワタルはシナリオテーマの体現者ではなくなった、だから特別扱いされなくなった。代わりにHGSSではライバルの成長を軸に、もっと自由な価値観を提示したのではないでしょうか。そしてそれを「君たちはもう気づいていると思うけどね」と、プレイヤーの解釈に委ねるのです。ワタルはそうやって、特別ではない自由解釈の一つになったのではないでしょうか。
(とか長々語ってごめんだけどわたしは強キャラのワタルが好きなので、やっぱりセリフ回しとか寓話的発想とかも金銀が好きです。これは好みの問題!)


締めのオタク語り

言いたいこと書き殴ってるだけで取り留めもないのでてきとーに締めます。ワタルいいよね。圧倒的強キャラ感が好き。ポケモンに愛情と信頼を持ち、人とポケモンとの共生を志す、正義のトレーナー。それでいて強さゆえに若干ヤバイ奴を匂わせているところが好きで、はかいこうせんは勿論、悪への容赦のなさと好戦的で苛烈な一面のあるドラゴン使い。というかドラゴン使いってところも最高で、わたしはポケモンのモンスターらしいキャラクターが好きなので、クソデカモンスターと強キャラ然とした態度で並べるのがめちゃくちゃ様になってるところも好きだなと思います。ワタルはカイリューを愛していてほしい。
ワタルはおもしれー男でいてほしいので、ただの説教くさい正義漢になってほしくないのがわたしの希望です。ベースのキャラクター性である正しさを持ち合わせつつも、はかいこうせんぶっぱなしてほしいし、ヤベー奴でいてほしい。マント常にはためかせてほしいし、はねコイ主人公にファンレター送っていて欲しい。
ワタル、強くて面白くあってくれ。

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