【選手記事】#7 出崎悠香 「自分に期待しています。」
順風満帆と思われていた。ルーキーイヤーから、プロの投手相手に臆することなくヒットを放つ姿は、「天才」と称された。2年目には首位打者を獲得。中軸として、チームの起爆剤として、安定していくのだろう。「若手選手への期待」という枠は、出崎にはとっくに超えていた。だからこそ、若手選手らしい悩みを抱えた昨年の出崎には、本人はもちろん、周りも戸惑ってしまった。
3年目のシーズンとなった昨年。4月までこそ.244と本調子ではないながらも安打は放っていたが、5月は21打席でわずか1安打。二軍再調整を命じられた。
「自分にはホームランを打つパワーも盗塁が出来る走力も無い。ヒットが打てなくなった自分に価値はないと思ってますから、当然の決断をされただけだと思っています。」
もう一度、自分の打撃を見つめなおすーー。そんな「経験がある打者」のような見出しが躍ったが、出崎の認識は違った。
「1から一軍投手の球を打つ形を作りました。初めて一軍に呼ばれるのを待つ選手の気持ちで二軍で準備していましたね。」
自分は「挑戦者」である。未来のレギュラーを虎視眈々と狙う若武者の姿が二軍球場にはあった。
二軍での好成績が認められ再昇格を果たしたものの、シーズンが終わっての打率は5月の不調を取り戻すのがやっとの.245。それでも、出崎は「充実のシーズン」と振り返る。
「2年目に首位打者を獲った時とは別の、大きな財産となる経験をしたと思います。大きな回り道になったし、チームに迷惑をかけたと思いますので、今年は取り返していけるシーズンにしたいです。」
越後監督・加川打撃コーチの強い信念の下、今季は「1番」定着を義務付けられるシーズンを迎える。
「この役割と共に、自分が成長できると。自分を信じていますし、自分に期待しています。」
キャンプでは、好打者の基本である「反対方向の打球」を徹底的に身に染み込ませた。これには昨年の経験が活かされていると言う。
「去年、ベンチで貞方(陸)と居る事が多くて、よくバッティングの話をした。あいつは代打で結果を求められている選手。どんな投手相手でも、1打席で結果を残すアプローチを考えたら、やっぱり逆方向に引き付けて打つ技術は今以上に必要だと感じましたね。」
敢えてここで明記しておく。出崎悠香という選手は、ことバットコントロールに於いては、各球団の好打者たちに遜色ない、球界を代表する技術を持ち合わせている。その選手が、ただひたすらに、自分の技術を高める方法を模索している段階なのである。
「なにか明確な正解があればいいんでしょうけどね。でもたぶん、正解が無いからこそ、自分はバッティングが好きなんだと思います(笑い)。」
インタビューを終えると、室内練習場へと向かった。出崎の挑戦は、まだ序章だ。
【TIPS】チームメイトに聞きました。「出崎 悠香」ってどんな人?!
#44 宇高 裕之(ドラフト同期の同級生)
「野球の技術もそうなんですけど、同級生って感じがしない。たぶん人生2周目か3周目くらいですよ(笑い)。で、絶対前世も野球選手です。野球バカですね。」
#58 貞方 陸(ドラフト違いの同級生)
「チームメイトにめっちゃ比較されるんですよ。『出崎世代が~』って(この世代の野手は出崎・宇高・貞方の3人)。めっちゃ嫌ッス(笑い)。特に自分は左打ちなのも同じなんで。(対抗意識は?)意識しかないです!」
#17 植松 大聖(ピーファウルズ在籍唯一の「出崎世代」投手)
「高校時代から有名でしたよ。抑える球がなかった。いまほんとチームメイトで良かったなって思います。二口(君津#18、植松と同じ高校卒)なんか多分全打席打たれてますよ(笑い)。(植松さんは?)うーん、6~7割くらいかな(笑い)」
※この記事は9月5日にtelegraphで公開されたものと同じです。