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誰がロックを殺すのか※ネタバレ⚠️

ロックは誰にも殺せない。恐らく神と呼ばれるような超常的な存在であっても。

そう強く思ったのは、国民的ロックバンド「Dodge Roll」の影響だ。


自論を語るには、Dodge Rollとの出会いから書く必要があると思う。長くなるが、どうか最後までお付き合いいただきたい。

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私がDodge Rollを知ったのは、竜巻事故で世間を騒がせたあの例のフェスだった。

あの頃は違うバンドの追っかけをしていたから、当日も遥々新幹線に乗って参戦したんだっけ。

追っかけてたバンドの出番は早々に終わった。でも、高いチケ代払ったのに早々に離脱するのは勿体なくて、一緒に参戦してた友達が「名前だけ知ってる!」っていうから彼らを見に行った。
それがきっかけ。

第一印象は、「こんなもんかあ……」だった。偉そうだけど、私以外にもそう思った人はいたんじゃないかな。(エゴサ大魔神の縁寺くん、見てたらごめんなさい。)

全体の音が合ってないような、そんな違和感があっただけかもしれない。まぁ、初出演だし、会場の大きさや「自分たちのファン以外にも見られている」っていう事実にかなり緊張してるんだろうなあって微笑ましくも思ったんだよね。

でも、ファンの皆も、もちろん、ステージ上の彼らも、すごくキラキラした顔で笑ってたから、自分でもビックリするほど惹き込まれた。

Ba.の縁寺くんは、素人からしても演奏が秀でて上手な訳ではない。なのに目が離せないのは、テクニックとかそういう技術的なことじゃなくて、一際楽しそうに、真っ直ぐに音楽に向き合ってるのが伝わるからなのかなあ。(後から知ったけど、高校生のときに頑張ってバイトして買ったベースを未だに使ってるらしくて好感度爆上がりした。)

Key.のルイさんは、めちゃくちゃ顔がいい。いや、そうだけどそうじゃなくて。誰よりもDodge Rollの音楽が好きなんだって一瞬で分かった。自分で作詞作曲してるから当たり前なのかもしれないけど、それを知らない初見の私にすら伝わったんだから、本当に心から、音楽とDodge Rollが好きなんだと思う。

Dr.の剛さんを最初見た時は本当にビックリした。だって片腕だったから。しかもドラマーって……。何かの間違いかと思ったの。でも、1曲目のイントロを聞いて自分が恥ずかしくなった。剛さんの奏でる音は、力強くて、それでいて温かくて。Dodge Rollの音楽は、剛さんじゃないとまとめあげられない気がしたんだ。

「絶対ザ・ウィンドフォールズのタカハシに憧れてる。」これが学基くんの第一印象。(当たってたから声出して笑った。)Vo.Gtってだけで好きが詰まってるのに、見た目と裏腹にどこまでも伸びる特徴のある声。あの細い腕で奏でられる繊細なリフ。正直私は一瞬で落ちた。MCとのギャップも可愛かったし(笑)

当時追っかけてたバンドに対してでさえ、あんなに真剣にステージ全体を見ることなんてなかった、と今になって思う。

音に飲まれていた。
″ロック″ってこういうことなんだって、全身で感じた瞬間だった。

2曲目、3曲目、、と進んで、演奏が止んだ。
響き渡る歓声と拍手の音。

そして、
それにつられたかのように巻き上がる風。

慌てた様子の声で避難勧告がアナウンスされて、周りの様子を確認することも叶わないまま、人の波に流され会場から出て、気付いたらホテルに辿り着いていた。
「竜巻が起きて多くの死傷者が出た」と知ったのは、一息ついて見た報道番組でのことだった。

そんな生涯忘れることのできない体験が、私とDodge Rollを引き合わせたのだ。

あの後、これを読んでいる皆さんもきっとご存知の通り「日本最大級のフェスを襲った悲劇」として世界中から注目されていた。
しかし、数ヶ月もすれば新しいニュースへと人々の関心は移り、次第に話題になることも減っていった。

それでも、私の中の熱は冷めなかった。

夢中でDodge Rollの音源を聞き漁り、SNSからブログまで全ての媒体を読み、よりDodge Rollにハマっていった。

メンバーが件の事故で倒れ、入院していると知ったときは、まるで身内が大怪我をしたかの如く心配したし、後の公式発表で剛さんの視力が失われたことを知ったときは、それこそ絶望を味わい、涙を流した。

Dodge Rollが歩みを止めずにこの4人で活動を続けると言ってくれたことだけが唯一の救いだった。


数年後。
私はDodge Rollの活動復帰ライブの会場にいた。
元々好きだったバンドのツアーファイナルと同日だったのだが、あのフェス以降、Dodge Roll以外の音楽を聞いていなかった。

自分でも笑っちゃうけど、それ程までにDodge Rollの音が、彼らが、私を変えてしまった。ちゃんと責任とってほしいよね、ほんと。

開場時間になり、ライブハウスに入場する。あのフェスで注目を浴びた彼らの復活ライブ。当然と言っていいほどの満員にスタッフさんの大声が響く。

入場してから幕が開くまでの数十分、私は不安だった。

相も変わらず、お世辞でも上手とは言えない縁寺くんのベース。
『Re:』であることを明かし、二足の草鞋を履くことになったルイさんの音。
全盲となってしまった片腕の剛さんが奏でるリズム。
久しぶりに披露された新曲で、ぎこちなさを感じた学基くんの歌とギター。

何かが変わってしまったのかもしれない。
あの日の、あの瞬間が、神の寵愛を受けていた最期だったのでは……?とさえ思っていた。

でも、それは違った。

照明が落ち、一瞬で静まり返った会場に、シャンと鋭いドラムのシンバルが鳴り、すっかり聞き慣れたボーカルが、会場全体に響いた。

心配するだけ無駄だった。
ギターも、ベースも、キーボードも、ドラムも、もちろん、学基くんの声も。
彼らは私の心の奥底に響く音を、何一つ変わらない笑顔で、確かに届けてくれたのだ。

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「ロックは誰にも殺せない。」

彼らの信じる音楽は、彼らの″ロック″は、彼らがステージに立ち続ける限り、決して消えることは無い。
それは万人に通じるもので。
誰であろうと、当事者でない者は、それを邪魔することは出来ないのだ。

現に、彼らは今も、ロックシーンを牽引する国民的バンドとして活躍している。

明日で結成20周年。
8000人を収容する大ホールでライブを行うことになっており、私も数年ぶりに参戦する。

実のところ、このnoteを綴ったのも、明日のライブが楽しみで中々寝付けなくなってしまい、今までのことを振り返っていたからなのだ。

若い頃のように何処へでも追いかける情熱と体力は無くなってしまったが、それでも、私の中に灯された″ロック″は死んでいない。

まるで、ザ・ウィンドフォールズの足跡を辿るかのような記念ライブ。
きっと明日も忘れられない思い出となるのだろう。

死して伝説となった憧れのバンドを越えるため、彼ら自身の信じる″ロック″が、今も尚、生き続けていることを証明する瞬間に立ち会う事になるのだから。

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