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運を使い果たすように日々を生きる
今日は、本棚の整理をした。
本がどんどん増えてきてしまったので、生きていくために必要のない本は手放そう、ってことではじめたんだけど、うーん必要じゃないとは言い切れないなあ、とか、あーこれから必要になるかもしれないなあ、とか、そんなこんなでほとんど手放せそうにない。
だから、ほとんど、本棚の整理をしてる人を見守ってた、に近い。
「この本、まだいる?」
手渡された本を見て、あ、と思い出す。わたしがまだフランスにいたとき、日本にいる彼に、買っておいて、と頼んでおいた写真集だ。たしか、だれかがこの本のことをなにかで紹介していて、読んでみたいと思ったんだけど、人に頼んでまで手に入れたいと思うほどのきもちがどうして生まれたのか、いまでは思い出せない。
結局読んでなかったなあ。仕分けの手を止めて、本を開く。
写っているのは、奥さんと息子さん、それにいっしょに暮らす犬たちと猫。旦那さんが、日々の暮らしを切り取り、そこにていねいにひとことひとこと添えている。そんな写真集。写真集っていうより、写真のついたエッセイのよう。
写真にも、添えられたひとことにも、愛、愛、愛を感じて、じんわり温かくなる。
海を向こう側に、赤ん坊の息子さんを抱いた奥さんが、こちらをふりかえっている写真がある。その光景をシャッターに収める旦那さんが添えたことば。
「一生分の運を使い果たして、今、わたしは、ここにいる。」
この本をどうしても手にしたかったわたしのきもち。そこに、くるいはなかったな。ぼろぼろと涙をこぼしながらページをめくった。
「この本は、捨てないで」
「うん、わかった」
わたしもだいぶ、運を使い果たしている気がするなあって、思う。そう考えると、しぜんとありがとう、ってきもちになった。特に、だれに対してというわけでもないんだけれど。なんとなく、いまを、愛おしく思う。
明日もどんどん、使い果たしてゆけますように。
温水日和 2021/05/10
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