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創業融資のススメ。スタートアップ編。

前回と同様に自身の経験が少しでもこれからのスタートアップに貢献できればということで、今回はデットファイナンス、特に創業融資について書いていきたいと思います。

今まで関わった複数の事業において累計10億弱のデットファイナンスを実行していますし、ミチビクも含めて5回の創業融資で失敗したことはありません。これらのデットファイナンスの内、ほとんどが赤字状態または創業初期で実績がない中で進めたものでした。

デットファイナンスとは銀行借入や社債発行による資金調達のことです。この記事では銀行借入の内、創業融資というものに特にフォーカスして説明します。
創業融資とは日本政策金融公庫(以下「公庫」)が、新たに事業を始める方や事業を開始して間もない方向けに無担保・無保証人で融資をする制度です。

◆デットファイナンスの考え方

スタートアップとなるとエクイティファイナンスが話題に上がることが多いですが、私は「デッドファイナンスができるときはデットファイナンスしろ!」と考えています。

なぜそう考えるかというと、デットファイナンスの方が資本コスト(資金調達コスト)がリーズナブルだからです。このあたりの話を詳しく書くと、それだけで長くなってしまうので割愛しますが、デットファイナンスで得たお金で企業価値を伸ばす→伸ばしてからエクイティファイナンスした方が得られるお金が多くなる、ということだけ最低限意識しておくといいと思います。

スタートアップ界隈では、エクイティファイナンスほど情報がないことがデットファイナンスのイメージを難しいものにしてしまっている可能性があります。しかし、融資においてはボーナスタイミングがいくつかあり、そのタイミングをしっかり押さえれば掴み取れる確率がグッとあがります。

そのタイミングというのが、次の3つです。

・創業のタイミング
・エクイティファイナンスの実行タイミング
・プロジェクト収益が見込める先行の設備投資タイミング

創業融資は上記の「創業のタイミング」に使える制度で、しっかりと取り組めば十分に可能性があるものだということを説明していきたいと思います。

◆創業融資のポイント

1.制度概要

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年度で細かな部分が変わるので公庫のHPを参照するのが一番確実です。

2.申請のタイミング
1の概要に対象者要件として税務申告2期終えていない方=税務申告が2期終わるまでOKとありますが、創業融資の申請タイミングで圧倒的にオススメなのは、設立した法人の履歴事項全部証明書が取れるようになってすぐです!(創業融資の申込は履歴事項全部証明書が必要です)
このときであれば試算表もないため、フラットに事業と事業計画を見てもらえる傾向があることからこのタイミングをオススメしています。また、銀行内の格付けも赤字スタートアップだとマイナスですが、実績ゼロであれば格付けもゼロです。

3.申請金額
可能な限りたくさん調達したい気持ちがあるかもしれませんが、なにか特殊な設備投資などの予定がない場合は1,000万円を上限とするのがベターです。
銀行には決裁基準が複数あり、創業融資の場合は1,000万円までが支店決裁です。1,000万円を超えると本店決裁となり難易度がめちゃくちゃ上がります。

感覚的に自己資本の3~4倍ぐらいを超えると難易度が上がると思います。なので、1,000万円の創業融資を考える場合、300万円程度は自己資金で用意したいです。

4.返済期限
資本力の弱いスタートアップは、キャッシュフローを考慮すると返済期間はなるべく長く設定すべきと思っています。なのでいつも制度の中の最長で申込をするようにしています。創業融資(運転資金)だと7年ですね。
ただし、返済期間は長ければ長いほど支払う利息総額は多くなるので、この辺は事業計画とのバランスも見る必要があります。

5.融資も営業
よく言われることですが、資金調達も営業です。

営業と同じく、まずは相手(公庫)を知るところから始めましょう。
公庫HPの総裁メッセージ基本理念及び経営方針を見ると詳しく記載がありますが、ざっくり表現すると、公庫は日本の経済発展や国民生活の安定のために融資を行ったりする役割をもった金融機関です。
国系の金融機関ということもあり、基本的には起業に対してポジティブです。そして、金余りな時代背景から有望な貸し先を探しているという状況が続いています。

次に、お金を貸してもいいよって思ってもらえるように、担当者の方と対話し、求められるポイントを埋めていきましょう。
(銀行全般の)担当者の方が一貫して求めるのは、当たり前ですが「ちゃんと返せるか?」です。
なので、申込側は如何に「ちゃんと返せます」と説明できるかが重要になります。エクイティ調達のときのように夢いっぱいの事業計画を持っていかないように気をつけてください。
ここで大事なのは「ちゃんと返せます」ということです。

もう一つ、大前提ですが、担当者の方は貸し先を探していて融資を申し込む側の味方です。しっかりと話せる関係性を築きましょう。当たり前ですが、挨拶をしっかりする、だらしない格好で会わない、即レスするなど。スタートアップ界隈の常識で特攻しないようにしましょう。

6.資料作成
5.で記載した通り、「ちゃんと返せます」というのを資料をもって説明できるようにしましょう。
公庫担当者の方は提出された資料を加工して支店の決裁に回します。決裁に回すのに「手がかかるor手がかからない」であれば「手がかからない」方が圧倒的に良いです。

肝心の資料ですが、事業の説明に使う資料で必須とされているのは「創業計画書」のみです。

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これだけで自社の魅力を語ることは困難を極めますので、別で資料を添付しましょう。任意で資料を添付してはいけないルールはありません。

私が資料作成するときは以下の項目を入れています。

・事業計画(紙でも出す&エクセルで提出できるようにする)
・創業計画書(公庫フォーマット)
・創業計画書の補足資料
 ・創業の動機(熱く)
 ・創業者の経歴(自慢できるところは強めにプッシュ)
 ・製品・サービス紹介
 ・マーケット
 ・売上の仕組み(単価・顧客数など)
 ・マーケティング
 ・競合比較と差別化ポイント
 ・魅力的なチーム(ない場合は書かない)

項目の他、注意点している点は次の通りです。

①事業計画は、ちゃんとしたテンプレートを使い、説得力のあるものを作成しています。YSさんの↓記事の事業計画テンプレートが無料とは思えないほどイイのでオススメです!

②事業計画は、融資実行からカウントして少なくとも1年目の終わり頃から単月黒字になり、債務超過(自己資本がマイナスの状態)にならないように組んでいます。「ちゃんと返せるか?」というのは表現を変えれば「黒字になるか?」ということです。

③説明資料は、ある程度のデザイン性は保ちつつも口頭補足を前提とした資料にならないように注意しています。文字文字してても良いので資料だけで確実に伝わることに重きを置いています。こちらもエクイティファイナンスとは異なる点です。

④細かいことですが、和暦を使うようにしています。国系の機関では西暦ではなく和暦で扱います。すなわち、担当者の方が上申する際の資料作成も和暦ということになります。西暦と和暦の変換って地味にめんどうなので、最初から和暦で作成します(社内資料はすべて西暦で統一しているので、国への提出資料のときだけ変換しています・・・)。

⑤こちらも細かいことですが、専門用語(例えばMRRやチャーンレートなど)はなるべく使わないようにしています。スタートアップ界隈では普通でも相手はスタートアップ界隈の方ではありません。仕方なく使う場合は注釈などで補足しています。

ここで作成した資料は、エクイティ調達のときや補助金・助成金の申請の際にも役立つので、しっかりと作成することをオススメします。

7.申込
資料を揃えたら申込をします。公庫に紹介してくれる強力なサポーターがいる場合を除いて、会社の所在地を管轄する公庫に電話して申込方法を聞きます。直近で申込をした際は、コロナ禍ということもあり、郵送で送りました。

8.面談
申込を終えると面談の日程調整連絡が来ます。
調整した日程でいよいよ面談です。特に理由がなけばスーツが無難です。このときばかりはスーツでいきます。しっかりネクタイもします。
作成した資料をベースに話す内容はイメージトレーニングして臨みます。緊張することもあるかもしれませんが、自信を持って話すことが大事です。資料をしっかり作成していれば説明できないことはありません。作成した資料を見ながら説明できますし、堂々といきましょう!
面談の中でも「ちゃんと返せます」というところは力を説明するようにしています。いうところは力を説明するようにしています。
この段階で事業計画は紙で提出しただけの状態なので、エクセルでも提出したい旨を告げて後から送れるようにしたいです。その方が深く理解していただけます。
融資までのスケジュールを確認することも忘れずに。資金調達も営業ですので、スケジュールも握っておきましょう。

9.小技
小技ですが、創業融資の面談までにメガバンクでの口座開設をしておくと良い影響が見込めます。スタートアップだとメガバンクの口座開設審査で落ちることも珍しくありません。なので、メガバンクの口座開設をし、メガバンクの担当者の方も応援してくれている、ということを伝えられると公庫の方にとっても安心材料になるのだと思います。
メガバンクの口座開設は、前述の通り真正面から行くと審査落ちする可能性があるので、先輩起業家やVCなどツテがあるところから紹介してもらいましょう。 

10.面談後の対応
面談が終わった後も事業計画に対する質問や追加資料の提出などが発生する場合があります。そういった追加対応が発生した場合は可能な限り即レスするようにしています。やはり即レスの方が印象がイイと思います。
対応の中で金額や返済期限についての交渉(主に減らす方)が入ることがありますが、ここは一概には言えない部分になるのでバランスを見て判断することになります。

11.結果を待つ
やれるだけやったら後は結果を待つだけです。
ここまで読んでくださった方にとって良い結果でありますように🙏


◆まとめ

最後に申請時のまとめです。

・申請のための資料を作り込み
・創業直後の履歴事項全部証明書を取得できるタイミングですぐに申し込む
・申請金額は上限1,000万がオススメ
・返済期限の上限は最長がオススメ
・可能であれば面談までにメガバンクで銀行口座を開設
・面談時は身だしなみを整えて、熱く自信満々で語る、言葉遣いは丁寧に
・面談後対応も可能な限り即レス
・あとは結果を待ちましょう

創業融資は、しっかりと時間をかけて取り組めば十分に可能性のあるものです。少しでも良い条件で調達できるために、このnoteが一助になれば幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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