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予想どおりに不合理

行動経済学という学問分野から、人間の判断の「不合理」を色々な実験から検証している一冊。
あらゆる状況での選択や行動を15章で紹介していて、実験の説明では「あーこういう選択をするだろうな」と追体験することもできる。
400ページ以上ある文庫本だが、すっと読むことができた。

経済学的「合理的」と行動経済学的「不合理」

まずは、経済学の考え方と行動経済学の考え方を見ていく。

ふつうの経済学では、わたしたちが合理的であると考える。つまり、決断に役立つ情報をすべて知っていて、目の前のさまざまな選択肢の価値を計算することができ、それぞれの選択による結果を何にも邪魔されずに評価できると想定している。

一方、行動経済学者は、人々が身近な環境から余計な影響を受けやすく(文脈効果という)、関係のない感情や浅はかな考えなどさまざまな形の不合理性にも影響されやすいと考える。

この具体例は、アメリカ人の退職後に備えて蓄えているかどうかをあげている。
経済学的には誰もが正しい決断をするのだから、蓄えようと思っている金額をしっかり蓄えると考えている。しかし、実際にはすべての人が十分な金額を蓄えているわけではない。余計な影響(将来のことを気にしていない、子どもたちが面倒を見てくれることを期待している、宝くじが当たる、など)を受けているため、思った通りの金額を蓄えていないのである。

人は「不合理」な選択をしてしまう。合理的な考えの理想の状態を思い浮かべながら。無料!という言葉に弱かったり、「自分が所有している」というだけで、物の価値を高く考えてしまったり、お金が絡んだときに判断や行動が変わってしまったりする。
これらは経済学だけではなく、心理学の要素もある行動経済学の視点で読み解くことで予想どおりな「不合理」へと繋がっていく。

本の構成

先述したとおり、全15章で構成されている。

1章 相対性の真相
2章 需要と供給の誤謬
3章 ゼロコストのコスト
4章 社会的規範のコスト
5章 無料のクッキーの力
6章 性的興奮の影響
7章 先延ばしの問題と自制心
8章 高価な所有意識
9章 扉をあけておく
10章 予測の効果
11章 価格の力
12章 不信の輪
13章 わたしたちの品性について その1
14章 わたしたちの品性について その2
15章 ビールと無料のランチ

この中でおもしろかったのが、2章の黒真珠の話、3章、5章の無料!の効果、8章の所有意識、11章のプラセボ実験だった。
「不合理」をうまく使った話はマーケティングなどの話に繋がってくる。ペプシのCMで、目隠しをしながらペプシとコカ・コーラを飲み比べた場合、ペプシの方が美味しく感じるが、コカ・コーラの赤いパッケージを見ながら飲み比べるとコカ・コーラの方が美味しく感じるという話は、人の予測の「不合理」をうまく使っている。
また、2章のもともと価値のなかった黒真珠を人の「不合理」をうまく使って価値のあるものとして多くの人に知れ渡った。
これらの「不合理」がどのような環境的影響、感情的影響によってもたらされるのかを、数多くの実験から紹介している。

読んで学んだこと

今では当たり前にユーザーインタビューなどで、実際にユーザーに触れてサービスの設計を行うことが多いが、人が「不合理」に選択・行動をすることをどれほど想定していたんだろうか、経済学でいう「合理性」のあるユーザーを想定していないだろうか、と振り返ることができた。
実験の一つとして、Amazonの「一定金額以上の購入で送料無料にしたときの話」も出てくるが、そうやって人の選択を知ることで、逆に活用し、大きな利益を得ることもできる。

今後もさらに行動経済学を学んでいきたいと思う。

書籍の紹介

予想どおりに不合理
行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」
ダン・アリエリー 著
http://amzn.asia/1vVpQcd

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