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娘が脱毛症になって気づいた自分のこと


ボーっと生きてきた

私は40年以上、深く考えずに生きてきました。
我が子は可愛いし大切だけれど、育て方を学ぼうと真剣に思ったことはありませんでした。
親になれば、自然と子育てできるようになる。
自分の親がやってきたことを真似ていれば、子供は勝手に育つと思っていました。
2人の娘に恵まれて、私は満足でした。
結婚したら子供がいるのが当たり前、一人っ子よりも兄弟がいた方がさみしくなくていいはずだ…そこから外れないことが、幸せだと決めつけていました。
長女が幼稚園に通っていたころ、送迎の時に若くておしゃれなお母さんを見ては憧れました。
専業主婦の私は、お金が無いのに流行りの服を買い、見た目ばかり気にしていました。
長女にヒラヒラした可愛い服を着せ、髪にリボンをつけて、着せ替え人形のように我が子を着飾りました。
それが、女の子をもつ親の特権くらいに思っていました。

このままではまずいと思った

そんな見た目にこだわる私でしたので、次女の脱毛症は本当に受け入れがたかったです。
髪が無いなんて、周りからどう見られるのか…いじめられるんじゃないか。
次女は長女のように髪を結んだり、オシャレを楽しんだりできなくなる…
次女がかわいそうで仕方ありませんでした。
泣いて過ごすことしかできない自分に、こんな親で申し訳ないと娘たちへの罪悪感で押しつぶされそうでした。
この状況を誰かに助けてほしいと思いました。

そこで、精神科を受診しました。
私は次女を出産した際、周産期うつになりました。
その時、精神科のF先生の元で治療しました。
2年かけて抗うつ薬を断薬し、通院しなくなって1年が経過していました。
私は娘の脱毛症のことで、またうつになるんじゃないかと不安になりました。
うつ病になると岩でも背負ったかのように体が重くなり、動けなくなります。
もっとひどくなると、何かから逃げ出したい、走り出したいような焦燥感に襲われます。
うつ病の人は、その不快な感覚から逃れるために、死にたくなるのかなと思います。
思い出すといまでも恐怖です。
あのとき親身に話を聞いてくれたF先生のおかげで、命を救われたと思っています。

F先生が教えてくれたこと

次女の話をすると、F先生は
「逃げていい」とおっしゃいました。
「(娘は)目の前にいるから、完全に逃げ切ることは難しいけど、その日1日をやり過ごすこと。半分でも出来たら上出来です。」
「子供の前でだけは作り笑顔でもいい。泣くときは子供がいないところで」
と言われました。
私は、娘の病気に立ち向かわなくてはならないと思っていたので、逃げていいと言ってもらえたことにホッとしました。
病気に向き合おうと思えるまで、時間が足りていなかったのだと思います。
またF先生は、
「親のかかわりかた次第で、この子の病気に対する捉え方は全然違ったものになる」
「親が不安がると、子供も不安になる」
「まだ起こってないことを想像して、おろおろしないこと。不安はいくらでも出てくる。問題が出てきたときに一つずつつぶしていくしかない」
「何があっても大丈夫だと、どーんと構えられるように、今から準備をすること」
とおっしゃいました。
この時、
子供の前で泣かない
病気のことを不安がる発言をしない

と決め、泣きたくなったら近所の土手に行ってひとりで泣くことにしました。
こうして、うつの薬と抗不安薬の治療を再開しました。
薬も安心材料でしたが、何よりF先生に話を聞いてもらえたことが心の支えになりました。
次の受診までF先生との約束を守ろうと、1日をやり過ごすことだけ考えました。

関心をもって聞くことの大切さに気づいた

F先生の言葉を受けて「どーんと構えられるお母さん」になりたいと思いました。
しかし目標が漠然としていて、具体的に何をすればいいのか分かりませんでした。
私は相変わらず土手で、ひとりで泣いていました。
何度目かの受診の際、F先生に
「ご主人は話を聞いてくれますか」
と尋ねられました。
私は「夫は『その話は前にも聞いた。何度も同じ話をされたらしんどい』と言うので、自分の気持ちを話すことをやめた」
と伝えました。
すると、F先生は
「私の診察時間内では他の患者が多すぎて、話が充分できない。ご主人が話を聞いてくれないなら、カウンセラーをつけましょう」
と言ってくださいました。
そして院内のカウンセリング室で、カウンセリングを受けることになりました。

私はカウンセラーに対して、いいイメージがありませんでした。
次女が産まれる前、市の無料カウンセリングに行ったことがあります。
私はカウンセラーに、夫と子育てに関する意見の違いで困っていると相談をしました。
カウンセラーは高齢の女性でした。
「夫と仲良く協力しあってやるべきだ」
という正論を言われて終わりました。
私は、なんだか誘導されたような気分になって、スッキリしませんでした。
その後、教育機関の子育て相談に行ったこともありました。
中年男性のカウンセラーは、私の子育ての悩みを聞くなり
「それは間違っている」
と頭ごなしに厳しく言いました。
そして、私の話を聞くことにイライラしているようすでした。
私はもう二度とカウンセラーに相談するものかと思いました。

カウンセリング室で私の担当になったT先生は、30代の働くお母さんでした。
T先生は、今までのカウンセラーとは全く違いました。
私が話しきるまで、口を挟まず、相槌をうちながら聞いてくれます。
その間、パソコンで私の発言をメモしています。
先生から一方的にアドバイスをしてくることはありません。
私がアドバイスを求めた時と、言葉に詰まって困っている時にそっと提案をしてくれます。
何よりT先生からは、関心をもって聞いてくれていることが伝わります。
それがとても重要で、私は何でも話そうと思えます。
私は「面倒くさがらずにただ話を聞いてもらいたかったんだ」と気づきました。

娘に願うこと

この頃私のTwitterのアカウントに、脱毛症の当事者から
「子供のころ、私の脱毛症を母親が悲しんでいたのが何より辛かった。自分のせいで親が苦しんでいると思った。」
と、メッセージをいただきました。
私は、娘にそんな思いをさせたくありません。

娘の病気に振り回されない事は本当に難しいです。
再発の度に落ち込み、なかなかなれるものじゃないと思い知らされます。
目の前が不安でいっぱいになります。
そしてこのままではいけないと、焦ります。

髪があってもなくても、あなたは素晴らしい。
あなたが元気に生きていてくれるだけで私は幸せだ。

と心から伝えられるようになりたいです。
そして娘に
「病気はあるけど、私は大丈夫」
と思ってほしいです。

そのために、感情に振り回されない方法を準備しておくことが大切です。
そのひとつが

同じ悩みを相談できる仲間を見つること、でした。

同じ病気をもつ方たちと繋がり、お互いが少しでも楽になれたらと願っています。

読んでくださりありがとうございます。お気軽にコメントいただけますと嬉しいです。

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