センスは生まれついてのものではない
「デザインなんてセンスが必要じゃん、(自分はセンスがないから)デザインなんてできないわー」、というような居酒屋トークはよくある。
あるいはまた、デザインをしない人やデザインに関わりはじめたばかりの人は、何もないところから魔法のようにビビビとひらめくのがセンスだろ?と思い込んでいたりする。
いや、そんなわけねえよ!何もないところからひらめくとか無い無いwwwというのは、ある程度やってきたデザイナーさんや企画屋さん、おそらくエンジニアさんも、なんなら経営者さんやなんかも、つまりセンスを必要とする職業の人、はだいたいわかっていることで。
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と常々思っているので、タイトルを見かけて、その「何もないところからひらめくとか無い無いwww」を再確認してニヤニヤしようという、ちょっといやらしい魂胆で手に取った本がこれ。
そのまんまのタイトル。世間一般では、「センス」という言葉は天賦の才か何かのように語られがちですがそうじゃない、センスは知識の集積ですよ、知識を得ましょうよ、と。結論をズバッとタイトルにしてしまう本は好き。
でまあ、再確認のつもりで読みはじめたので半分ぐらいは「ですよねですよね」と目論見通りニヤニヤして読み進めたのだけども、センス(知識)の得かた磨き方・仕事はセンスである、というような内容のところでヒヤリとした。背筋伸びたわ。
センスはいくらでも磨けるのだ。でも磨かなきゃ使わなきゃ当然腐るよね。
と、当たり前のこととしてわかってるつもりで、まだ少ーしぼんやりとしていた部分を明確にし直すことができた脳みそに構築しなおせた、という点でも良かったし、ああ自分は今それやってないなあとかそういえばそれ忘れてたなあとか、の辺りの反省が多い1冊となりました。
センスと仕事の関係、のくだりでは「うっ自分やばい」と、ヒヤリとしましたよ。やばいやばい。
知識の精度を高め、アウトプットの精度を高めなければなりません。そうした時、はじめて成り立つのがセンスだと思っています。(P120)
「わからないのはセンスがないせい」ではなく、「わからないのはセンスを磨く努力をしていないせい」です。(P144)
ね、だよねだよねそうだよね!とは思いつつ・・・背筋が少し冷たくなりましたよ。
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本書の構成は、
・プロローグ「センス問題は根深いなあ」
・「センス」とはなんぞや
・センスの得かた、使いかた
・仕事とセンスの関係
といった内容を、多くの例えを引いてライトに書かれたものとなっています。行間ガバ空き系なんで、どちら様もサラっと読み終えることができるでしょう。例え7割、筆者の主張が2割、見出しで1割、みたいな最近よくある構成。見出しをなめて全部わかる人は買う必要が無いとも言える系の本。
著者・水野学さんはクリエイティブディレクターさん。なので、文中で出てくる例えや実例は、企画する人やデザインする人にわかりやすいものやあるあるネタで大部分を占めています。
反面、いわゆるクリエイティブ職の人にとっては当たり前のことばかりで、そういった職業の人にとっては物足りないかも。ので、その辺の再確認だとか、あるいは自分のように、再確認のつもりで読んでヒヤリとしてみたり、といった読み方になるのではないでしょうか。
普通がなんたるかを知りもせず他にないアイデアなんて思いつけるわけねーから!まずは大量の「普通」を知ってみようぜ!みたいな話(デザイナーあるあるの極みだ!)も盛り込まれていて、人と違うことが個性だと思ってる血気盛んなデザイナー志望の学生さんや、センスってなんやねんと思い始めた人にお勧めしたい1冊でもあります。
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それよりも、もしかするとクリエイティブ職じゃない人によく響くかもしれない。いわゆる「ビジネスパーソン」な人すべてに、「読んでみてもいいかも」ぐらいの温度感でおすすめします。
「自分はセンスないしな〜」と自称する人でも、ただ単に「センス」という言葉を定義してみたことがないだけで、この本で定義または再定義してみたら「うわっ俺センスあるやん!」と気づく人、というのは実は沢山いるように思います。いいよいいよ、デザインはデザイナーだけのものではない、気持ちよくなりたい総ての人のためのものだ。
仕事ができる人、というのは猛烈にセンスがいい人だと言えましょう。逆に、センス悪いのに仕事できる人なんていない・センスを必要としない仕事なんてこの世にない。仕事 is センス。仕事 is クリエイティブ。そういう意味の「センス」について書かれた本だと認識しました。
センス良く仕事しよう。センス良く仕事したい。よね。