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隣の賀喜はよくからかう賀喜だ。
『ねぇ、ノート見してよ』
隣の席の賀喜さんはとりあえず人に頼りすぎてる。
「うん、いいけど」
俺は少し戸惑いながらもノートを渡す。自分のノートは汚い字だし、まとめ方は雑だし
なにより授業をろくに聞いてない彼女にノートを
渡すのが何よりも屈辱的だった。
しかし、カースト上位にいる賀喜さんが俺を頼ってくれているというだけで嬉しくなって結局はなんでもしてあげてしまう。そんな自分が嫌いだ。
『ありがとさん!』
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もう、ずるいって。そんな笑顔見たら鬱憤も全部消し飛ぶわ。彼女がカースト上位にいる理由もなんとなく分かる気がする。
ー昼休みー
『ねぇ○○君、ジュース買ってきてくれない?なんでもいいから!』
静かに弁当を食べていた俺に突然お金を渡してくる賀喜さん。彼女の周りには当然友達がいる。
"遥香何してんの笑"
"○○君困ってるじゃん"
彼女の友達たちはそうやって遥香だけを注意する。きっと俺が一軍のカッコいい男子だったら
"早く買ってきてよぉ〜♡"
なんて茶化すんだろうけど。なにせ賀喜さんが話しかけた相手はカースト底辺の俺だからな。
「なんだよ賀喜」
『買ってきて欲しいなぁ〜って』
「なんで俺なんだよ。いっぱい友達いるだろ?」
『ふーん。つまんない』
賀喜さんはそう言ってお金をポケットにしまいだす。それを見て俺は思わず賀喜さんの手を掴む。頼まれたからにはやる、それが俺の生きる教訓だ。
「やらないとは言ってない」
周りの目もあるため俺は静かにお金を受け取る。賀喜さんは口角を上げてニンマリと微笑んでいた。
"遥香なんでそんな○○君と仲良いのww"
"ちょ〜意外ww"
そんな声が聞こえてきたが賀喜さんがその返事をするのは聞きたくなかった。俺は一瞬で教室を後にし自販機へと向かった。
…とはいえ自販機には着いたものの
あいつ、100円しか渡してくれてない。
100円で買えるものなんてせいぜい水くらいだぞ?でも賀喜さん『ジュース』って言ってたような…。
○○は諦めて自分の財布から50円玉を取り出して賀喜がいつも飲んでいるファンタグレープを買おうとする。しかし、ポケットに手を突っ込んでも財布の感覚がない。
「え、落とした⁉︎」
俺は何度もポケットを叩く。しかし、財布は出てこない。
「嘘だろ…」
置いてきたのか?教室に?いやいや、今日はバッグから出してないはずなんだけど…ん?
『あなたが落としたのはこの、黒い財布ですか。それとも…
私が渡しそびれた50円玉ですか?』
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そこにいたのはまるで湖の女神のようなセリフで登場した賀喜さんだった。
『私がそれ飲みたいって分かってくれてたんだ。別に飲み物の指定してないから水でもよかったのに』
「…」
『案外優しいじゃん』
賀喜さんは俺のおでこにデコピンをする。
「なんでだよ笑」
『ん〜なんとなく?ご褒美的な』
「何のご褒美でもない」
『嬉しいくせに』
ま〜たニコニコと笑って肘で赤い顔をした俺を小突く賀喜さん。いくら俺をからかったら気が済むんだ。
「じゃあ早くその50円玉と財布を返してください」
『じゃあ、手を出してください』
賀喜さんは俺に手のひらを出すようにと催促してきた。きっと50円玉を渡してくれるのだろう。俺はそう思って素直に手のひらを差し出した。
すると、賀喜さんはそんな○○の手のひらを自分の手のひらで覆い被せた。
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「え⁉︎」
思わず声を出してしまう。
『サプラァ〜イズ✌️』
手を繋いでいない方の手でこちらにピースしてくる賀喜さん。
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「ちょっ‼︎」
俺は突然のことにビックリして手を慌てて離してしまった。名残惜しかったが彼女のことだからまた
"からかってる"
だけなんだろう?
『○○君は私のこと嫌い?』
しかし、そんな俺の考えとは裏腹に賀喜さんは儚い声でそう言った。
「何を言い出すんだよ…」
『だって…手、離すじゃん』
賀喜さんはそう言いながら離れた手に視線を注ぐ。俺はそんな彼女の瞳に目を移す。彼女の瞳は今までに見たことがないほど潤んでいてもうあと一コンマ秒進んだだけで涙が流れてしまいそうだった。
俺は思わずそんな彼女を見て焦りながらも赤面してしまう。すると賀喜さんは
『へへ、照れてる笑』
と不敵に笑い出した。
「え…?」
涙が嘘みたいに消えていった彼女の笑みに俺も思わず笑ってしまう。
「なんなんだよ笑」
『○○が照れた〜笑』
俺は呆れて歩き出す。隣に歩く賀喜さんの後ろからちょこちょこと触れる手に気がつかないフリをしながら。
やっぱり隣の賀喜さんはよくからかってくる。
END