Merandiを家に飾って思うこと
作品を飾る場所を考える、楽しい悩み
POETIC SCAPEで作品を購入してくれたお客様から、しばしば作品を飾る場所についてアドバイスを求められる。そんな時は決まって「湿度と直射日光に気をつければ、基本的に好きな場所でOKですよ」と答えるのだけど、では自分はどうかといえば、やっぱり悩むのだ(まあ、その悩む過程が楽しいのだけど)
4/3まで開催していた野村浩展「Merandi」にて、どうしても、どうしても欲しかった作品を購入した。Merandiは14x18cmの、とても小さな油絵。小さいからどんな場所にでも飾れるかと思ったが、そんなに簡単ではなかった。自宅に持ち帰り2,3箇所を試して、先日やっと居場所が見つかったところだ。
100年分の歴史と文脈ひきつれて
作品の上にある、一風変わったライトは、かつて西荻窪にあった無相創というお店で購入したもの。もう15年以上前だと思う。無相創は当時アンティークを主に扱っていたが、オーナーの米原さんが手掛ける家具や照明器具も素晴らしく、当時は毎週の様に通っていた。このライトは100年以上前にフランスで使われていたというスクレイパー、ガラス製の漏斗、繊細な針金の橋を組みあわせ創られている。
一度落下させてしまい修理してもらいつつ、長年我が家のフォーカスポイントとして活躍してきた。しかし先日、最後の電球が切れてしまった。新しいものを探したが、これが結構難儀だった。2020年のLED時代、E12/110V/5W電球はもう完全に過去のテクノロジーになっていた。(結局ネットで10個入りを見つけ購入)無相創も今は下北沢に拠点を移し、社員を数名抱えて店舗や住宅のリノベーションを手がける会社に成長しているようだ。でも僕は、米原さんが西荻窪の小さな店の奥で一人作っていた、この照明がとても気に入っている。
みんなの「Merandiちゃん」
さて、幸いMerandiは多くの方にコレクションして頂いた。後日コレクターの皆様がinstagram に「我が家のMerandi」の様子をポストしてくれたのだが、壁にちゃんと掛かっているものもあれば、本棚にキュッと収まったり、オブジェのそばにちょこんと置かれていたりと、「何か」と隣り合わせで飾られている姿も多かった。色合わせやモチーフ合わせなど、作品のオーナー独自の発想とセンスで、何かとコンビを組んだ作品は、今までなかった新しい文脈を獲得し、同時に作品自体の見え方も変化する。これはとても知的で楽しい遊びだと思う。Merandi的にいえば、新しい環境を取り入れ擬態し、その場にすっと馴染んでいくように。
私の気まぐれで、思いがけず100年以上前の古道具と同居することになった我が家のMerandiは、さっそく知人をして、そこに「はじめからいたみたい」と言わしめている。それはこの作品がイタリア絵画の巨匠、ジョルジョ・モランディへのオマージュとして生まれつつも、実はもっと懐深く、さらに成長する可能性をもった作品だからだろう。