山上新平展「liminal (eyes) 」|於:鎌倉 旧大佛次郎茶亭」
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2023年11月18日より11月26日まで、鎌倉の海と波を捉えた山上新平の個展 「liminal (eyes)」を開催いたします。本作は、東京・福岡・京都、と様々な場所で展示をおこない、そして最後に撮影地である鎌倉へ「写真を返す」こととなりました。会場は、雪ノ下の古い路地に残る「旧大佛次郎茶亭」。ここではかつて古都鎌倉の街並みと自然を愛した作家・大佛次郎が多くの友人らをもてなしました。彼の思いが残る場所とともに、山上新平の作品をご覧ください。
山上の作品の変遷は、山上が一貫してこだわってきた「眼差し」の変遷と言えるかもしれません。実家近くの山中に入り撮影した初期のモノクロ作品三部作(「EQUAL」「SOW」「SPECTRUM」)は、自らの命を削るように森の深部に潜り、眼差しを少しづつ変容させながら生み出されました。続いて取り組んだ「The Disintegration Loops」では「脱力したまなざし」(当時の山上のメモより)により黒一色の前シリーズから一転、作品は豊かな色彩を獲得します。
波を撮る前、山上はチョウを撮影しています。鳥などに比べて動きが不規則で目で追えない被写体に対し、眼差しはどう反応するかという挑みでした。「とらえよう、つかもうとすることから脱却することで、触れるだけの眼が生まれました」(写真集の制作に向けた言葉より)。この「触れるだけの」眼差しを得て、山上は住処の鎌倉の海と波に挑み、写真集「liminal (eyes) YAMAGAMI」を完成させます。
山上は己の眼差しと同様もしくはそれ以上に「鑑賞者の眼差し」を重視しています。「『いかに見る人の眼差しに耐えられるか』それは一貫してコアにあるものかもしれません。」(前出の言葉より)。山上は苦闘の末に生み出した自分の写真から距離を取り、その反対側にいる鑑賞者の前に差し出します。そしてその写真が見られるとき、見る人の中に何らかの作用を引き起こす強度があるのかを常に問い続けています。写真は写真であって、写真は自分ではないと言い切る山上の作品は、自己表現というものから最も遠い位置にあります。
「山上は常に闘い続けている男だ。被写体へ、見る人へ、写真へのぶつかり稽古を止めようとしない。」(幅允孝、写真集 「liminal (eyes) YAMAGAMI」収録「新しい眼差しを探して」より)
<展示概要>
山上新平 展 |liminal (eyes)
会場:旧大佛次郎茶亭|神奈川県鎌倉市雪ノ下1丁目11-22
会期:2023年11月18日(土)−11月26日(日)
時間:10:00-17:00 会期中無休
協力:株式会社 bookshop M / POETIC SCAPE
<Profile>
山上新平 (Shimpei Yamagami)
1984年神奈川県生まれ。イイノ・メディアプロ退社後、写真家として活動。主なグループ展に、『LUMIX MEETS BEYOND 2020 BY JAPANESE PHOTOGRAPHERS #3』(YellowKorner Paris Pompidou/パリ/ 2015、IMA gallery/東京/ 2016)、『Daikanyama photo fair 2017』 (代官山ヒルサイドフォーラム/東京/ 2017)、『3daysEXHIBITION』(セゾンアートギャラリー/東京/2017)。主な個展は、『0189』(社食堂|SUPPOSE DESIGN OFFICE/Youngtree Press/東京/ 2017)、『山上新平展』(思文閣/東京・京都/ 2019)、『The Disintegration Loops』 (POETIC SCAPE /東京/ 2019)、『Refined black』(Laboratory △II/東京/ 2019)。2017年に『Daikanyama photo fair competition』にて奈良美智賞を受賞。2022年には、デザイナーの皆川明(ミナペルホネン)発行による写真集『Helix』を出版。2022年11月、bookshop Mから刊行された写真集『liminal (eyes)YAMAGAMI』をPARIS PHOTOで発表。
また2023年10月27日から2024年1月21日まで東京都写真美術館で開催中『見る前に跳べ 日本の新進作家Vol.20』に新作を出品している。
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<旧大佛次郎茶亭について>
1919年築、鎌倉市景観重要建築物。板塀に囲まれた広大な敷地に建つ、茅葺きの数寄屋風建築。2021年、大佛次郎の功績を後世に伝えるため同所の保存会が発足。親族より建物を継承し、大規模修繕を終えて再生した。
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