絶望を超えた先
こんにちは。ようやく、長かった夏の暑さも落ち着き秋らしい日が増えてきました。しかし、暑がりの私はまだ半袖が現役です。
秋といえば、食欲、読書、芸術と様々ありますが、今回はそんな芸術の秋にふさわしい最近観た演劇のお話です。
good moring N°5との出会い
この春映画「i ai」に救われた私は、それ以降も時々「i ai」に思いを馳せながら生きてきました。
映画「i ai」については下記をどうぞ
そんな中、プロデューサーと主演が同じ「VOGUES」という作品が上演されることを知りました。スタジオブルーの平体プロデューサーと、富田健太郎さんが主演。
劇団はgood morning N°5。
自分の過去の経歴上、メジャーな映画やテレビはある程度知識がありますが、いわゆる舞台には疎い。
後に知るのですが、主催の澤田さんが長く続けている劇団なのだそうです。
初めて見る名前の劇団に音楽は中村中さんが担当と知っている名前が。
なんだか頭の中で整理がつかず、どんな規模のどんな作品なのかつぎはぎな印象を抱いたのでした。
とりあえず、チケットをと思い土曜日のチケットを購入。
幕が上がるその日を待っていました。
公演初日の前日。劇団の公式Xに投稿されたティザーを見て衝撃が走りました。
「え?なにこれ」
本当にそう口から出ました。
なんとも表現し難い、異常なまでの興味が襲ってきました。しかしあんまり情報がない。"絶望"についての話ということと、衝撃的なビジュアルとティザーであること以外なにもわからない。
じゃあ、観に行くしかない。と、初日のチケットを急遽買い足し、初日に足を運びました。
ザ・スズナリと
good morning N°5のVOGUESは下北沢のザ・スズナリにて、上演中です。
このザ・スズナリという劇場にももちろん初めて足を運んだわけです。小さい劇場だろうと言うのは分かっていたのですが、会場について衝撃。
階段に足を置いた瞬間に分かる木造建築感。この令和の時代に木造建築の劇場って現存するのかと感動を覚えました。
そしてこのザ・スズナリも非常に下北沢では有名な小劇場であることを後に知るのでした。
劇場にも足を踏み入れた瞬間に聞こえる
「こんにちは!いらっしゃいませ!」と居酒屋か、、?と思うほどの元気な声。(ちなみにザ・スズナリの下はスナックがいっぱい)
なんと声の主は、出演者をはじめとする劇団関係者の皆様。
スタッフの方だけでなく出演者の皆様も物販、
座席誘導と全てに携わる、なんとも言えないアットホーム感。演目が始まる前に出演者を見ることができることがあるのかと感動すら覚えました。
物販のエリアには出演者の皆さんだけでなく、平体プロデューサーも。元気の良い挨拶から溢れるウェルカム感に、知らない劇場に足を踏み入れた緊張感が一気に解けました。
劇場内に入ると、真っ白なセット。だけでなく壁も床も全てが真っ白。撮影スタジオのような白さでした。限りある細い通路に澤田さんと出演者の皆様がまた元気に挨拶していただき、お席を案内してくださったり、物販をしていただきたり。もちろん、主演の富田さんも。そして開演までずっと聴くことができる澤田さんの軽快なトーク。
心地の良いテンポのトークはこれから始まるVOGUES本編をより一層楽しみにしてくれました。
そして何よりも驚いたのが、公演中の飲食可能。自由に観てくださいと。
私は過去何度か舞台を観劇した経験がありますが、そのどれもが会場の規模を問わず公演中の飲食は禁止。携帯電話は電源を切ることがマナー。静まり返る劇場に張り詰める緊張感。
それが舞台だと思っていましたが、その全てを覆してきました。
何より、会場の物販のメニューに飲み物があるくらいです。感動しました。
こんなに見る前から楽しめる舞台があったのかと思いました。
舞台が初めての人にはぜひ経験していただきたいと思います。
流行と絶望
公演名のVOGUESは流行を意味する単語です。そして、物語のキーになるのは「絶望」。先にお伝えすると、「絶望」だから暗い話かと言うとそんなことは全くありません。
富田さんが演じる20代前半の絶望した男とかつて絶望を経験した母の2人が軸に「絶望」をコミカルにテンポよく描いています。
では、そこに流行がどう絡むのか。なぜ、この公演は流行を意味する「VOGUES」と名前がついたのか。私にも分かりません。
でも、流行、絶望、刃物、白、虫。バラバラなものがなぜか一つの作品として、メッセージとして形を成している。まるでパッチワークのような作品だと思います。
絶望は、辛く悲しい、暗く深い闇を落とすものですが、きっと生きていればそれを打破することもできる。
1回目を観た時は勢いとコミカルに飲み込まれて精一杯だったけど、2回目を観た時に少しずつパズルのピースがはまるように、納得感が要所要所に出てきました。
ああ、こんなことを言いたいのかもしれない。こんなことを描きたいのかもしれない。そう、思いながら勢いのある90分を走り抜けました。
この作品の魅力の一つは、中村中さんの素晴らしい音楽。
歌唱シーンが何度かありますが、皆さん歌がうますぎる。
富田さん、あんなに歌が上手いのか。と感動しました。映画「i ai」では、バンドマンの役をやられていましたが歌唱シーンはシャウトに近く正直歌が上手いかどうかは分かりませんでした。
しかし今回の公演での歌声を聴いてうますぎて笑いそうになったほど。本当にすごく上手い。ぜひ聴いてほしいです。
絶望と向き合う
good morning N°5の力を今ひしひしと感じながら生きています。
きっとこの先私も絶望と向き合う日がまだまだ来る。だけどその時に、このVOGUESの曲を口ずさめたらいいなと思います。
そうしたらきっとまたこのVOGUESを楽しんだ日々を思い出せるから。
good morning N°5のVOGUESは下北沢ザ・スズナリで10/7まで。
ぜひ足をお運びください。
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