芸能人の政治的発言の是非とアイドルの恋愛の是非における共通性への一考察

SNSでの芸能人による政治的発言へのコメントの応酬を日々見ていて、思ったことがあります。

〜 芸能人の政治的発言で議論されてることと、アイドルの恋愛で論争が起こるときの論点は同じなのではないか説 〜

賛成・反対派が主張していることや互いに噛み合ってない部分が、根本的なところで重なるように感じるぞ、と。
そこで、僕の思う共通点について解釈と意見をまとめてみました。

なお、例のハッシュタグ関連について内容が正しいかどうか、黒幕や意図的な拡散の議論も出ていますが、これらは今回の内容とは別の話なので触れません。

1. その行為は許されざることなのかという話

芸能人が政治的発言をすること自体が否定されることがあります。
あるいは歌手だからとか、俳優だから政治的発言をするな、みたいに言われたり。

このような否定の裏には、大きく2つの考えがあるように思います。

 (1)嘲り:政治のことなんてわからない奴が語るな
 (2)願望:あなたの世界に政治のことを持ち込んでほしくない

そしてアイドルの恋愛話が出たときに否定する意見にも、同じような傾向があります。

 (1)嘲り:アイドルのくせに彼氏作るんだな、ルール守れないんだな
 (2)願望:アイドルの世界に彼氏という現実の恋愛を持ち込んでほしくない

僕個人は(1)嘲りについてはその人のことをよく知らずに批判していたり、対象を芸能人やアイドルとひと括りにして否定する傾向が強いため、賛同できないことが多いです。

一方で(2)願望については、相手を好きだからこその葛藤を感じるため、少なくとも第三者がその考えを否定するのは違うように考えています。
これを否定できる人がいるとすれば、それは自分自身やその作品、世界観に責任を持っている芸能人自身なのでしょう。

2.人権と絡めて議論されがちな件

政治的発言をするなという声に対して、人権侵害だっていう意見もいくつか見ました。
これと一緒にすると怒られるかもしれないけど、「アイドルの恋愛ってどうなの?」についても女性に対する人権侵害だと言われることがあります。

これらに関しては僕は全く間違っていると考えています。
仮にその発言や行動が原因で国や企業から干されたりした場合は、人権侵害と判断されることもあるように思います。

ですが、単なる一般人が何らかの反対意見を上げたことで、有名人やアイドルの活動が直接的に阻害されることがあるのでしょうか。
別に政治的発言やアイドルの恋愛事に限らず、というよりも有名人によらず一般人でさえ、何かを発言したり行動すればそこに反対する声はつきものです。

反対が上がることを人権侵害としてしまったら、そこに残るのはなにも否定できない社会だけ。
それって宗教じゃないですか?
だから何かを否定することを人権侵害とつなげるのは極端だし危険だと思うわけです。

3.その人本人と作品や世界観は切り離せるのか

今回の流れの中で、著名人は政治的スタンスを明らかにすべきだ、という意見も見られました。
政治的発言をしないことが悪いこと、といった考えです。
例えばちょっと前ですが、似たようなところでこういう記事もありました。

さて僕個人は、有名人が政治的発言をしなきゃいけないとも、したほうがいいとか偉いとも思ってません。
それは1でも書いた、世界観の問題があるからです。

例えば『僕らは一人じゃない』と歌っている人がある日「友達なんて一人もいないしそんな関係は信じられない」と発言したら、それまでと同じ気持ちで歌を聴けるのでしょうか。
その人個人の考え方と作品を切り離して考えられるかどうかは人により異なるし、どっちが正解というのもないように思います。

だから僕は「自分の思想を出すけど作品は別に考えてよ」ともしも考えている人がいるならそれはエゴでしかないと思ってます。
作品や世界観を大切にしたいなら、それを壊す可能性がある行動はすべきではない。
そうするかどうかを選び、どう思われたいかを選べることが有名人それぞれの自由なのだろうと。

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これと同様なことをアイドルの恋愛事情についても思っています。
AKB以降は恋愛禁止ルールが明言されるケースが増え、破ると罰則が課されることが多くなってきました。

一方で最近は恋愛OKや結婚を発表するアイドルも出てきて、それに対してどうなの?という意見と、アイドルだって人間なのだから恋愛は自由じゃないの?という論争がたびたび起こります。
これもファンがアイドルという『作品』であるところのAさんと、一人の人間としてのAさんを分けて考えられるかどうかの問題なのだろうと考えています。
そういった根本のスタンスが異なる相手に「素直に祝福できないの?」と強制するような発言を見ると、これは分かり合えないだろうなと思うわけです。

恋愛事情について公表するアイドルは、どっちの考えで見られることも覚悟しなければいけない。
その上でどのようにアイドルをやっていくのかを決めるのは、ほかならぬアイドル自身かあるいはプロデュースする方々なのでしょう。

4.同じ人間なのにダメなの論について

今回政治的発言をした芸能人の方々への賛成意見として、自分が思うことを発言するのは自由でしょ、というのがありました。

僕も基本的にこの意見には同意しているけど、自分の発言が影響力を持つということは必ず前提におかなければならないと思っています。
それはつまり、自分の発言が数千、数万、それ以上の人の意思決定に影響するかもしれない責任を持たねばならないということ。
もしも誰かを傷つける表現や、誤った情報を流してしまったら、取り返しがつかないことになるかもしれないということ。

一人の人間として何かを言いたい、だけど影響力は持たせたくないし責任は持てないというのなら、偽名の裏アカウントでも使えばいいはず。
それをせず有名人としての名前を使うということは、その影響力を利用しているということになる。
だから、それに伴う責任は絶対に背負わなければいけない。

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アイドルの恋愛発覚時にも、一人の女性が恋愛しちゃいけないの?という擁護論が出ることがある。
これについてもアイドル自身の行動がファンに影響を及ぼす影響や反応を覚悟していないといけないと思う。

恋愛が容認されている場合を除いて、ルールを破ればきっとファンを傷つける。
恋愛することは自由だけど、ファンに対しての責任は背負わなければいけない。
絶対に表に出してはいけないし、明るみに出たときの影響は覚悟しなければいけない。

5.利用される可能性について

今の日本だと、有名人が政治的発言をすること自体がニュースになってしまう。

そして、最近の報道を見ている限り、理解の深さや細かな意見の違いよりも、賛成or反対をしている!ということが重視されがちに見える。
(ここでも、一般人の意見と違ってネームバリューという影響力が使われていますね)

これは正直マスコミや一部政治家も悪いと感じるけど、政治的な発言は利用される可能性があることを覚悟しなければいけないと思う。
あるいは、自分の意図しない形で使われたときにはっきり否定や訂正をできるか、というのも大事だと思う。

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アイドルの恋愛も文〇砲のように、話題として消費しようとする人たちがたくさんいる。
細かな内容云々ではなく、アイドルの恋愛ということ自体が利用しやすいネタとされているんだろうな、と感じることは多々ある。

これはもう、推しメンが健全にいてくれるか、せめて決して尻尾をつかまれないよう頑張ってくれと願うしかない。

6.まとめ

色々書いたけど、結論としては有名人の政治的発言とアイドルの恋愛の是非については以下の共通点がある。

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・政治的発言も恋愛についても、それをしたことに対する否定に「お前がそれをするのはどうなの?」という嘲笑パターンと、「あなたにそれはしてほしくない」という願望パターンがある

・どちらも「それをしないでほしい」という声に対して人権侵害と言われることがある

・どちらもその人の作品や世界観と結びつく可能性があり、切り離して考えられるかどうかはファンなど受け取る側それぞれによる

・どちらもそれをすること自体は自由だが、一般人ではない以上は自身の影響力およびそれに伴う責任は切り離せない

・どちらもその行為をしたこと自体を利用される可能性がある

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最後に、twitterで意見をぶつけ合うすべての人に贈りたい言葉で締めくくろうと思います。

人間は、ある意見を、そうだと思いこむと、すべての事柄をその意見にあわせ、その意見が正当であると主張するのに、都合がいいように寄せ集めるものだ。  -フランシス・ベーコン-

↑このnoteに対する特大ブーメラン