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在庫循環について

概要

景気変動を機敏に判断するために、在庫の変動は景気変動に大きな影響を持つとされている。
「在庫循環図」とは 、経済産業省または各都道府県が毎月、公表している鉱工業指数のなかの「出荷指数」 (または「生産指数」)の前年同月比(または前年同期比)を横軸にとり、「在庫指数」の前年同月比 (または前年同期比)を縦軸にとり、各時点の状況をプロットした図である。

以下の①②③④のフェーズで反時計回りで回転していく。

  1. 意図せざる在庫減少局面:景気拡張期に入ると、需要の増加が企業の予測を上回り、増産しても需 要に追いつかず、一時的に在庫が減少する。

  2. 在庫積み増し局面:景気拡張期が長くなってくると、企業は将来の更なる需要増に備えて増産し、 在庫を積極的に積み増そうとする。

  3. 在庫積み上がり局面:景気の山を越して後退期に入ると、需要が企業の予測を下回り、需要の 減少速度に減産が追いつかず、在庫は積み上がり増加してしまう。

  4. 在庫調整局面:景気後退期が続くと、企業はさらに減産を進め、積み上がった在庫を減らそうとす る。

毎月末に経済産業省より発出されている鉱工業指数では、直近5年間の在庫循環図が掲載されている。
直近も24年8月30日に発表された7月の発表値は以下。

  • 2019年第4四半期の④在庫調整局面からスタートし、

  • 2020年はコロナショックを受けて、①意図せざる在庫減局面へ

  • 2021年はコロナ以降のペントアップ需要から①⇒②在庫積み増し局面

  • 2022年は②⇒③在庫積み上がり局面、

  • 2023年は③⇒④在庫調整局面へ、

  • 2024年では、④⇒①意図せざる在庫減局面へシフトがみられ、今後の生産拡大が見込まれる局面と考えられる。

出荷指数

直近の月次データである24年7月の出荷指数では、以下のように経済産業省よりコメントされている。

業種別にみると、全15業種のうち13業種が上昇という結果でした。
7月は、電気・情報通信機械工業、生産用機械工業等が上昇したことから、全体として上昇しました。
上昇寄与度の最も大きかった電気・情報通信機械工業ではレーダ装置等が、次に上昇寄与が大きかった生産用機械工業では、半導体製造装置等が上昇要因となっています。
財の需要先の用途別分類である財別出荷指数をみると、生産財が、モス型IC(メモリ)やリチウムイオン蓄電池等の出荷増により、前月比3.3%と上昇。資本財(除.輸送機械)が半導体製造装置やレーダ装置等の出荷増により、同7.0%と上昇。また、建設財が同6.3%と上昇、耐久消費財が同0.1%と上昇となりました。一方、非耐久消費財は同マイナス0.3%と低下となりました

在庫指数

同様に在庫指数のコメントは以下。
自動車は出荷は低下、在庫は増加と④在庫調整局面であることが窺える。一方、電子部品は生産がプラスでありつつ、在庫も増となっており、①と②の間であることが想像されます。

7月の鉱工業在庫は、季節調整済指数103.0、前月比0.4%と、2か月ぶりの上昇となりました。
業種別にみると、全15業種のうち、4業種が上昇、11業種が低下となりました。
上昇寄与度の最も大きかった自動車工業は、普通乗用車や普通トラック等が主な上昇要因となっています。


出荷在庫バランス

こちらは月次の鉱工業生産の資料では、グラフ化されていないものであるが、同様に生産動向を測る上で、見られるものとしては、「出荷・在庫バランス」である。
出荷・在庫バランスは、出荷の前年比から在庫の前年比を引いて計算する。出荷・在庫バランスは、出荷の伸びが在庫の伸びを上回ればプラス、逆に下回るとマイナスになる。
つまりプラス幅の拡大は出荷が多いので在庫水準が低下し、企業は在庫を適正水準に戻すために生産活動を活発にする必要があることを意味する。逆にマイナス幅の拡大は、在庫水準を下げるために生産調整する必要があることを意味する。


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