ポップコーンは買わない派です。vol.63
ドクタースリープ
キューブリックvsスティーブンキング
これにて決着!
予告編
出典:YouTube「ワーナーブラザーズ公式チャンネル」
あらすじ
スタンリー・キューブリック監督がスティーブン・キングの小説を原作に描いた傑作ホラー「シャイニング」の40年後を描いた続編。雪山のホテルでの惨劇を生き残り大人へと成長したダニーを主人公に、新たな恐怖を描く。40年前、狂った父親に殺されかけるという壮絶な体験を生き延びたダニーは、トラウマを抱え、大人になったいまも人を避けるように孤独に生きていた。そんな彼の周囲で児童ばかりを狙った不可解な連続殺人事件が発生し、あわせて不思議な力をもった謎の少女アブラが現れる。その力で事件を目撃してしまったというアブラとともに、ダニーは事件を追うが、その中で40年前の惨劇が起きたホテルへとたどり着く。
名作ホラー「シャイニング」の40年後を描く世界観
そもそも「シャイニング」とは
原作・スティーブンキングの小説をスタンリーキューブリックが映画化され、名作ホラーの一つとして数えられます。
小説家志望のジャック・トランスは、妻のウェンディーと心霊能力のある息子ダニーとともにホテルへやってくる。そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人が家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。
シャイニングでは超能力を持つダニーの話が中心になるはずだったのですが、その超能力のシャイニングを発揮されることもなく、原作との相違点が多いことからスティーブンキングとの確執があったことも有名な話です。
そんなスティーブンキングは納得できない気持ちが抑えられないまま、原作に忠実に作ったシャイニングがあることも覚えておいていいかもしれません。
完全に自己満に近いところがあると思いますが、それだけ怒り心頭だったんですね。
そんなシャイニングにいろいろあったスティーブンキングをも納得させたという作品がこの「ドクタースリープ」
これはキューブリック版シャイニングの40年後の世界を描いたもので、まさにキューブリックとスティーブンキングの間を取り持つかのような作品であるとも言えるのです。
シャイニングとはダニーをはじめとしたマイノリティが持つ特殊能力であるということ。スティーブンキングのこだわり。
キューブリック版のシャイニングで描ききれていなかった部分の一つに「シャイニングの超能力」が挙げられます。
タイトルになっているのにも関わらずその全貌が明らかにされない「シャイニング」という存在。
ダニーという子供の能力のことで、細かくその能力の片鱗は見せるもののその全貌が明らかにされないというキーになるワードなのに説明がないため難解化しているのです。
ドクタースリープでは当時子供だったダニーが大人になり、シャイニングを終末治療に役立てている姿が印象的に映ります。
スティーブンキングはこのシャイニングという特殊能力の存在にこだわりを持っていたようで、キューブリック版ではあまり描かれずイライラしていたようです。
原作を読む機会がない分、映画での情報が全てと思ってしまうと原作者も難しい心境ではありますよね。
自分の主張とは異なることを出されてしまっては意図してない捉え方をされてしまう可能性があるから。
自らの経験を元に作品を手掛けることが多いスティーブンキングにとって、原作のねじ曲げは自分を否定されたようにも捉えられるので心境を察しざるをえません。
よく漫画の実写とかでもありますよね。この場合は原作者というよりかはファンの方が原作に忠実であるか否かを警備しているように思えますが。笑
キューブリックとスティーブンキングが扱うテーマ性の違い
キューブリックの映画ではあまり超能力というリアルを超越した世界はこれまで描かれていないように思えます。さらにいうと人間の内側にある性悪的な部分や凶暴性、暴力性みたいなものをリアルを持って追及しているように思えます。
一方スティーブンキングは自らの恐怖体験やトラウマとなったものを誇張し、最悪なことを小説や映画として描くことでより良い世界を見ている部分があるので、ある種リアルを超越した恐怖を与えることで人々導こうとしていたのではないかと思います。
この2人の相反する部分が、確執をうむ要因となっているように感じます。
そういう点で言うとこのドクタースリープという作品はかなりスティーブンキングよりになっていると思います。見ていただくくとわかりますが、超能力合戦のような感じで、人間的な怖さというよりかは演出や音でびっくりする感じでした。
ホラーの中でも怖がらせ方によって様々あるんだなということがわかりました。
最後に
シャイニングを見てからドクタースリープを見た方がいいとおもいます。
だけれども、シャイニングのクオリティが高すぎて、本作が残念に思えてしまう部分もきっと多いと思うのも確か。笑
人それぞれだとは思いますが、制作側の思惑やテーマ性などを考慮するときっとそう思うはずです。てかその制作側の裏のエピソードの方がよっぽど面白いじゃないかとこの感想を書いていて思ってしまいました。
原作と映像作品はある意味、別のものとして考えた方がいいと思いました。原作ポリスも原作は原作の良さで留めておこうや。