ポップコーンは買わない派です。vol.82
野球少女
予告編
あらすじ
豪速球とボールの回転力が強みの女子高生チュ・スインは、高校卒業後はプロ野球選手の道へ進むべく練習に励んでいた。しかし女性というだけで正当な評価をされず、プロテストすら受けられない。さらに、友人や家族からも反対されてしまう。そんな折、プロ野球選手の夢に破れた新人コーチのチェ・ジンテが赴任してきたことで、彼女の運命は大きく動き出す。
オーディエンスの視点とプレイヤーの視点から感じる鑑賞時の違和感
今だからこそあまり違和感を覚えずにきたけど、女子が野球をするということに壁があったんだということが驚きだった。
女子野球といったら片岡さんとかナックル姫とか昔から有名だったもんね。
本作では冒頭に1996年に規約の規定で女子もプロ野球選手になれるということが定まってから女子プロ野球というものが存在として認められるようになったというところから、天才野球少女がプロが目指す過程を地味に(現実的に)描いていて手応えを感じるというか、なんかしっくりくる映画だった。
野球自体の人気は日本のみならず世界中で凄まじいことは周知の事実だと思う。けれども、女子のプロ野球と言われるとなんかいまひとつな印象を受けるのは僕だけじゃないはず。
それって女子が差別されているとかそういう話とは畑の違う話で、我々のような競技をしない観戦者サイドからすると、その競技自体が正直おもしろみにかける部分がある気はする。
本作でもその点はリアルに表現されているように感じて、天才野球少女として取り上げられながらも本人は男子と対等に戦おうとする。
そりゃそう、だって女子のプロ野球が存在しないから。
そんな天才野球少女のスイン、最高球速はなんと134キロ!。。。。
ん〜〜、野球を知っている人ならなんとなく察していると思うが、男子と張り合うのに最高が134キロじゃ遅いし、見てても面白くないでしょ。
現に男子選手に張り合って簡単に打ち返されてしまう場面もしばしば。
でも彼女はコーチのある一言である自分の長所に気づく。
球速は遅くても、球にキレがあり、回転数が多い。
球にキレがあるとバッターは打球を詰まらせやすくなり、内野ゴロになりやすい。
なるほど、この球のキレを活かして回転数の緩急でアウトを取っていこうということか。そこでさらに変化球としてナックルの習得に取り掛かる。
これはほんとに男子とまともにやっていけるかもしれない。
この時点でよくあるスポ根系とはまた違うアツさを感じて手に汗を握るのだ。
まああくまでもここは映画の展開がアツいということ。
ここまで述べてきた中で、カメラはずっと彼女の野球な好きな気持ち、自分の才能、苦悩を追っているからこそ感情移入できるけど、
普段の自分たちはどうだろうと考えた時に、観戦者であることが前提であることを考えた時に、どういう点でそのスポーツを面白く感じるかという点がもっとも重要であると考える。
例えば、
バレー
これは女子の方が圧倒的に面白いとされるスポーツの一例だ。
なぜなら、女子の方が男子よりもパワーは欠ける分、ラリーが続く。これが観戦者としてはラリーが長くなればなるほど熱狂するのだ。
ラリー系のスポーツを見てみると、卓球、バドミントンなどどれも女子選手の活躍が光るものが多い。
しかし、野球となるとどうしても注目してしまうのが投手の球速。そしてバッターの長打力、
他にもたくさんの魅力があるのは知っているが、人気のスポーツというものははっきりとわかりやすい魅力があると思う。
もし観戦者がプレイヤーの視点にうつった時にそれはどう感じ、どう印象が変化するか考えたことはあるだろうか。
プレー中の駆け引きなど、我々の知らないところでものすごいことが繰り広げられていることはほとんどの人は知らない。
運動部に所属してたような人たちは経験があると思うのでここは理解できると思う。
女子でも野球が好きな人はもちろんたくさんいるし、サッカーも、バスケもどんなスポーツでも女子の人口は存在するし、否定されることはないだろう。
でも一昔前まではそれが許されていなかった。野球が好きだからプロを目指したいという夢すら描けない時代があったのだ。
女子だからダメ、男子だからダメということを日本人は「わきまえ」がちだが、そんな「わきまえ」一切無視して突き進み切った結果、野球界を変えることになった。
そんな女子高生の話。
だから、皆がプレイヤー視点で何かやり始める時、何かに挑戦してて挫折しそうになった時、この作品は勇気を与えてくれる気はする。
業界が変わるのも難しい話で、業界的にはプレイヤーのことも考えてやらんといけないし、なおかつ業界が盛り上がるようにファンを増やしていくこともやっていかないといけない。
ある意味、オーディエンスとプレイヤーの間にいる組織の方に強く共感している自分がいるのはこの感想を描いていても腑に落ちる結果だと思った。
今回でいうと球団という組織。
今回の作品はプレイヤー視点でどうしても描かれている分、共感にかける部分は多かった。でもこの作品から学べることは多かったのでそれは良かったと思う。