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奥多摩から小菅へ 日帰りで行ける「秘境」の旅

 旅行の最大の目的は、日常の生活圏から脱却し心身をリフレッシュすること。自然の中に身をおき、美味しいご当地料理に舌鼓、温泉に浸かって疲れをとりたい・・・。しかしながら時間も予算もなかなかとれないのが現実。そんななか知る人ぞ知る多摩地区から日帰り可能、東京の奥座敷・奥多摩から山梨県の小菅村を巡る「安・近・短」な“秘境”の旅をご紹介します。

湖面に映る奥多摩の自然

 山梨方面へ行くならば、まず思いつくのは甲州街道ルート。しかしかつて甲州裏街道と呼ばれた青梅街道で峠を越え、山間の村、小菅へと抜けるルートがあります。この道のりには見どころが多いのですが、都県を跨いでいるため、詳細な案内のある観光ガイドは見当たらず、知る人ぞ知る秘境のルートとなっています。

奥多摩 008

 旅のスタートはJR青梅線の奥多摩駅。八王子からでもあきる野からでも電車で1時間半足らず。クルマなら青梅街道に出て道なりに走れば到着します奥多摩駅の周辺は多摩川と日原川が落ち合うところで、青梅街道の氷川宿として栄えてきました。駅周辺には食堂や土産物屋などが立ち並び、1日3本のバスが小菅まで出ています。この集落にあるコンビ二エンスストアが東京都の最西端です。

小河内川ダム001 (2)

 青梅街道を道なりに走ること15分ほど。左手に奥多摩湖が姿を現します。奥多摩湖は、東京都の水がめ。都内で利用される約2割の水を供給する人造湖です。湖畔の東の端には小河内ダムがあり、ダムを一望できる展望台からは、周囲の木々や山々の尾根を映し出す湖面が望め、奥多摩の自然を楽しむことができます。ダム建設で故郷を追われた人々に贈られた哀歌「湖底の故郷」は東海林太郎が歌い戦前に大ヒットを飛ばしましたが、その歌碑が湖畔に建立されています。

浮橋 (6)

 小河内ダムを青梅街道に沿って、さらに10数分ほど、湖面に浮かぶ橋が見えてきます。この橋は麦山浮橋といい、奥多摩湖に架かる2ヶ所ある浮橋のひとつです。ダム建設によって水没した対岸との通行路に代わって架けられたもので、青梅街道と奥多摩周遊道路を結び、ハイキングや登山客などにも親しまれています。かつては浮子にドラム缶を使用していたため、「ドラム缶橋」の愛称で親しまれていますが、現在はポリエチレン製の浮子を使用しています。湖に架かる一筋の浮橋は奥多摩湖の象徴的な景観です。

多摩源流の温泉で一休み

 ここまで奥多摩駅から湖沿いの街道を直進してきましたが、深山橋で遠く山梨県の塩山市まで通じる青梅街道とはお別れ。小菅川に沿って谷間の道をしばらく走り「多摩源流 小菅村」と記された大きな木の看板が見えたら都県境です。

小菅村の看板 (3)

 山梨県に入って最初のある集落が余沢。ここは武田信玄の時代に番所が置かれ、甲武(山梨と東京)の国境警備が行われていました。この余沢には黄色い看板が目立つ「チャーちゃんまんじゅう」があります。蒸かしたてのまんじゅうは、生地も餡も手作りで素朴な味わい。ボリュームもあり峠を越えてきた自転車のロードレーサーや、ドライブの観光客に口コミで人気が広まり、今では全国に冷凍宅配するほどで小菅村の特産品ともいえる存在です。

チャーちゃんまんじゅう (5)

 余沢を過ぎ民家が点々とするようになると、まもなく小菅の中心へと到着します。小菅村は人口858人の山間の村。山梨県北都留郡に位置しますが、観光シーズン以外は奥多摩駅へのバス路線しかなく、電話番号の市外局番も04台、都水道局の水源林もあるなど東京とのつながりが深い村です。 「多摩源流 小菅の湯」は1994年にオープンした日帰り温泉施設で、村の中心部から少し離れていますが、奥多摩駅からのバスに村営バスが連絡しています。露天風呂、打たせ湯、ジャグジーなどたくさんの種類の風呂があり、高アルカリ性温泉の肌がつるつるになる湯として評判です。その小菅の湯の隣には小菅村物産館があります。わさびやこんにゃく、山菜といった山の幸、中華食材として注目されているマコモダケなど穫れたての新鮮野菜の即売のほか、こちらも村特産のヤマメは炭火焼のアツアツをいただくことができます。

小菅の湯 (5)

帰路は都県境沿いに上野原まで南下

 小菅の湯からは春と秋の観光シーズンに、JR中央線の上野原駅まで路線バスが運行されます。このバスを利用すれば、一筆書きで八王子方面へと帰れます。小菅を出ると大月へと至る国道139号線から別れ、都県境に沿って通る山梨県道18号線を進みます。ヘアピンカーブが連続する箇所がありますが、ここが鶴峠。最高点にはバス停があり、870メートルに達します。少しずつ峠を下り、現れるのが小菅村長作地区。ここにある長作観音堂は鎌倉時代の建築とされ、国宝、重要文化財に指定されおり、養蚕と安産祈願にご利益があるとされ地域の信仰を集めています。

長作観音堂 (2)

さらに南下していくと次第に谷が開け、上野原市内に入ると山間の雰囲気が薄くなっていきます。途中道沿いに、西原地区に「びりゅう館」という大きく綺麗な建物がありますが、ここにも直売コーナーや蕎麦処があるのでクルマでのドライブの際には一休みするのも良いでしょう。ここからも集落ごとに山村の里山の風景が見受けられますが、しばらく走り気がつくと、雰囲気がいつの間にかかわり上野原の市街へ。

上野原駅 (3)

 上野原駅からは電車なら高尾で乗換え八王子まで30分弱。クルマなら甲州街道、国道20号へ出て、相模湖を右手に見ながら、大垂水の峠を越して八王子市内へと戻ることになります。                  (『よみうりSunTAMArea』2010年11月号)

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