はじめての醸造指導 後編
(前回までのあらすじ)
・島根県にある「高津川リバービア」醸造指導に行きました。
・飛行機でスゲー乗り物酔いしました。
・醸造責任者の辻さんとビール談義に花が咲きました。
◼️2日目 ヴァイツェンの仕込み
さっそく仕込み。
醸造スペースは初日に見せてもらっていたので、ここでの仕込み方法は大体理解していました。
今回の依頼は「なんかざっくり仕込みがうまくいってない(気がするけど、どうよ?)」と言ったものだったので、全体的にみていきます。
マッシュタンは寸胴、直火のナノブルワリーでよく採用されているストロングスタイル(?)。
Brew Report(レシピなどを書いたもの)を見せてもらうとマッシング(※1)とスパージ(※2)工程にどうやら改善点がありそう……
※1 糖化工程のこと
※2 二番麦汁を取り出す工程のこと
というわけで、その辺を一旦変えて仕込んでみることに。
仕込み工程は醸造設備に依存することが大きく「これが正しい」と一般論で語れるところとそうでないところがあるのですが、今回は一般論で解決できると判断しました。
結果的に読みがあたり、糖化効率が前回の同じレシピの仕込みから10%以上アップ!
(糖化効率についてはまたの機会に詳しく書きます。)
これはブルワーの辻さんが仕込みごとに温度や比重、pHなどをこまめに記録してくれていた結果でもありました。
◼️3日目 瓶詰め、樽洗浄、レシピ修正
瓶詰めと樽洗浄。
また糖化効率の改善によって使用モルト量が減るため、定番レシピの修正をしました。
◼️4日目 イチゴのビール仕込み
仕込み、イチゴを使ったビールでした。
副原料を使ったビールは色々やってきたので、こういう投入方法もありますよ、とアドバイス。
イチゴのニュアンスをよりハッキリ表現できました。
糖化の具合はこの日も◎
◼️5日目 柚子ビールの仕込み
仕込み、依頼を頂いて書き下ろしたレシピで、地場産の柚子を贅沢に使いました。
糖化は今までステップインフュージョンで行ってきましたが、シングルインフュージョンもやってみましょう、ということでチャレンジ。
糖化効率も良好。
発酵前から柚子の香りもバッチリで、いいビールができそうです。
◼️6日目 クロモジの木片を使ったビールの仕込み
クロモジの木片を使ったビエールドギャルド、というブルワー辻さん考案のチャレンジングなビールを仕込み。
これまでのバッチを飲ませてもらったところ、香りが素晴らしく良いビールだと感じたのですが、やや渋味が気になるため、渋味を抑えるための処方をアレコレさせてもらいました。
◼️7日目 レシピの書き方
あっという間に最終日。
この日は予定だとオフだったのですが、せっかくなので、この1週間の総まとめとゼロからレシピを組み立てる方法をお伝えました。
午前中からはじめて、気がつけば夕暮れ。
ビールの話をしていると時間が経つのはあっという間です。
◼️まとめ
というわけで、今回の醸造技術指導で残せた成果を箇条書きにしてみると
・糖化効率の上昇
・糖化効率の概念、求め方
・IBU(苦味の単位)の計算方法
・SRM(ビールの色度)の計算方法
・既存レシピの改良
・新規レシピ書き下ろし4液種
・ゼロベースから新規レシピを書く理論的な方法論
・副原料の添加方法に関するいくつかの提案
・作業効率の改善提案
以上になります。
今回の醸造指導は自身としてもはじめての試みだったので、どれくらい結果を残せるか不安な面もありましたが、醸造設備にとらわれずに理論的に全ての工程を見直すことで、予想以上の成果を残せたと自負しています。
レシピを提供しておしまい、というコンサルティングの方法論は私自身がどうしても納得できなく、ブルワーの辻さんには今後自分でレシピを組み立てるときに参考になるような考え方と方法論をお伝えしました。
また、経営者目線から考えると、糖化効率の上昇は
使用モルト量の削減=製造原価の削減
となるため、年間を通してみるとかなりの製造コスト削減に貢献できたと思っています。
最後になりますが、あらためて今回、技術指導を依頼してくださったばかりか、詳細をこちらに書かせていただくことを快諾してくださった「高津川リバービア」の皆さんに感謝いたします。
ありがとうございました。
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