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エッセイ:お金、循環、経済 〜シルビオ・ゲゼルから仮想通貨へ〜

 Web3の世界に触れてから、私の中でお金やその循環、その結果生まれる経済、つまりエコシステムに興味を持つようになりました。

お金(トークン)はWeb3ではToken Economicsとして、例えばベーシックインカムの仕組みとして使われたり、Web3ゲームの中でのインセンティブ設計に組み込まれたりしています。

最初は、日本円やドルなど通常の貨幣の新しいバージョンくらいに捉えていましたし、使用している実感としてはその解釈と一対一対応していたので矛盾はありませんでしたが、よくよく勉強していくと全然違うことに気づき始めました。

 お金に関して気づきがあった書籍としては「エンデの遺言」「君のお金はだれのため」がありました。

また、コテンラジオのお金の歴史や地域通貨の話も本質的な理解の助けになりました。

 私が特に面白いと感じたのは本書で指摘されている以下のようなお金の不思議な性質と問題点でした。

お金は時間によって減らないが、お金の対価になる労働によって生み出された生産物(消費財)は時間と共に価値が低減していく。この性質の違いがお金を持っているものとそうでないものの間に不平等を作り出している。

資本主義による貧富の格差の問題は色々なところで指摘されていますが、こういったお金の性質もそれを助長させていると捉えられそうだと思いました。

 「エンデの遺言」ではこれに対してシルビオ・ゲゼル氏が提唱したスタンプ貨幣という対抗策と実施例が紹介されていました。

スタンプ貨幣とは、年間5%ほど価値が減るように設計された時間と共に価値が低減していく貨幣です(毎週価値が減るタイミングで有料のスタンプを押さないと使えないため、スタンプ貨幣というようです)。

この貨幣のポイントは価値が低減するから貯めるのではなく、使うインセンティブが強く働くことで、貨幣が地域の経済圏の中で高い頻度で循環する性質を持つということです。

この貨幣を町レベルで使った事例では、世界的な不況で失業率がとても高かった町が見事に回復して活性化したことが紹介されていましたが、同時に各国の政府によって自国通貨の価値毀損を理由に禁止されたことが紹介されいました。

 現代では、法整備も進んできたことでさまざまな仮想通貨が登場して市民権を得るようになってきました。

また、グローバル化や決済方法の多様化が進みました。

シルビオ・ゲゼル氏の時代と違って仮想通貨はデジタルであり、プログラミングによってさまざまな性質を付与することができるようになっています。

シルビオ・ゲゼル氏が提案したが時代に受け入れられなかった、価値が低減するお金、いわば「腐るお金」は現代における新しい経済の一つの形になるように思えました。

以上

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t_hasegawa
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