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血と葡萄(中編)

前編では

キリスト教のシンボリズムにおいて『赤い薔薇』は人間の贖罪のために十字架で血を流して死んだキリストを表し、よって赤は殉教・受難を示す色と言える。そして白百合は『聖母マリア』のシンボル。
これをさらに抽象化すると赤は男性原理の象意、白は女性原理の象意だ・・・。

という視点で『Ⅰ.魔術師』『棒の2』『Ⅴ.法王』のカードを見たのでした。詳しくはこちら↓

では、引き続きキリストの血を感じさせるカードを紹介します。

『剣の9』

おもわず『あぁぁぁ・・・』と呻くのが聞こえそうな女性の様子。黒の壁に並ぶ剣。落ちてこない?それ。気になって、そりゃ眠れないよ。というこのカードの布団に赤い薔薇が描かれています。

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バックの黒はキリスト画においては、苦悶・悔悛・贖罪の印としてされていますから、この女性の心情がこれらの思いで占められているのがよく表されています。

で、布団の柄。先に書いたように受難を示す赤い薔薇と、交互に黄道十二宮と惑星の占星学記号が表されています。キリスト教画においては黄道十二宮が天の国を表す印、星の巡りは神の恩寵の現れを示し、人は生きていうちからすでに天の組へむけて星の巡りに定められた暦を歩むとされています。
なので彼女の苦しみは星の元の避けることができない運命的な出来事であったと解釈できるのかもしれません。

剣のカードでの受難ですから、
『壁にあるいくつも重なった剣=いくつもの情報(剣の象意)の過ちや誤解の積み重ねが原因』
となっていることを暗示していそうですね。

さらに剣はカード内に収まり切れないほど伸びていますから(切っ先が描き切れていない)、彼女はまだ問題の全容もダメージの範囲も把握できていないのかも。

ただこれらが星の定めとしての受難であれば、彼女が回避したりコントロールできることではなかったとも言えます。それが赤い薔薇が示す神の示す受難であるのならその出来事はまた同時に彼女の人生に神の恩恵があるとも読めます。赤い薔薇の背景色は、神の恩恵を示す太陽の色=幸福を象徴する黄色で彩られています。

そして数字の9は『危機から創造への転機、変化』という意味とともに、キリスト教においては3の自乗、三位一体の神がもたらす奇跡の数でもあります。ですからキリストが受難ののちに聖人となり復活したように、彼女には復活の力も、またより輝く未来もあると言えます。

キリストの血が持つもうひとつの意味

日本人には流血を忌みタブー視する傾向がありますが、キリスト教においては殉教した聖人の流した血は聖遺物として尊ばれました。

時にそれは奇跡をもたらす力の象徴とされました。つまり同じくキリストの血として描かれているも、奇跡をもたらす力の象意として表されているのかなと思われるカードを見ていきましょう。

『Ⅷ.力』

白のドレスに赤い薔薇を身にまとった女性が獅子を押えています。獅子は尾を後ろ足の間に入れ従順なポーズをとっています。

このカード、一見彼女は余裕を感じさせますが・・・
ウェイト博士はこのカードを『勇者・自信・大胆な行為の象徴として取り扱ってはならない』と断言しています。さてどうしてなのでしょうか。

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白はキリスト教においては聖母マリアの象徴色を表すと同時に『神の秘儀-不在にして偏在」を示します。空白を示す白、あらゆる色の光を総合といったとことでしょうか。神聖な色の1つです。

その白いドレスに彼女は赤い薔薇を巻き、微笑みを浮かべ獰猛な獅子を押えているのですからその赤い薔薇には奇跡をもたらす力の象意を感じます。
その赤い薔薇を白のドレスに巻き付けているわけですから、男性原理と女性原理の結合も示していると言えます。

彼女の手元に注意を移すと、その手は獅子のマズル(鼻先から口元あたり)という急所を押えているのがわかります。これは「吠える」「噛む」といった行動を直接抑えるマズルコントロールと呼ばれる行為です。

つまり彼女は純粋で神聖な神の奇跡をもたらす力を身にまとい、力づくではなく慈愛でもって獅子を受け止め、さらには現実的なマズルコントロールでもって獅子を押えているのです。

神の力を信じ、あくまで穏やかに相手に慈愛を持ち、忍耐強く慎重に困難に耐え抜き効果的にコントロールしているのです。

う~ん、確かに『勇者・自信・大胆な行為』という表現は似合わないですね。

『Ⅰ.魔術師』

え、前編に登場したじゃん。と思った方もいらっしゃるかと思いますが、再び魔術師登場。

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前回は前面に広がる咲き乱れる赤い薔薇と白い百合にキリストの血の受難を見ましたが、今回は上部に注目してください。美しく手入れされたと思われる赤い薔薇のパーゴラです。

パーゴラには人工的な意思が感じられ、魔術師は新たな創造を行おうとする空間に赤い薔薇のパーゴラを配置したことで、彼が神の奇跡をもたらす力を張り巡らせるように感じられます。

ここでちょっと先ほど出てきた『Ⅷ.力』のカードと対比すると面白いですね。両者の頭上には無限大を意味するレミニスケートが描かれており、それぞれの能力が卓越したものと表しています。

色の配置も似ていますね。太陽の恵み・神の祝福を意味する黄色の背景、身に着ける白と赤。

まとめると。

〇魔術師は赤い薔薇を空間に配置することにより、その卓越した能力で外の世界にキリストの血の奇跡を見ようとしているようです。外への変革。

〇力の女性は赤い薔薇を自らの身にまとうことにより、卓越した能力で自らの中にキリストの血の奇跡を見ようとしているようです。内への変革。

と、いったところでしょうか。

『ペンタクルの女王』

女王の頭上には赤い薔薇のパーゴラ。魔術師と同様に人工的に配置されたものには殉教・受難といった運命的な要素より、奇跡的な力の象徴としての人間の期待をそこに感じます。

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はい、こちらのカードの色の配置はそれこそ魔術師に似ていますね。衣服の白と赤も背景色も。

右下の端にウサギが見えます。何気に背景に同化して隠すように。

ウサギは多産であることからキリスト教においては一方を豊穣を示し、もう一方では淫欲を示し邪悪の象徴とも。そのため、聖母の足元にウサギが配置される構図は、邪悪に対する純潔の勝利を意味しました。

ペンタグルの女王という属性から、このウサギは豊穣を示すと同時に、聖母にならい邪悪に対する純潔も表しているようです。ウェイト博士の『彼女は偉大な魂の持ち主です』ということからも聖母マリアと重ねている部分がうかがえます。

彼女も赤い薔薇を空間に配置することから外の世界にキリストの奇跡の力を見ようとしています。ですが、彼女は魔術師のように魔術でもって創造するのではなく、手元のペンタグルを見つめている様子から、自身の持つ自らの才能を含めた資産を活用し自身の世界を創造していくように思えます。

さらに続きますがやはり猫

またもやちょっと長くなったので、続きは『血と葡萄(後編)』へ譲ることとして、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

やはり物語のエンディングは猫王子ということでここに置いておきます。
こちらは折れ耳の「れーにゃ君」です。では!

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小鳥遊 陽柊|手相家・タロット占い師
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