一人芝居を振り返ってみる話
※今回は若干宣伝が含まれます。
※かなり自分語りが含まれます。
※なんか思ったより長くなっちゃいました。
以上三点、踏まえた上で読んでいただけたら幸いです。どうも、後関貴大です。
今年の8月に一人芝居をさせてもらう機会があった。
その公演の、演出家が直接編集したディレクターズカット版の動画が22日から配信されるらしい。
らしい、というか配信するんですが。
「stayhome一人芝居 at Theatre」
https://stayhomemonodrama.stores.jp/
このご時世で出演が決まっていた舞台が吹っ飛び、どうすんべかと路頭に迷っていた時に、Twitterでたまたま見つけた出演者募集から応募し、有難いことに出演させていただいた舞台だった。
一人芝居、というのは読んで字のごとく一人で芝居する舞台のことなんですが、実は人生で二度目でした。
一度目は高一の冬。その頃のことをちょっと振り返ってみます。
僕は高校の頃、演劇部でした。
これまた有難いことに一年生にして都大会で芸劇の舞台を踏ませていただいたり、我ながら順風満帆だったんじゃないかと思う。
入部したての頃、同期は僕含めて四人いて、夏頃に気が付いたら一人辞めていた。元気かな、彼。
都大会は二、三年の先輩何人かと一年三人で舞台に立ち、そのまま冬の地区行事に向けて色々準備が進んでいた頃だった。
あんまり語れない事情があるので詳しくは割愛するけど、同期が二人とも一気に辞めてしまった。
急に一人ぼっちになってしまったのだ。
そんなときに、地区行事を一緒にやっている他校の同期から「一公どうするの?」という連絡が来た。
一公、というのは一年生公演の略称で、毎年地区で仲のいい学校の一年生が、先輩の力を借りずにそれぞれ小作品を作って発表し合う、という非公式の恒例行事みたいなものだ。
大体どの学校も複数人同期がいるので協力しながら創作するものなのだが、協力して一緒に作るはずだった仲間は生憎みんないなくなってしまっていた。
ただ、僕の答えは決まっていた。
それが一人芝居を作る、という選択。
なんで即決できたのかは自分でも分からなかった。
まず、書くところから。
勿論ノウハウなんて何もなかったので、それまでに劇場で観たことのあった一人芝居のやり方をほぼそのままパクった。具体的には、戸田恵子さん主演の「なにわバタフライ」。
その場に相手がいるかのように芝居をしながら最後までやり取りを重ねていく三谷幸喜さんの作品。
僕の作品は10分弱の短尺だったとはいえ、手法は使えると思い、取り入れた。
ちなみにあとで知ったことですが、この手法で作られてる一人芝居は多いです。そりゃそうか。
そして演出。
一人で書いて、一人で演じて、なので正直演出もへったくれもない感じではあった。
当時は演出の意味もよくわかってなかったので尚更。
ただ、一人ではあまりにやりづらかったので、そのとき辞めた同期の一人をこっそり視聴覚室に呼んで稽古を見てもらったのを覚えている。
ちなみに、本番当日のチラシのイラストは辞めたもう一人の同期に描いてもらった。
今振り返ると、結局他人の力ありきでやってるなぁ。
そんなこんなでなんとか上演にこぎつけた。
出来は、今思い出すと恥ずかしくなるくらいひっどいものだったけど、観に来てくれた人からの評判は悪くなかった、と思う。
当時の自分なりに、全力だった。
そんなこんなで、一人芝居は、僕にとって特別な意味を持つものになった。
(ちなみに稽古を見てくれた同期はそのあとふらっと部活に戻ってきて、今でもたまに連絡取り合う仲です)
そして現在、のちょっと前まで時を進めて。
「stayhome一人芝居 at Theatre」に応募したのは、冒頭に書いた通り、今後の舞台がなくなってしまったから、という理由もありつつ他にもあった。
一つは、春頃の自粛期間に何もすることが出来なかったから。
都内で緊急事態宣言が発令され、劇場で演劇を観る、ということが出来なくなってしまったとき、Zoomなどのビデオ通話を使って映像作品を作ったり、ライブで配信したりといったことをしている方々も数多く居た。
ただ、僕は何も出来なかった。「自分のやりたいこととなんか違う」って思ったのもあるし、ただ単に飛び込む勇気がなかったのもある。
結果、家でゲームをしたり、友達と通話しながら遊んだりといった時間を過ごしていた。
無駄な時間だったと切り捨てたくはないけど、それでもやっぱり勿体ないような心残りがあった。
8月に出演した作品は、元々自粛期間に映像作品として作られたものだった。それを劇場で上演するという試み。
春に残してきたモヤモヤを少しでも昇華出来るんじゃないかと思い、応募した。
もう一つは、僕自身が演劇を渇望していたから。
直前まで別の舞台があったとはいえ、演劇と関わっていたくてたまらなかった。
そのとき、気が付いた。
高一のときの自分もそうだったのかなぁ、と。
同期が全員いなくなって、正直演劇どころじゃない状況だったけど、だからこそ演劇がしたかった。
そしてこのときも、こんな状況だけど、こんな状況だからこそ演劇がしたかった。届けたかった。
自分の中の「やりたい」という初期衝動が、最大限まで高まってたんだと思う。
そんな気持ちを胸に、いざ作品を作るぞ!となったわけだけど、これがまーーーー難しい。
「こんなのよくやってたね?高一の俺!?」って感じでした。
当たり前だけど、一人芝居なので相手役はいない。なので相手が喋っていることは自分の中で生み出していかなくちゃいけない。
そこから湧き上がる感情も全部自分発信。途切れたら終わり。
もし何かしくじっても助けてくれる共演者はいない。
凄まじく難しい。
今まで舞台上にいる共演者におんぶに抱っこだったことを思い知らされた。
ただ、高一の頃と違うのは今回はしっかりと演出がついていたということ。
演出のこもだまりさんとは今回初めましてだったのだけど、僕の引き出しになかったアイデアを次々引き出してくれたり、僕が「こうしてみたい」と言ったことを更に膨らませて提案してくれたり、とても有難かった。
本番は2日間だけ、なおかつ客席をかなり絞ってのギャラリー公演だったので直接観てもらえた人は少なかった。(ただ、あとでライブ配信観たよーと言ってくれる知り合いがちょくちょくいて嬉しかった)
それもあってか、ゲネを終えたあと改めて舞台上で一人ということに不安を覚えたりもしたけど、初日の客席が見えたとき、いつも僕の芝居を観に来て下さる方の顔が見えてすっごく安心したのを覚えている。
一人芝居、というのは読んで字のごとく一人で芝居する舞台のことだけども、一人じゃ作れないなぁと強く感じた。
それは高一のときも、今回も。誰かの支えがあって完成するのは普段やってる演劇と変わらない気がした。
一人芝居、相当大変だったけどまたいつか挑戦してみたいな。
そんなわけで「stayhome一人芝居 at Theatre」の映像配信、観てもらえたら嬉しいです。
映像で観ることを前提にしたアイデアも盛り込んでみたので、良かったら是非。
今、僕なりに全力で挑んだ戦いの記録です。
https://stayhomemonodrama.stores.jp/