僕と『のでない』と、時々、『GOT SOME』の話
これを書いている現在、もうすぐ深夜4:00。
稽古終わって寝落ちして変な時間に起きました。
どうも、後関貴大です。
昨日、4/23に次回出演公演の詳細と予約開始が発表されました。
今回はその作品の概要と、僕個人の話を書きます。自分のケジメとして。
オフワンズ企画公演
「のでない」
作・演出|鵜久森達彦(オフワンズ)
キャスト
後関貴大
早山可奈子
飯尾圭多(オフワンズ)
野口雄大
岡本セキユ公演日程
5月28日(土)16:00~/19:00~
5月29日(日)14:00~/18:00~
全4st
※日時指定・全席自由席
※受付開始・開場は開演の30分前チケット料金
[前売り] 1枚 3500円
[当日券] 1枚 4000円
※未就学児のご入場はご遠慮ください。会場
高円寺K`sスタジオ本館
〒166‐0011
東京都杉並区梅里1-22-22
パラシオン高円寺B1-100号アクセス
東京メトロ丸の内線東高円寺駅より徒歩5分ご予約
下記のURLからご予約ください。
【URL】https://www.quartet-online.net/ticket/notdeny?m=0tigchb
※ご記入いただいた個人情報は、万が一、当公演で感染症が発生した場合に保健所等関係諸機関へ提出するとともに、お客様へご連絡を差し上げる目的で使用いたします。そのほかの目的での使用はいたしません。公演終了から2週間を以って適切に破棄いたします。お問い合わせ
オフワンズ制作部
[MAIL] offones2017@gmail.com
[Twitter] @offones2017
[HP]https://offonespc.wixsite.com/offonesofficialsiteオフワンズとは
舞台創作活動を行うクリエイティブ集団。
各メンバーの魅力を引き出し、さらに多様な客層の方に楽しんでもらえるように様々な制作の場を設けるよう心がけています。
とりあえずざっと公演情報を載せてみました。
昨年、久々に出演した僕の古巣、オフワンズでの企画公演です。
性的倒錯(パラフィリア)という、"人を殺すことでしか性的興奮を得られない"男が、ふとしたきっかけでパン屋で働く女性「美子ちゃん」を好きになってしまう。
これまで自分の感情をひた隠しにしてきた男が、自分の業に葛藤していると、そこにいろんな人間が絡んできて、一体どうなっちゃうの~!?
って感じの作品です。すっげー雑にまとめると。
フィルム・ノワールや暗黒小説のようにダークで陰鬱としながらも、それと同時に狂おしいまでの純愛の物語だと僕は思っています。
稽古が始まって2日目ですが、初日の本読みと今日の稽古を経て、既に「面白いぞこれ」という実感を得られているので、是非観ていただきたい作品です。
どうぞ、よろしくお願いします。
ここからは、自分の話をします。
激烈自分語りになるので、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
『のでない』は、僕にとってただの公演以上の意味があります。あり過ぎるくらいに。
去年、久々にオフワンズに出演した際にnoteを一本投稿しましたが、そのとき、人に散々迷惑をかけた自主公演と、その後メンタルが崩れて演劇を辞めようと思った公演があったことをふわっと書きました。
その作品が『のでない』(とそのプロトタイプ)です。
ずーーーっと明文化することを避けてきたんですが、今回この作品を上演するにあたって、ちゃんとこの作品の歴史と向き合わなきゃいけないなと思ったのでここに書き記しておきたいと思います。
ここから先はあくまで後関個人のお話であり、想いです。予めご了承ください。
遡ること5、6年前。大学時代。
現オフワンズ主宰で僕の同期で親友である鵜久森達彦が「演劇をもう辞める」と宣言しました。
そのときのことを鮮明に思い出すことは出来ないのですが、やるせなさ、悔しさ、憤慨、そういった感情がごちゃ混ぜだった。それだけは確かに覚えています。
卒業後も彼と一緒に演劇を続けていくものだと勝手に思っていた当時の僕は、彼が辞めてしまう前に、今まで彼と創作をしてきた者として何か作品を形に残したい、と考えました。あるいはこれから先、自分一人でもやっていけるように自立したかったんだと思います。
心情としてはさながら「さようならドラえもん」の、のび太のようでした。
彼に脚本執筆を依頼し、書いてもらった作品。
タイトルは『GOT SOME』。これが後に『のでない』の原型になります。
当初、『GOT SOME』は僕が演出・主演を務める予定でした。
そのつもりでキャスティングやスタッフ集めを進めていたのですが、経験のない主宰業に四苦八苦し、思うように進まない。
元々、大学内での交友関係が広くなかった僕は最終的に外部の人間である後輩の野口雄大にまで声をかけました。
多分、この時点で既に焦りや不安でちょっとどこかヤバかったのかもしれないと今なら思います。慣れないことをした小さな積み重ねや虚勢が徐々に不和を生み出していることにまだ気付いていませんでした。
そして稽古が始まりました。
同時に、僕にとって忘れてはいけない心の傷を負う時間の始まりでもありました。
……と、ここまで書いておいて、本当に色々なことがあったので思い出しきれません。あまりにしんどかったので記憶に蓋をしてるのかもしれない。
せめて、思い出せることを箇条書きで書いていきます。
演出がグダグダ。ビジョンが明確でないまま自信なく話すものだから役者がみんな困ってました。本当にごめんなさい。
芝居の稽古がそんなんだから、スタッフに対しての指示も顔色を窺ってばかりで全然クリエイティブじゃない。とあるセクションの後輩と腹割って話そうってなったときに、半ば怒りの感情で泣かれてしまったのを本当に今でも申し訳なく思っています。
そんな中、制作の後輩がとても程よい距離感で接してくれて本当にありがたかったです。
後関自身の芝居も拙くて、とても上演に耐えられるクオリティでなかった。当時の自分の力量不足と自己演出力の欠如。そもそもそれを見誤っていた見積もりの甘さ。
そんなのが主演やって演出もしますなんてぬかしてるから、そりゃ不満も沸く。稽古場の入口で役者が後関に対しての愚痴をスタッフに吐露しているのが聞こえて、とてもしんどかった。
共演者の後輩に演出の立場からとても嫌な思いをさせてしまった。それに対するケアも出来てなくて不信感が加速していった。
見かねた鵜久森達彦が稽古場に顔を出してくれたが、そうすると今度は完全に彼に頼り切りになってしまう。さながらドラえもんに道具をねだるのび太のようでした。
他にもまだまだ沢山ありました。
ただ、書けば書くほど自分がスッキリするための懺悔みたいで本当に嫌になる。
5年経った今でもずっとモヤモヤして苦しいし、本当に嫌な思いをたくさんの人にさせてしまった申し訳なさが募ります。
もし、あのとき関わった方々で今この記事を読んでくれている人がいたら、僕のことを許さなくていいのでどうかそれだけわかってほしいです。
ある日稽古の帰り、そのまま夜勤に向かい、休憩中に携帯を確認すると出演者数名から長文のLINEが届いていました。
内容は端的に言うと、「主演を降りてくれ」という内容でした。
僕は自身の役を降りて、後輩である野口雄大に任せることにしました。
その後くらいから、明確に体調に変化が現れたのを覚えています。
台本が文字の羅列にしか見えなくなったり、何もしていないのに急に鼻血が出てきて止まらなくなったり。
今振り返ると完全にメンタルがやられてました。稽古場のトイレから10分近く出られなくなったこともありました。
もうどうやって公演を終わらせたのか全然覚えてないです。
とにかく『GOT SOME』は無事終演しました。僕の心に見えない大きな傷を残して。
そしてその1年後、紆余曲折あり演劇に戻ってきた鵜久森達彦と、新団体オフワンズが立ち上がり、その旗揚げ公演の稽古中のこと。
前身団体のときからオフワンズを応援してくださっていたどんぐりマミーさんのお誘いで演劇のイベントに参加することになり、その演目を決めようという会議になりました。
そのとき『GOT SOME』を再演しないか、という案が浮上したのです。
始め、僕は全力で拒否しました。やりたくなかった。
今ほど俯瞰して振り返ることは出来なかったけど、それでも辛かった当時の記憶がフラッシュバックしたからです。
ただ、
・物理的に新作を書き下ろす時間がないこと
・一度上演した作品の為、おおよその上演時間がわかること
・少数で上演可能な作品の為、出演者を揃えやすいこと
・初演と違って演出は達彦が担当するので後関自身の負担は減る
といった理由でメンバーから強く説得されました。
そしてなにより「後関個人が辛い記憶で終わったあの作品の印象を塗り替えるチャンスなんじゃないか」といった言葉に、僕は渋々了承しました。
他のキャストはともかく、『GOT SOME』には絶対的なヒロイン「美子ちゃん」というキャラクターがいました。
男所帯だったオフワンズに女性メンバーはいないので、誰をキャスティングするかという話になったのですが、
「元々後関の作品なんだから後関が一緒に芝居してみたい人を誘えばいいんじゃない?」
という達彦の言葉で体よく僕がキャスティングを担当することになりました。
その流れになったとき、僕が思い浮かべた女優さんが一人いました。
それが早山可奈子さん。
早山さんとは以前別のWS公演でご一緒したことがありました。
2作品に分かれての上演で、僕が出演していた作品と対になる作品でのヒロインを演じていたのを見たのが最初。
作品がめちゃくちゃ面白かったのもそうなんですが、そのときの佇まいに一観客として惹かれるものがありました。「この人の芝居好きだなぁ」と感じた印象が、僕の中で改めて『GOT SOME』を考えたときに美子ちゃんのイメージとダブったんだと思います。いつか共演してみたいと思っていた方だったので、ある種いい機会でした。
現場でちょっと喋っただけの人間がオファーするのもどうなんだと思いながらも、ダメ元で公演時期の予定を聞き、直接お話をさせてもらうことになりました。
当日、緊張でカチコチになりながら現地に赴き、初演版の台本を読んでもらった感想を聞いたところ、
「『さよならを教えて』みたいだね」
と言ってくれました。
(なんだろうそれ)と思って調べてみると、狂気的かつグロテスクなことで有名な成人向けゲームでした。(なんでそんなの知ってるんだこの人、こわっ)と正直思ったり思わなかったり。
そんなこんなでこちらがビックリするほど快諾してくださり、あとは稽古を迎えるだけ、となったときのことでした。
稽古を始める前、どうしても不安がありました。
それは僕自身の芝居のこと。
以前にもちらっと書いたのですが、オフワンズの旗揚げ公演で僕は最後の最後まで演出家の求める芝居が出来ていませんでした。
心労で自棄になって、心配されたり怒られたりみたいなこともありました。
あのときは自覚してなかったけど、『GOT SOME』以降、鵜久森作品を演じることが楽しくなくなっている自分がいたんだと思います。
そこで本稽古を開始する前に、一度オフワンズの内々のメンバー間だけでプレ稽古を行おうという運びになりました。
一度手放した役をもう一度演じ、演出家である達彦や他のメンバーに率直な意見をもらう回。
結論から言うと、僕に主演は任せられないという話になりました。
その瞬間、初演時の苦々しい記憶やそれまで抱えてきたストレスが体内を蝕んで、身体が冷たくなるような硬直感に包まれました。
あーーーーーーー、
無理だ。
そう思いました。
演劇を辞めようと思ったのは、その日です。
後日、団体を休ませてほしいという話を僕はメンバーたちに話しました。
正常な精神状況じゃなかった。あのとき酷いことを沢山言ってしまったと思っています。
それから2ヶ月くらい、虚無感を埋めるようにアニメを見たり、友人とどこかに出かけたりといった日々を過ごしていました。
その間に『GOT SOME』は『のでない』にタイトルが変更されていました。
どういう意味なんだろう、と少しだけ気になってはいましたが、観に行く気にはとてもなれなかった。どの面下げて行けばいいんだ。
そんなある日、早山さんから連絡がありました。
後関くん元気ですか?みたいな他愛ない内容。
今思うと、早山さんにも当時の僕の状態に少なからず共感が出来たのかもしれない、と勝手に思っています。
なんでもいいから話を聞いてほしくて、向こうの稽古終わりにご飯を食べに行きました。
何話したのか全然覚えてません。でも、なんだか『のでない』を観てみようかな、という気持ちにはなれました。
2018年8月3日。
新中野ワニズホールの入口で僕はウロウロしてました。
中に入ることにすごく抵抗感があった。
オフワンズの皆に会ったらどんな顔すればいいんだろう。
そうじゃなくても知り合いに会ったらすごく気まずいな。
そもそも俺がここにいていいのか?
いろんな感情がグルグルループしながら、重い足取りで階段を一段一段下っていきました。
最後列の下手側一番端っこの隣に誰もいない席を選んで座る。
開演時間になり、僕がやるはずだった、やりたかったはずの役を鵜久森達彦が演じていました。
そして早山さん。僕がこの人を誘いたいと思ったときにイメージしていた美子ちゃんそのものでした。
あと、メンバーの飯尾。え、何、新キャラ?『GOT SOME』にいなかったキャラを彼が演じていました。彼の軽妙でちょっと皮肉な語り口がなんだかとても懐かしいものに思えた。彼の役が新たに発したセリフが僕にとって一番印象的でした。
これはもしかしたら思い上がりかもしれないけど、タイトルが変わっても達彦は「後関」のことを書いてくれたのかなって思いました。
本当に面白くて、嬉しくて、悔しい観劇でした。
素晴らしい作品を観れた喜びと、なんで自分はあそこにいないんだという悲しみと、とても言い表せない複雑な気持ちでした。
それから3年経ち、2021年。
オフワンズ第5回公演『チンドル先生の愉快な授業』の稽古中のこと。
休憩中、達彦から「早山が演劇やりたいって連絡くれた」という話を聞きました。
僕が舞台に復帰してから1年後くらいのこと、早山さんは体調を崩して役者活動を休業していました。
僕はそれをTwitterで見て知っていたのだけど、なんと連絡していいかわからずそのまま関係性が途切れてしまっていました。
あのとき、早山さんが連絡をくれたから今僕は演劇を続けられているのに。
そのことがずっと心残りでした。
久々に演劇をしたいと言った早山さんは『のでない』以降、親交のあったオフワンズでなにかやれないかという話を持ち掛けたらしいです。
「『のでない』やらない?」
達彦からの誘いに、少し考えてから僕は「やる」と返事しました。
駆け足でこの作品と自分のことを書いて現在、もうすぐ朝の9:00。
もっと書きたいこと、書けないこと、本当は沢山あるんですけど、いつまで経っても終わる気がしないのでここらで切り上げます。
とにかく僕がこの作品に懸ける想いは並大抵じゃないです。
だから、なんていうんでしょうね。
頑張ります。
『のでない』
僕にとって三度目の正直。
よろしくお願いします。
ではでは。
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