九州島内完乗達成なるか!?③ 2つの海峡を超えて 筑豊本線・北九州モノレール・潮風号
筑豊本線、今は篠栗線と直通運転して、福北ゆたか線と呼ばれることの方が多いが、このうち直方から若松の間が未乗区間だ。以前に乗車したときは直方で降りて並行して走る筑豊電気鉄道に乗ったため、ここから鹿児島本線と合流する折尾までと、折尾から先に伸びる若松までを乗り損ねたままにしていた。
こ線橋を渡り、2両編成の電車に乗り換える。この電車、実はただの電車ではなく、とても面白い車両で「DENCHA」の愛称が付いている。どういうことかというと、この先、折尾までは筑豊本線は福北ゆたか線となったときに電化されたのだが、折尾から若松までの先端区間は非電化のままで、ディーゼルカーが走っていた。しかしこの「DENCHA」は、電化区間では電気で走行しつつ電気を貯めることができ、非電化区間に入るとバッテリー走行ができる。これにより、筑豊本線は直通運転が再びできるようになったのだ。
鹿児島本線をくぐり、八の字になっている折尾駅を発車すると、非電化区間に入るが、架線が張られていないことを除けば、乗り心地も含めて何の違和感もない。いかにも埋立地の工業地帯という中を抜けて、団地などが建ち並ぶ中にある若松駅に到着。ホームにはジャズが流れている。
駅は窓口が閉まっていたが、東筑軒の立ち食いスタンドが湯気を上げていた。さっきかしわ飯弁当を食べたばかりだし、朝食で一応うどんは食べたが、やはり食べておきたい。
この後は小倉に向かうことになるが、折り返しで折尾へ出るのではなく、ショートカットをしてみようと思う。うどんを食べ終え、駅前の交差点の先にあるバス停からちょうどやってきた北九州市営バスに乗り、終点の渡船場へ行く。見上げると朝も見た若戸大橋が空を覆っている。ちょうど対岸の戸畑から渡し舟がカーブを描いて入港してきた。運賃は片道100円。15分ごとに一隻の舩が両岸を行ったり来たりしている。
若戸大橋の下を心地よい潮風を浴びながら、空には大きな入道雲が広がる。戸畑渡船場から戸畑駅は大通りを歩いて10分ほどだが、港を離れるにつれて暑さが厳しくなっていく。
普通列車で小倉に向かい、今度は北九州モノレールに乗車。JRの改札口を抜けると、モノレールの車体が頭上に横付けされている。なぜかこの北九州モノレールは、先頭車両の屋根にパトカーのような赤いランプを備えている。
小倉の繁華街を抜け、競馬場のトラックを見下ろすと、団地などの住宅街に入る。公演には盆踊りの櫓が準備されている。15分ほどで山を切り開いた団地の中にある企救丘に到着。ここから日田彦山線の志井公園駅に歩いて乗り換えることもできるが、無人駅で次の列車まで20分ほど暑さをしのぐことになるので、それはしんどいので折り返しのモノレールで小倉に戻る。
これで九州島内で日常的に運行される鉄道路線については全路線に乗ったことになるが、実はまだ鉄道路線としては1つだけ残っている路線がある。其れに乗るため、再びJRで門司港へ。門司港はまさに九州の玄関口で、門司港駅は鉄道開業当時の雰囲気を復刻させて、周辺の地域と合わせて門司港レトロをうたっている。九州の鉄道完乗の締めくくりとして申し分ないのだが、この門司港からさらに先端にまで線路が伸びているのである。しかも最近、人が乗れるようになった。
門司港駅を出て左手にある九州鉄道記念館との間に、遊園地の豆汽車のような乗り場がある。ここから潮風号というトロッコ列車が観光用に走っているのだ。観光用なので土日祝日しか運航されないものの、時刻表上は鉄道扱いになっていて、こういう機会でしか乗れないが、夏休みの最盛期、果たして切符はまだ買えるのか不安だった。運よく15時20分発の列車に間に合い、終点の関門海峡めかり駅まで乗る。昔の貨物線を観光に転用した路線で、普段は入れ替え用に使われるチビな機関車が両端について、2両の貨車を改造したトロッコを引く。門司港のレトロな街並みの中をゆっくりと走っていくのは楽しいが、速度が自転車よりも遅いくらいなので、風よりも暑さを感じる。
このトロッコ列車に乗るのは2度目だ。この潮風号になる前、このトロッコ列車はゆうすげ号という名前で熊本県の南阿蘇鉄道で使われていた。そのときに乗った山の中を走るトロッコが、今は海辺をトコトコと走っているのは、なんだか感慨深い。潮風号は途中2つの駅に停まり、トンネルを抜けて終点の関門海峡めかり駅に着いた。
これで無事に九州島内完乗となったが、帰りの北九州空港からの飛行機にはまだ時間がある。目の前には関門海峡を行き交う船と関門橋、そして本州が肉眼ではっきりと見える。今度はあの対岸まで、歩いて渡ろうと思う。関門海峡めかり駅から少し海岸沿いを戻ると、そこに不思議な建物が現れる。関門海峡にはいくつものトンネルや橋が通されているが、これは人や自転車の専用道路。エレベーターで地下に降りると、さっきまでの日差しが嘘のように涼しい。一方で海底というだけあって湿気はかなりあるので、汗はなかなかひかなかった。同じような目的で関門海峡を歩いて渡る観光客が多く、福岡県と山口県の県境を示す目印の付近では写真撮影の渋滞が起きていた。
本州側に上がると、そこは平家物語の舞台である壇ノ浦のほど近く。ここからバスに乗って下関の市街地へ向かう。下関駅からJRで再び関門海峡をくぐり、小倉に到着したら、少し余裕のあるちょうどいい時間だった。北九州空港は、昨日降り立った長崎空港と同じように海上空港で、小倉からはリムジンバスで40分ほどかかる。
飛行機の出発を前に、筑豊ラーメンと瓶ビールで一人祝杯をあげた。これで九州島内は全ての鉄道路線を制覇した。ただ、沖縄には、ゆいレールの延伸区間がある。そのほか、北陸新幹線の敦賀延伸などもあり、未乗線区の割合はそこまで大きくは減らず、残存率は2.9%といったところだ。