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勉強③猫ヘルペスウイルス感染症の補助療法

猫ヘルペスウイルス感染症の治療は、まずは全身状態の改善のために
補助療法と二次感染予防が大切。

●補助療法
FHV-1感染症による発熱や鼻水、くしゃみのため食欲が落ちることが多い。
そのため脱水や栄養不足に陥ることも多い。
特に子猫では急速に体調が悪化するため補助療法は必須。
①補液(皮下補液、静脈点滴)
②栄養補助(シリンジによる食事補助、チューブフィッティング、食欲増進剤(ジプロヘプタジン、ミルタザピン))
③対症療法

●二次感染・混合感染の予防
二次感染による細菌性鼻炎や蓄膿症が起きている場合には感受性試験にもとづいて抗生物質を選択。
ボルデテラやクラミジアとの混合感染が疑われる場合にはドキシサイクリンを優先。

●抗ウイルス薬
FHV-1のために開発された抗ウイルス薬は少なくヒトヘルペスウイルス(HSV-1)に対する薬が一般的に使用される。
多くの抗ウイルス薬は宿主の代謝を受けて効果を発揮する薬物であり、猫でヒトと同様の代謝が行われているかどうかは確かめられていない。抗ウイルス薬は抗生物質と比較して毒性が強いため、安易に使用することはやめた方がいい。なお潜伏期のFHV-1に対して抗ウイルス剤は効果は期待できない。

-猫で比較的安全かつ有効と思われる薬-
①ファムシクロビル
ペンシクロビルのプロドラッグ。
結膜炎、角膜炎、眼瞼炎、鼻分泌物、くしゃみ、皮膚炎がありウイルス性上部気道感染症が疑われた猫のうち85%の臨床症状が改善。またシェルター内の上部気道疾患を呈する猫に対してFCVを7日間使用したところ無治療やプラセボと比較してFHV-1の排泄が減少した。

副作用:下痢、食欲不振、PUPD、嘔吐、体重減少
薬の特徴:薬剤のサイズが大きい、1日3回投与、高価

②L-リジン
FHV-1の合成に必要なアルギニンに拮抗しウイルス複製を阻害する。
現在サプリメントとして多くの会社から販売されている。
プラセボと比較してあまり有意な治療効果は検出されなかったという報告もある。

③イドクスウリジン(IDU)
チミジン類似体でありチミジンと競合しFHV-1のウイルス複製を阻害する。
しかし宿主細胞も同様に影響を受けるため全身投与は不可である。そのため点眼液として利用。

・4~6時間ごとに点眼
・経口投与が難しい猫には使用しやすい
《使用方法》
・点眼は1時間以上の間隔をあける
・15日間で改善傾向があれば4週間まで使用可

④猫インターフェロン
Ⅰ型IFNである組換え型ネコインターフェロンオメガは、FHV-1の感染と再活性化の初期段階投与すると、ウイルス複製と関連する臨床徴候を抑制できる可能性がある。
猫ヘルペスウイルス感染症の治療薬として多くの動物病院で使用されている。
インターフェロンωはIn vitroではFHV-1の複製抑制効果あるものの、自然発生のヘルペス性角結膜炎および実験的FHV-1の猫に対し高用量のIFN-ωを点眼してもプラセボと比較して、臨床疾患またはウイルス排出は改善はなかった。また自然発生の上部気道感染症猫37匹に、IFN-ωを皮下投与および点眼・点鼻を21日間実施したところ。臨床症状の改善の有意差はなかったという報告あり。
FHV-1感染に対する組換え型ネコインターフェロンオメガの効果は、一定の見解が得られていないが、経口投与が困難な猫に対して皮下投与できるメリットはある。

⑤ネブライザー
気道の乾燥を防ぎ、二次感染による膿性鼻汁の鼻づまりを解消するために有効。
ネブライザーで呼吸が楽になり食欲が改善することもよくある。また生理食塩水を点眼ボトルなどに詰めて適時点鼻することで鼻のとおりをよくすることができる。

次回はドキシサイクリン(抗生物質)について深掘りする。

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