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教養としてのロボット1:「哲学的ゾンビ」:「心がある」と論理的に言う方法

さて、やるやるサギ寸前ですが、超重い腰を上げて、ロボットやサイエンス、哲学などなど、自分が面白いと思うことの記事を書いて行こうとと思います。コツコツと月1ペースで書ければ良いなと思っていますので、よかったらご愛顧をよろしくお願いいたします。

初回は「哲学的ゾンビ」について、お話しします。なんだか凄いインパクトのある言葉ですね。

ちなみにトップの挿絵は、生成AI先生の作です。ほんと、面白い時代です。

哲学的ゾンビとゾンビ論法:

「哲学的ゾンビ」とは、哲学の思考実験です。思考実験とは、実際に行ってみる実験ではなく、頭の中で前提を作って検証してみるという思考方法です。有名な例だと「アキレスとカメ」「トロッコ問題」など実際にやってみないけど、問題がクリアになるような問題設定のことですね。
 
その哲学的ゾンビをざっくり言うと、「物理法則だけですべての説明ができる」という考えが間違っているということを示す思考実験です。少しだけ丁寧に言うと、私たちの住むこの世界の説明は「心」を考えないで説明できないということです。哲学的にゾンビを設定して考える、「ゾンビ論法」と言われています。
 
その哲学的ゾンビとは、意識を持っていないが、人間とまったく見た目が同じ存在を仮定します。この存在は見た目が人間と全く同じですが、僕らのように感じる「内面」がありません。赤い色を赤く感じる、暑い日に暑く感じるといった、感じる意識や内面がない。クオリアや心はないけど、人間と同じように振る舞える存在です。これを哲学的ゾンビと言います。現代だと、人間そっくりの外観を持ったアンドロイドやロボット、VR・AR技術で作られたアバターなんかを想像しても良いと思います。
 
このゾンビを使って、「世界を物理法則だけで説明できるかどうか」ついての思考実験を次の4段階で考えます。

1.我々の世界には、意識体験がある。

いま、僕らが生きているこの世界で、自分自身に心があるということは、大抵の人は感じると思います。自分に自分の心があると言えない人は、かなり居なそうです。

2.意識体験のない世界は存在可能である。

上で言った、心は無いけど見た目や振る舞いが人間とまったく同じな哲学的ゾンビだけがいる「世界」を想像してください。
 
この世界は、ゾンビワールドと名前がついていますが、振る舞いは普通の人間と同じです。ですので、バイオハザードに出てくるような血みどろな世界じゃなくて、一見、僕たちが生きている世界とまったく変わりのない世界です。
 
そして、僕たちは、こんな世界を「想像」できてしまうこと自体がポイントです。

3.2から意識に関する事実は、物理的事実とはまた別の、われわれの世界に関する別の事実である。

ゾンビワールドに欠けているけど、私達の現実世界には、意識・クオリア・体験・感覚が備わっているという事実があります。その事実は、現在の物理法則には含まれていないので、一番初めの前提1.と矛盾します。

4.なので、物理法則だけで世界を説明すること(唯物論)は間違っている。

つまり、世界は、意識・クオリア・体験・心などを使わないと、説明できないということですね。

そういえば。

僕がこの言葉を初めて知ったのは、大学院の研究室に入って、人間にそっくりの外観をもつアンドロイドに、様々なセンサーと入力に対する反応を作り込むという、研究をアサインされて、研究を始めた頃です。
 
振り返ってみると、いまロボットを指向しながら、アートを中心において、自分の活動を行っている一番基礎的な理論かなと思います。つまり、これがアートや文学が人間に必要だと論理的に言うための、初めの論理だと思います。
 
不思議なことに多くの人が「アートは必要だ」というわりに、その必要性を論理的に言うことができない。その理由は、心の存在を論理的に言うことができないからなんじゃないかなと思っています。
 
近年発達著しい生成AIを使って、人間そっくりのアンドロイドやCGアバターが、この「哲学的ゾンビ」になっているのではないか?と考えられます。なんとなく僕らは、AIの発達した社会は人間性に乏しい社会だと思いがちですが、もしかしたら産業革命以来どんどん失ってきたものが復権するような時代になるかも。。。と思っています。
これからどんな世の中になっていくのか、なかなか面白い事になりそうです。

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