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教養としてのロボット2:「チューリングテスト」と「中国語の部屋」(1/2回)

今回は2回に分けて、「チューリングテスト」と「中国語の部屋」について書きます。「チューリングテスト」も、「中国語の部屋」も、どちらも「どうなったらコンピュータが知能を持っていると言っていいの?」を考える思考実験です。

チューリングテスト

まず今回は、チューリングテストからです。アラン・チューリングという人が考えたテストです。コンピュータが「本当に知能を持っているかどうか」は、外から見ただけではなかなかわかりにくいですね。なので、このテストをパスしたらわかるよ、といったテストを考えました。

ちなみにチューリングさんは、第二次大戦中にエニグマという暗号解読器を作った有名な天才です。「イミテーションゲーム」という映画になっていたり、イギリスの紙幣になっていたりします。ただ、ゲイだったので、当時の世の中で生きづらくて悲劇的な最期を遂げてしまいます。

さて、チューリングテストとは、簡単に言うと、「人間がコンピュータとコミュニケーションをして、人間がコミュニケーションの相手が、コンピュータか人間か見分けが付かない」と思ったらパス、というテストです。
もっとシンプルに言うと、チャットやラインの相手をコンピュータ置き換えて、人間だと思い込むことができれば、チューリングテストはパスするというものです[図1]


[図1]チューリングテスト(人工知能学会HPからの転載)

いまは、slackやLINEにChatGPTをつなぐことができる時代なので、近い未来すごいことになりそうですね。

トータルチューリングテスト

ちなみに、大阪大学の石黒浩先生は、このチューリングテストにコンピュータ側に外観の要素を加えるために、チャットを使わず、「人間にそっくりな外観をもつアンドロイド」と人間とのコミュニケーションを行うという「トータルチューリングテスト」を研究しています。

映画「イブの時間」では、すでにこの試みが実現している世界で、ロボット(AI)であることをわざわざ人間にわからせるために、頭の上にマーカーがついていましたね。

そして、本当に面白い点は、この思考実験が現実の世界になりつつある点です。人間が人間である理由が、「賢いやり取りができる」という点ではなくなっていく時代に、僕たちは生きているんだと思います。
少し昔だと、「人間は万物の霊長」とか言って、人間は特別な存在で、その中でも、「読み書きそろばん」が「有能さ」の象徴だったりしました。でも、今では、とっくの昔にコンピュータに追い抜かれています。これからは、AIが「僕たちの有能」を追い抜いていきます。

これから、人間が人間らしく生きて行こうとしたら「有能であること」は、あんまり大切じゃなくなっていくんだと思います。じゃあ、ほんとにコンピュータって賢いの?について、次回「中国語の部屋」でお話したいと思います。
(2/2回につづく)

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