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宇宙漂流お父さん First Contact【連載第一弾#4】【シリーズ#7】

宇宙漂流お父さん First Contact④

 拘束されたまま連れて来られた場所、ここはどこだろう。

 途中から城の前まで連れて来られ、そこからは目隠しをされた。
 夕暮れ時の街の喧騒の中、幾分か歩かされ、今やっと視界が開けたところだ。

 そこは石造りの広大な建物の空間。外の様子はわからない。
 ただ一つわかる事は、両脇を抱えられどこかに連れていかれている事。それだけだ。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

ー ガシャン、ガチャガチャ、カチッ ー

『静かにしてろよ。明日また話を聞く』
「勘弁してもらえませんかね。帰りたいんですけど。」
『お前が何者かもわからないまま、野放しに出来るわけがないだろう。我慢しな。』

 言ってる事はごもっともだが、言われてるこっちはたまったもんじゃない。
 拘束されたまま通された個室で、しばらく話を聞かれた。

何者なのか。
どこから来たのか。
なぜここに来たのか。

 大雑把にではあるが、色々と聞かれた。
 その質問攻めの会話から、いくつかわかった事がある。

 この星には東京は存在しないし、日本もない。

 そして、ここは地球じゃなかった

 あの扉を開いた時の高揚感はなくなってしまった。
 しかし、人がいるこの星に辿り着けた事は幸運なのだろう。

「この星は空気がうまいな...地球よりも。」
『何か言ったか?』
「いや、何でもないです。今夜はここ?」
『あぁ、牢屋で申し訳ないが、素性がわからないうちは我慢してくれ。』

 質問攻めが終わった後、そのまま牢屋に連れて来られてしまった。
 途中、宇宙服から簡素な服に着替えさせられたが、洗い麻のような素材でチクチク痛い。
 洗ってはいるが、何度使い回されたものなのだろう。

 小さく開いた穴のような窓から見える空は、すっかり暗くなってしまった。
 看守を残し、衛兵たちも行ってしまい、静寂に包まれている。

「はぁ...眠いな。」

 扉をくぐってから、街まで少し歩いて来て、質問に答えただけなのに妙に疲れている。

 宇宙を漂流し続けていたが、船内で少し歩くくらいで体力が落ちていたのかもしれない。

 それに人と話す機会は全くなかった。
 聴こえるのは船内でBGMの歌声くらい。
 久々の会話に、張り切って話してしまっていたのかもしれない。

 少し、寝ようと思う。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

ー カチッ、ガチャガチャ、ガシャ、キィィィ ー

 牢の扉が開く音で目が覚めた。

『起きろ。そろそろ時間だ。起きれるか。』
「...ぁあ、、朝ですか...」

 昨日ずっと担当してくれていた衛兵だ。
 言葉こそ慣れ慣れしいが、いいやつっぽい。

『朝だぞ。一応、上の者が来るから、しっかり話してくれ。』
「あー、尋問?」
『尋問とは人聞きが悪いな。事情聴取だ。不審者に話を聞くのは当たり前だろ。』
「ですよね。わかりました。ところで、お腹が空いてまして...」
『あぁ、それも今から行く部屋に持って行くように言っておこう。この後に総長が来るから、ついて行ってくれ。じゃあな。』

 昨日の衛兵は、今日は担当ではないのか。
 さっと立ち去ってしまった。

ー ぐぅぅぅぅーーー... ー

 それにしてもお腹が空いた。
 恐らく夕方くらいにここに来たので、それから半日何も食べていない。

『おい、”地球人”。』

 特に何も持ち物がないので、身だしなみだけを整えている間に、少し歳のいった衛兵が話しかけて来た。

「はい、”地球人”ですよ。」
『衛兵総長のサトーだ。出てくれ。話を聞きたい。』
「昨日のとこですか?」
『いや、違う。来ればわかる。』

 おや?再び質問攻めが始まるのだと思っていた。
 無機質な牢を出て、衛兵の総長に続く。

『あとは私だけでいい。』

 衛兵総長の部下たちが立ち去って行った。
 来た通路とは反対方向にある扉の前で立ち止まった。

『さぁ、帰っていい。』
「えっ、帰っていいんですか...?」
『お前がニビア人でないのはわかるが、他のどの国の者でもない事はわかった。』
「そうですか。じゃあ、お言葉に甘えて。」

 ニビアという国の他のどんな国が存在するかはわからないが、この中世ヨーロッパ風の街に留まっている理由はなさそうだ。

『おい、これが必要だろう。』
「ありがとうございます。」

 取り上げられていた宇宙服を受け取った。
 なぜか少しきれいになっている。

「じゃあ、また。」

 衛兵総長のサトーは、何も言わずに扉を閉めた。

ー・-・-・-・-・-・-・-・-・-・-

 城下町の入り口まで歩く道中、昨日からの事を考えていた。

 突然ドッキングしてきた謎の宇宙船から、この見知らぬ星にどうやって飛んだのだろう。
 船内の扉がこの星につながる何かがあったはず。
 物凄い距離を空間移動したことは間違いない。

「活気のある街だな...。みんな表情が生き生きしてる。」

 海が近く港も栄えているようだ。
 城下町で国の中でも中枢都市なのだろう。
 街の中心部は市場になっていて、新鮮な海産物や野菜なんかが並んでいた。

 それでも、この街に入るまでにすれ違う人はそれほどいなかった。
 小規模な国なのだろう。

 だけど、民衆を見て羨ましく思えた。

「みんないい顔してるな...。」

 ここに残ろうか。
 そんな事が脳裏をよぎった。

 でもなぁ、

ー お父さん、起きて。そろそろ時間だよ。 ー

 あぁ、家族に会いたい。

 妻に、娘に会いたい。

 まだ諦めるわけにはいかない。
 地球に帰るんだ。

 そんな決意を固めながら、宇宙船へと帰るための扉を開けようとした...はずだった。

「嘘だろ...」

 扉は消えてしまっていた。

「これじゃあ、帰れないじゃないか...」

T-Akagi

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