声優のNGって?
年明け一発目は収録の際の不可抗力ともいえるNGアルアルをお届けしたいと思います!
現場未経験の方や新人さんは初耳が沢山あるかもしれませんよっっ
その①鼻息
吹替えにおいて『鼻息を吸う』という場面はよくあるんです。その場面がやってきたら、マイクにのる音量を維持しながら鼻から息を吸う。
ただこの鼻息、ちょっと厄介だったりします。ある程度の力を入れて鼻から息を吸わなければマイクにのる音にならないので、ちょっとしたテクニックが必要です。
さらに文字で表現すると「スン」という綺麗な音が出ればOKなんですけれども、時々「ズビ」とか「ズル」といった濁点付きの音になってしまうことが……残念ながらそうなってしまうとNGなんですね。「ここの鼻息が水っぽくなっちゃったので」などということでリテイクが!
時より余りにも汚い「ズゴッ」とかいう音が出ちゃうこともあったりして……もう恥ずかしいやら可笑しいやらでちょっと気持ちが天を駆け抜けます。魂戻すのに集中が必要!
その②腹なり
最近のマイクは超高性能。そのためお腹のグーという音を見事に拾い上げてしまいます。ですのでマイク前ならいざ知らず、椅子で待機するくらいの距離があってもノイズになってしまう場合があるんです。
不可抗力で仕方ないとはいえ、先輩の鬼気迫るお芝居の最中に自分のお腹が「グーギュルギュルーーンッッ」などと鳴り、あまつさえそこがリテイクになってしまった時にはもう。。。
収録時の腹鳴りはリテイクの元ですので、実は皆さまそれぞれに対策をして収録に臨んでいるんですね。
消化音が鳴りやすい人は収録前の食事の量や時間を気にしていたり、空腹時に音が鳴りやすい人は小腹を満たすためのお菓子やパンを持ってきたり。
ちなみに自分はお腹が鳴り出したら、お腹にグッと力をいれて腹腔内をパンパンに張ると多少は静かになる気がすると思ってるんですが……皆さまの腹の虫を抑え込む方法を是非聞いてみたい!
その③キス音
吹替えの現場ってキス音が必要な時、結構あるんですよ。
やり方は人それぞれですが、私の場合は唇だけを使って音を出します。その方が芝居の流れも邪魔せず出来ちゃうし、私は結構しっかり音が出せる方なので。
他には手の甲を使って音を出すパターン。要するに手の甲にキスをする。ただですね、これも失敗すると全然マイクにのらなかったりするんです。
ある時キス音だけ改めて音を下さいと言われて、その方がマイク前でやってみるものの、さっぱり音が出ない。仕方がないから「誰か変わりにやってください」という声が飛んできたことがありました。
新人さん達は、気晴らしというかお友達と遊びがてらキス音の練習なんてしてみるのもいいかもしれません。ただし人目がないところでですよ、怪しい人達になっちゃいますからね!
その④口笛
これは本当に吹替えアルアルでして、文化の違いでしょうか口笛シーンは結構あるんです。
口笛の音を入れなければいけない時、テストはあんなに上手くいったのに、なぜか本番になると「ヒョロロロ~スピピ~」と永遠と息しか出ないってのはお約束。
だから口笛の場面では、何というか皆んなが慈愛の心に満ち溢れ「音が出なくても大丈夫だよ」という空気感に包まれている……と感じるのは私だけですかね?
ただ中には猛者がいらっしゃいまして、口笛どころか指笛も難なく吹ける方がいらっしゃるんです!!そんな時、本番中は手が叩けませんので心の中で拍手喝采を送っております。
その⑤レシーバーの不具合
吹替えの場合、レシーバーを使って原音を聞きながら収録します。ということでレシーバーは吹替えにとって、とっても大事なアイテムなんです。
ただこのレシーバーの電池が急に切れてしまったりだとか、イヤホンやヘッドホンのプラグとの相性が悪かったりすると突然原音が聞こえなくなってしまうことがあるんです。
そんな時は「耳が聞こえなくて……」なんて言って交換させてもらいます。
本番中だと言い出し辛いかもしれませんが、芝居がしっかり出来なくなってしまうなら耳が聞こえなくなった時点でちゃんと申告してOKですからね!新人の皆さま、そこは遠慮なく。
その⑥リップ音
リップ音って業界用語かも?現場では"リップ"と言うことが多いんですが、これが何かというと。口を動かす時に何かしらの原因で「ペチャ」とか「クチャ」とか口の中で音が鳴ってしまう現象です。
大概は仕方がないのですがリップが激しく、よくリテイクになってしまう方はもしかしたらこんな原因かも。
緊張が増すと口が渇き唾液の粘度が増してしまいます。その際リップ音が出やすくなるんですね。なので緊張して口が乾いている時は水をこまめに取って口の中を潤してあげて下さい。
"リップ音の解消にはリンゴジュースが効く"なんて噂がありますが、科学的根拠が私には分からないので試した方は是非ご報告下さいませ。
NG集如何でしたか?書いてるうちに結構出てきました。そして書いていて思ったのは、いつもミキサーさんが守護神として居てくださっているのだよなということ。今回の数々のNGが、実は守護神のおかげでOKに転じているものが沢山あります。
作品ってそれぞれのセクションがプロの技を駆使して一丸となり出来上がるんですよね。今の新人の皆さまはミキサールームにいる方々と交流するのは色々と難しいかもしれませんが、機会があれば是非お話してみて下さい!