
契約書の印鑑は本当に必要?電子契約との違いとその利点
契約書における印鑑の役割は、これまで長い間ビジネスの基本として扱われてきました。しかし、近年では電子契約が急速に普及し、印鑑の必要性や有効性について改めて注目されています。この記事では、契約の際に印鑑が本当に必要なのか、電子契約との違いと利点について解説します。
1.契約書に印鑑が必要な理由とは?
印鑑は日本の商習慣において重要な位置を占めていますが、その必要性は法律上絶対ではありません。令和2年に内閣府、法務省、経済産業省より「押印についてのQ&A」が出されており、”明確に特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない”旨が示されています。
印鑑の役割とは、「当事者の意思確認を示すもの」「後日の争いを防ぐ証拠としての役割」とされていました。
一方、法律上の要件としては上記のとおり、契約の成立に印鑑の押印を必須としていません。日本の民法上、契約は「意思の合致」で成立するため、印鑑がなくても有効です。
Q&Aで”明確に特段の定めがある場合”とされている書類としては、不動産登記や遺言書などがありますが、契約書は含まれておりません。
2.電子契約とは?
電子契約は、紙の契約書ではなく電子データとして締結される契約の形態を指します。電子署名やタイムスタンプを活用することで、紙の契約書にサインや押印した場合と同様に契約を締結する意思があったものとしてみなされます。
現在、各社から提供されている電子契約の仕組みとしては、電子署名方式とタイムスタンプ方式があります。
電子署名:契約者の本人確認と改ざん防止を保証
タイムスタンプ:契約成立時点を証明
また、電子契約システムを提供している会社が、当該成立を証明する立会人としているケースもあります。
なお電子契約は、「電子署名法」により、電子契約が紙契約と同等の法的効力を持つことが明確化されています。
3.印鑑と電子契約の違い
紙(印鑑を用いた契約)と電子契約の違いは次のとおりとなります。

4.電子契約のメリット
電子契約を導入するメリットとしては、次のとおりです。
①コスト削減
⇒印刷、郵送、保管の費用の削減が可能です。特に大量の契約を扱う企業にとって大きなメリットとなります。
②業務効率化
⇒遠隔地の取引相手とも瞬時に契約を締結可能です。急ぎの契約などでも、郵送する時間を考慮する必要がありません。
③書類紛失や検索の手間を減少。
⇒契約書の紛失などを防ぎ、生産性の向上にもつながります。
④電子署名やタイムスタンプによる改ざん防止。
⇒紙の契約書でも様々な対策をしますが、電子契約においても契約書の真正性が保証されます。
⑤環境への配慮
⇒紙の使用を削減し、環境負荷を軽減することが可能です。
5.印鑑を使うべき場面
電子契約が広く普及しているとはいえ、冒頭でも記載したとおり、印鑑が必要な書面もあります。
法令で押印が求められる書類としては、不動産の登記や遺言書、公正証書などが挙げられます。
また、電子契約システムの導入が進んでいない、又は理解を得られていない企業との契約についても、印鑑を求めるケースがあります。
電子契約システムを導入すると一気に電子化が進むことを期待して導入するケースが多いのですが、実は相手方の意向により全ての契約を電子化できるわけではないことには、注意が必要となります。
まとめ
契約書における印鑑の必要性は状況によりますが、電子契約の普及により、利便性とコスト効率が大きく向上しています。法的要件や取引先の慣習に合わせて、印鑑と電子契約を適切に使い分けることが重要です。