【E/PCS2023優勝🏅】「EAT/PAINT」大会調整録【#イートペイント】
こんにちは。「ガンナガンをしばく会」の高須(@t4ks_)です。
今回は「EAT/PAINT」の頒布/販売から「EAT/PAINT Champion Ship」当日までの約7ヶ月間(2023年5月~12月)の歴史を振り返っていく記事になります。
「EAT/PAINT」は公式大会の開催が決定されて以降2度に渡ったエラッタが施行され、発売直後/第1回大会/第2回大会以降…とそれぞれ異なった環境でのゲームを楽しむことが出来ました。エラッタカード入れた方が面白いので入れましょう。さて、当記事は所属コミュニティ(以下:しばく会)でプレイした内容の放流になります。数人で調整する内に議題に挙がった強構成やプレイングについてを中心に執筆しました。ノリとしては過去に投稿した「ガンナガン」の環境変遷/大会調整録と概ね同じです。
また、当記事はルールを知らない初心者向けの内容では無い点、記事のコンセプト上これから「EAT/PAINT」で遊ぶ方の体験を大きく損なう可能性がある点、2024年分以降のエラッタや環境についての話題を一切取り扱っていない点の3つをご了承ください。
文章中にゲームやルールの説明をあまり挟まないため、読み進める場合は公式サイトかお手持ちの説明書/カードに目を通しておく……あるいはある程度プレイしてからもう一度この記事を読みに来る事をオススメします。
▼初期環境
1セットならば【赤サビル】、2セットならば【赤ヒメリア】が初期環境の回答であり、特に【赤ヒメリア】は他のあらゆる構成に対して非常に有利であると認識されていました。また、後手OTKのルートが一応存在する【赤リオ/黄リオ】も一定の評価を受けました。
竜人の持つサブデッキ「アプラ」のカード群はバチクソに強く、ルーツカードが使用後に表向きのレスト状態でエナジーに置かれるゲームシステムも相まって、カードをプレイするだけでイカレた速度で使用可能なリソースが増えていきます。
《朱い切断》《膨張の愛》「《ヒノマル》+レスト効果」で雑に山を掘っても《懐旧の鮮血》で簡単に山札を回復できてしまう上、それらの動きが《愛された木漏れ日》によってループ出来てしまうため、"ドローと攻撃を主体とする高速デッキ"にも関わらず息切れを起こさないという意味不明なデザインになっていました。OMG、アプラ強すぎるよ…
竜人のサブデッキ「レイン」内の《イチョウ》も非常に強力なカードではありましたが、【赤ヒメリア】【赤サビル】の攻撃を受け切るには至らないケースがままあり、リオの後手OTKもそこまで確率が高くなかったため、プレイングについての深掘りがなされるより前に研究は打ち切られました。
…と言う話を大村あたる氏と池粕から聞きました。EAT/PAINT始める前に終わってんねんけど。
・大会の開催
頒布から2か月後、公式から"高頻度での大会開催"及び、成績優秀者を集めたチャンピオンシップの開催が明言されます。
LCGにおいては、ゲーム理解度での差をつけれやすい早期のタイミングの方が勝ちやすい(スタートダッシュは切り得)と考えているため、大会の詳細が出てすぐに、チャンピオンシップの権利を勝ち取るための練習/調整を始められるように準備していました。
バイタリティ凄すぎる…
▼第1回大会環境
さて、「EAT/PAINT 第1回公式大会」の開催決定に伴い、10種類のカードにエラッタが入りました。
また、大会レギュレーションが(説明書記載のルールとは異なり)デッキ登録制である事から、全対面五分以上ないしは不利対面に対してもプレイングで捲る余地のある構成を探し出す事を目標に調整が行われました。
【赤ヒメリア】は依然として強力な構成であるだろうと予想はしていましたが、他の修正箇所についても確かめる必要があり、プレイアブルなあらゆる構成の検証を行う事にしました。
・サビルへの評価について
エラッタの内7種がルーツデッキ内のカードであった為、竜人vs.竜人…サビルvs.ヒメリアのマッチアップについてまず検討する事になりました。
2セット戦が前提であった為、完全ミラーを除いたほぼ全てのマッチアップが検証されました。結局のところ、ゲームの構造上サブデッキの内容で大きく差をつける事が出来ない上に、サビルのカード群がヒメリアに対して非常に通りが悪いため、サビルはヒメリアに対してかなり不利であると結論付けられました。
【赤ヒメリア】に対しては速度で追いつけず、【黄ヒメリア】に対しても受け切られた上に竜ヒメリアのレスト効果でワンショットされる展開になってしまい、サビル側がヒメリアに勝てる材料を見つける事が出来ませんでした。大きく変化した〈カーシス〉を用いた【青サビル】も試しましたが、やはりヒメリア相手にはパワー不足感が否めず…
しかし、【赤サビル】については魔術師全般に対し有利が取れると考えられたため、ヒメリアが魔術師に対して大きく不利である場合のみにおいては、サビルを大会で使用する選択肢は一応あると判断されました。
このマッチアップの考察を始めた初期段階では、《懐旧の鮮血》《愛された木漏れ日》の調整が想定していたよりもプレイングへの影響が大きく、【赤ヒメリア】の勝率が芳しくありませんでしたが、デッキ回しへの理解度が高まっていくにつれ勝率は爆発的に高くなっていきました。
・魔術師vs.ヒメリアの検討
第1回大会では【赤ヒメリア】【黄ヒメリア】のシェア率が高くなるであろうと予想しました。竜人の同キャラ戦はじゃんけんが試合の勝敗に大きく関与すると考えられたため、ヒメリアミラーを避ける方策としても魔術師を使用する選択肢が検討されました。
中でもプレイアブルであると考えられた【赤エーカ】【リオ(全色)】を中心に考察を進める事にしました。
プレイについて深掘りしきれていない段階でも選択肢は【赤ヒメリア】【黄ヒメリア】【黄リオ】の3つに絞られましたが、【黄リオ】については初手事故が発生するゲームがままあったため、比較的早い段階で候補からは除外されました。(とは言え練習/調整で使う事が多い構成の1つではありました。)
よって以降の調整では「赤ヒメリア周りのマッチアップ/プレイング」「ヒメリアミラー」を中心に考察が進められることになります。全部を詰める時間なんて無いからね……(【青ヒメリア】もこの段階では考察が進んでいなかった)
回った赤ヒメリアはこんな感じ。
・【赤ヒメリア】vs.リオ
「ヒメリアミラー」の考察は一旦後回しにされ、プレイ考察の余地が多く残されていたリオ対面についての研究を行う事にしました。
【黄リオ】側が後1で《ゼウスの粛清》+《コーティング》を成立させにいく事がヒメリアに負荷をかけられるプレイとして考えられましたが、初手に《ニケの棄却》を引けていないとそもそもそれを狙えない点や、そもそも成立しても勝ちに直結していない事が分かりました。
後3キルを狙うプランも試されましたが、そうなると【赤リオ】の方が適している事や、【赤ヒメリア】のキルターンが基本的に3ターン目であるためそもそも間に合っていない点が問題となり、結果的にこのマッチアップは赤ヒメリア側有利と結論付られました。
【赤ヒメリア】側の要求を上げる事で勝利を狙う構成として【青リオ】が挙げられました。
始めは青リオ側の勝率が高かったですが、赤ヒメリア側がデッキの回し方や《強反》ケアを理解してくるにつれ、このマッチアップについても赤ヒメリア側有利だと結論付けられました。また《スクラッチャー》やトラップにINKを割いてしまうと後3キルが成立しなくなる…と言った問題もありました。
第1回環境での【赤ヒメリア】のデッキパワーは凄まじく、《スクラッチャー》や《強反》、《ゼウスの粛清》+《コーティング》《泥濘》といった妨害をかなり容易にすり抜ける事が出来るパワーが存在していました。
【赤リオ】についても後1キルが無くなってしまったためあまり高い評価に至らなかった事や、リオのエラッタが赤リオにとっては純粋な下方修正であったため、深掘りするには至らず。
【黄ヒメリア】もこの段階では「竜人ミラーでの優位性は高いが、魔術師全般に対して不利である」と認識されていたため、大会一週間前の地点でほぼ全ての構成に有利が取れていそうな【赤ヒメリア】を使用する事を決めました。
・ヒメリアミラー
基本的に先攻有利であり、「じゃんけんの勝利≒試合の勝利」と言っても良い状態でした。
が、中でも【赤ヒメリア】は後手捲りを比較的実現できうる構成であると考えられたため、本番直前では【黄ヒメリア】対面と完全ミラーを重点的に練習していました。
《膨張の愛》や《薔薇の再生》の使用は勿論、《朱い切断》を複数回通してリソースを伸ばす事が後手【赤ヒメリア】側の勝ち筋となり、それを防ぐ手段である《願われた三日月》やそれに準ずるカード、ブラフとなる他のトラップを引けているかどうかもミラーの主な争点になります。
【赤ヒメリア】より【黄ヒメリア】の方がプレイングが簡単であり、その上で一定のパワーがあったため4人以上のシェアはあるだろうと予想していました。
ただ、赤ヒメリアを握る側からすれば後手から捲れる可能性がある上、魔術師を使うプレイヤーも居るならば黄ヒメリアは決勝卓には残りづらいだろうと考えられた事から、黄ヒメリアが多い環境は都合が良いため問題にはならないと判断しました。
互いのドローに依存する部分は大きいですが、この地点では
・【赤ヒメリア】対【黄ヒメリア】→前者有利
・【赤ヒメリア】完全ミラー→先手有利
と結論づけられました。【青ヒメリア】については〈カーシス〉のエラッタが多くプレイ回数が少なかったため正当な評価は出来ていませんでしたが、ヒメリアミラーでは【赤ヒメリア】が一番勝率が担保されると判断されました。
(全てを詰める余裕は無かったため、青ヒメリアについては赤ヒメリアに対して後手から捲れるかどうかだけ考察してみましたがかなりダメそうでした。)
・補足:【赤サビル】
【赤サビル】は多彩な攻撃によって相手のワークを処理し続ける事が出来る上、リソースを伸ばす札も多いため再現性の高い3キルが可能なデッキで、その性質上全ての魔術師に対して有利が付きます。
魔術師対面が有利である反面、前述の通りヒメリアに対してとんでもない不利がついているため大会に持ち込むには至りませんでした。
【赤ヒメリア】が後手捲りを実現し得るのはその速度だけでなく、《忘れられた朝露》《崇められた夜明け》《愛された木漏れ日》のコストパフォーマンスの良さに起因しており、メインデッキのカードの仕様コストが軒並み重いサビルは「ヒメリア」に対して後手から勝ちに行ける土俵に立てていない…と言うのが当時の認識でした。
・補足:【黄ヒメリア】
各種トラップと《イチョウ》によるライフゲイン、《ヨミ》による盤面除去で相手の攻撃を捌きつつ、《忘れられた朝露》《崇められた夜明け》でのワンショットを勝ち筋としたデッキです。
対象戦:竜人で先手を取れた際のパワーの高さ、縦引きが少ない事によるプレイ分岐の少なさ(=プレイングが難解で無いため、ミスが少なくて済む事)が利点として挙げられていましたが、魔術師対面で大きく不利がつくと考えられた事、第1回環境での【赤ヒメリア】があまりにも強すぎた事から使用候補からは外れました。
・当日のシェア
大会前日地点ではヒメリア>リオ≧エーカ>サビルと予想していましたが、予想よりサビルが多く驚きました。
筆者も予選ラウンドでは2回当たりました。運が良かったです。
☝️対戦レポートはこちら☝️
また、決勝トーナメントのシェアは以下の通りでした。
全ての進出者が「ヒメリア」を使用しており、決勝トーナメントで負けたプレイヤーは(筆者も含め)じゃんけんで負けていたため、第1回大会で勝つ為にしておくべきゲーム理解は概ね出来ていると感じました。
まぁ予選3回戦と決勝トーナメント1回戦のじゃんけんに勝てたのは幸運としか言えないですが…
当初の狙い通り、ゲーム理解による差を付けやすい第1回大会のタイミングで《強者の証》を勝ち取る事が出来ましたが、「魔術師のプレイ理解に乏しい事」「追加のエラッタが来ないとは言えない事」「そもそもプレイングをまだ詰めれていない構成がある事」など、E/PCSに向けて準備/解決しなければならない問題が多い状態でした。
▼第2回大会環境
第1回大会の結果を受け、「EAT/PAINT 第2回公式大会」の開催決定に伴い追加のエラッタが発表されました。
今回のエラッタは【赤ヒメリア】の高いデッキパワーを咎める内容……の筈でしたが、ゲームのシステム上【赤サビル】も巻き添えに。お、おいサビル……どうしちまったんだ……w
また筆者、池粕、大村の3名は《強者の証》を所持しているためE/PCSまでは大会出場の必要性はありませんでしたが、よりゲーム理解を深める必要があった事や、2023年の上旬辺りから関わる機会が増えたげーちす氏(@ghetsising)の対戦相手を務めるべく、継続して練習/調整を行う事にしました。
・エラッタへの雑感
【赤ヒメリア】のデッキパワーは明確に落ちており、3TKの要求が跳ね上がったうえ、《朱い切断》のドロー効果がターン1になった事でヒメリアミラーでの後手捲りが非常に難しくなりました。
ただし根幹の動きは損なわれていないため、第2回大会では【赤ヒメリア】のシェア率は上位に位置するだろうと予想しました。
また、【黄ヒメリア】についてもプレイ難度があまり高くない強構成として、こちらもシェア率は高いだろうと考えられました。
《イチョウ》がエラッタにより《愛された木漏れ日》と組み合わせての2~4点回復のプレイを狙いやすくなりましたが、あまり影響は大きくなさそうです。
【青ヒメリア】については正当な評価が出来ていませんでしたが、エラッタによる環境の変化であったり、安定して4TKが可能である事もあり相対的に評価が上がりました。
ただし、【黄ヒメリア】【青ヒメリア】ともにヒメリアミラーでの後手捲りを遂行する要求が非常に高いため、ヒメリアミラーで後手を取らされる事を想定するならばそれら2つよりも【赤ヒメリア】を持ち込む方が分は良いのでは?と考えられました。
エラッタを経てもサビルは魔術師に対しての優位性とヒメリアに対しての劣位性が変わる事はなく、シェアは第1回大会の時より落ち込むだろうと予想されました。
【黄サビル】も試されましたが、ヒメリアに対しての勝率が大きく改善される事が無かった上、魔術師に対しての優位性を大きく損なう形になるため、万が一サビルを大会で持ち込むならば【赤サビル】以外無いだろうと結論付けられました。
ヒメリアのシェアが多い環境を想定する場合、「サビル」は非常に通りが悪く、「ヒメリア」も予選抜けの如何をじゃんけんの勝率に委ねる形になります。
全ての試合で先手を取れるのならばヒメリアを持ち込めば良いのですが現実はそうもいかないため、第2回大会では魔術師を持ち込む択を強めに検討していました。どうせサビル居らんやろ…
・【赤エーカ】vs.【赤ヒメリア】
シェアが伸びそうな黄ヒメリアに対して有利が取れており、環境における立ち位置が良さそうな【赤エーカ】と、エラッタによる影響を大きく受けた【赤ヒメリア】は、プレイングを詰める必要性やエラッタによる影響を確かめたいといった理由から、第2回大会に向けた練習/調整の中でかなり多くの対戦数をこなす事になりました。
①《朱い切断》エラッタの影響
パワーが3から2になった事により、《デメック》を対象に発動してもドロー効果を適用できなくなりました。
エラッタ前は《デメック》までリリースした上で《ライプ》《レオル》を立てていないと切断ケアが成立しませんでしたが、《デメック》も切断への盾として使えるようになり、"レスト状態の《ニャット》をリリースしドロー効果の適用から逃れるプレイ"がかなり正当化されるようになった(切断ケアをしても盤面の強度があまり損なわれなくなった)のはエーカ側にとっての有利材料でした。
また《朱い切断》の通りが悪くなった事により、《ヒノマル》の採用も検討されました。
練習段階では勝率が高かった事、大会中に戦法をスイッチ出来る点も含めて《ヒノマル》に対しての評価が高くなりましたが、対戦を重ねる内に「《ヒノマル》の採用が透けた地点で《朱い切断》ケアをされなくなる恐れがある事」「《朱い切断》は通った場合のリターンが非常に高いカードである事」を理解し、またもう一つの要因により【赤ヒメリア】の構築は当初のまま落ち着く事となりました。
②〈アプラ〉エラッタの影響
【赤エーカ】対面に限った話ではありませんが、《朱い切断》ドロー効果適用の機会が減った事や、《膨張の愛》のドロー枚数が減った事で【赤ヒメリア】側は3TKがかなり困難になりました。下振れやプレイミス、後3キルをケアするためにトラップを伏せたり…などで4TKすら怪しくなる場合もあります。
逆に、魔術師側は後攻3ターン目を貰えるようになった事で「展開(1T目)→チャージ(2T目)→展開(3T目)」の流れを通しやすくなりました。
今までは《朱い切断》で盤面を壊される上に、チャージをしたものなら《膨張の愛》も含めて伸びたリソースで先3キルを通される…といった展開になりがちでしたが、ヒメリア側の1~2ターン目の動きが弱くなった事で《決死の断血》を用いた後2キルのルートも目指せるようになりました。
③【赤エーカ】の後1キルについて
対面の展開によりますが、いくつか後1キルのルートが存在することが分かりました。
ただしトラップを伏せられると後1キルを狙う事に対して高いリスクが生まれる上、そもそも成功率も高く無い(と考えられた)ため、ヒメリア側は基本的には後1キルを割り切ってゲームを行う事にしました。
④このマッチアップの相性について
第2回大会環境での練習初期は赤ヒメリア側が有利なのでは無いかと考えられましたが、24戦行ったのち「【赤エーカ】vs.【赤ヒメリア】は五分マッチである」と結論付けられました。
ただし、プレイ介入の余地が高いマッチアップと言うよりかは互いの引きの差で戦況が傾き、有利側がゲームを詰め切るためのプレイングが必要…といった印象でした。
キルターンでの詰め方を間違えると敗北に直結するため【赤エーカ】【赤ヒメリア】のどちらを使うにしても一定の練度は必要でしたが、基本的には赤ヒメリアのリソースが伸び切らない事故をエーカ側が拾うか、リソースの伸び切った赤ヒメリアが3TKないしは4TKを決める…といった試合展開になりがちでした。
赤ヒメリアが赤エーカに対しての有利を主張できなくなり、第2回大会に持ち込む構成が【赤エーカ】に傾きましたが、"【赤エーカ】に対しての有利を主張できる構成"が見つかった事により事態は一変します。
・【青ヒメリア】
青ヒメリアは基本的なキルターンが4ターンであった事から第1回環境では評価の高くないデッキでしたが、【赤ヒメリア】の速度が落ちた事によって評価が高まりました。
同様の理由でメタゲームに浮上した【赤エーカ】に対しては「《藍い融解》による先1進化」「《潮騒の帰還》でトラップを使い回すプレイ」によって有利に立ち回れる事が分かり、またサビルに対しての優位性も殆ど損なわれていないと感じたため、【青ヒメリア】も第2回大会への持ち込み候補の1つに挙がりました。
青ヒメリアの対エーカ勝率は高かったですが、
ヒメリアミラーは先手ゲー感が否めない事
後手の【赤ヒメリア】に対して黄ヒメリアよりも青ヒメリアの方が捲られ易い事
「リオ」に対して不利が付く事
といくつかの無視出来ない問題点も見付かり、【赤ヒメリア】【青ヒメリア】【赤エーカ】のどれを持ち込むのかは大会前日まで悩む事になりました。
また、【赤エーカ】のシェアも多いだろうと予想しため、持ち込み構成を考える上で重要なファクターになると考えられた”赤エーカのミラー”についても考察/練習を行いました。
・【赤エーカ】ミラー
練習/調整の段階で軽く触っていた「エーカ」対「リオ」、「リオ」ミラーがいずれも先手側有利であると認識されており、【赤エーカ】ミラーも数戦プレイしたところその例に漏れず先手側有利ではないかという意見になりました。
魔術師は「展開(1T目)→チャージ(2T目)→リーサル(3T目)」を基本的な動きとしていますが、こと【赤エーカ】ミラーにおいてはこの通りに行かない試合も多くあり、様々な要素によってこのマッチアップは非常に難解なゲームとなっていました。
・「後殴り有利」の原則
ワークが相手のワークをアタックした時パワー≧ガードである場合,
アタックした側が場に残りアタックされた側は捨て札に置かれます。
そのため、盤面の取り合いのみを考えると基本的には先に展開した側が不利益を被る事になりがちです。
先攻1ターン目ではチャージが出来ないため、「パス」ないしは「最低限の展開に留める」選択をする必要があります。
先1でパスをされた返しにチャージする場合、インク5つ分のアドバンテージを得る事になりますが、先2OTKのリスクは後1のそれよりも高いため、基本的には展開する選択肢を取る事になります。
チャージの返しで後1OTKが出来ればそれで万事解決ですが、先1パス→後1展開のゲームになった場合、「後殴り有利」の原則により先手側が得をする展開になります。
先1でワークを召喚された場合、「後殴り有利」の原則にのみ則れば後手側が得をする展開になりますが、その原則は"同じ枚数/インク量をやり取りした場合"に限った話であり、サブデッキ〈Aレッド〉に搭載されているインク回復/コスト軽減のカードや、「エーカ」の《ニャット》召喚時効果や"ワーク共通効果"を使用できるチャンスが先に巡って来るのは先手側になります。
・「インクの損失」
《ニャット》などのコスト3ワークを《レオル》《ライプ》辺りで取る形になると、その地点ではインク量だけを見れば損をしている形になります。
《レオル》はレスト状態でのガード値が3であるためコスト3ワークで返され、召喚した《ライプ》も《レオル》で返されるとインクを1つ損する形になります。
しかしインク損を嫌って盤面を放っておくと、先手側のワーク1体が2回"ワーク共通効果"を使う形になり、増えた手札から《決死の断血》《起源の転換》などのインク回復を使用されるため先2リーサルのリスクが高まります。
盤面のやり取りのみにインクを消費した場合においても、今度はキャラクターに対してダメージを与える手段が無くなるため、チャージの必要ないしは《決死の断血》《起源の転換》に手札を割く必要が出て来ます。
12インクから25点を出すためには先述の後1OTKないしは、《レオル》《ライプ》1体が2回以上アタックする必要があります。
《決死の断血》が2回絡めば盤面を乗り越えた上で25ライフを削り切る事は可能ですが、1ターンに1度しか発動出来ないうえ、(制約の都合)発動するターンでは全展開を強要されます。
後手プレイヤーが《決死の断血》を使うリスクは大きく、後1OTKが決まらなかった場合は先2で盤面を返されて手札からの後続もインクも無く渋々チャージする…という展開になりがちでした。
また、お互いの手札が渋い(手札のワークが1~2体のみ)展開になった場合においても先手プレイヤーが"ワーク共通効果"で手札を整えつつ盤面のワークでライフを守る→先2でチャージ→後手側が後2で差し切れず先3キル成立…といった具合で、「展開(1T目)→チャージ(2T目)→リーサル(3T目)」の権利を持っている事も魔術師戦における先手のメリットとされていました。
先手プレイヤーのみ手札が渋い場合などは後手側が《決死の断血》を発動して押し切る展開は度々発生しましたが、「後殴り有利の原則」「インク損」といった要素に加え、「先2キル」の可能性すらあるため、【赤エーカ】ミラーにおいては基本的に先手側優位のやり取りが発生している、と認識されました。(この地点での実際の理解はもう少し浅いものでしたが)
・デッキ選択について
しばく会からは筆者、池粕、げーちすの3名が参加。
「げーちす氏が《強者の証》を勝ち取る事(ベスト3入賞)」を目標に練習/調整が行われており、持ち込みも「予選4-0ないしは3-1を達成し得るデッキ選択」を念頭に考える事になりました。
大会前日地点での持ち込み候補は【赤ヒメリア】【青ヒメリア】【赤エーカ】の3つでしたが、「【赤ヒメリア】が明確に有利を主張できる対面が第2回環境に居ない事」に気付いたため、【青ヒメリア】【赤エーカ】のどちらかを使う線が有力になります。
予選で身内戦になった場合げーちす氏が下位卓に沈むのは望ましく無い事、3人全員が予選を抜けた場合にげーちす氏の権利獲得が確定する事から、最終的にはげーちす氏が【青ヒメリア】を選択し、筆者と池粕の2名が【赤エーカ】を使用する形になりました。
・当日のシェア
「ヒメリア」のシェアが高く、次点で「エーカ」…という大まかな予想は当たりましたが、ヒメリアのサブデッキの内容については事前の予想とは異なる形となりました。
また、決勝トーナメントのシェアは以下の通りでした。
予想よりも【青ヒメリア】の評価が高く、第一回大会予選4回戦の動画を見て【青ヒメリア】を握ったプレイヤーも居ました。
逆に【赤ヒメリア】については評価が低く、エラッタによるナーフを重く見たプレイヤーが割と多いように感じました。
今回はヒメリアミラーが多く発生した上、【赤サビル】がシェアが多めであった赤エーカを上手いこと喰えた…と言った感じの大会でした。
ちなみに筆者はエーカミラーを2回やりました。
戦績としては
・筆者:予選3-1(最終戦でキダさんに負け)
・池粕:予選3-1(2回戦で筆者とミラーになり負け)
・げーちす:予選2-2(ヒメリアミラーで後攻負け、赤サビル対面事故負け)
といった感じで、「【青ヒメリア】が【赤サビル】に対して事故負けする展開が割と有り得る事にまで理解が及んでいなかった点」「ヒメリア対面での【赤エーカ】のプレイングを詰め切れていなかった点」が課題として浮き彫りとなり、E/PCSに向けてより深いゲーム理解を求められる事になりました。
▼第3回大会環境
エラッタ/大会レギュレーション共に変更はありませんでしたが、定員が16名→8名へ。それに伴い《強者の証》の配布対象が上位2名のみとなり、E/PCS出場の為には予選2勝以上+決勝トーナメントで1勝以上が要求される事になりました。
この頃は【青ヒメリア】【赤エーカ】の評価が高く、次点で【赤ヒメリア】【黄リオ】…といった感じの環境認識でしたが、第3回大会を制したのは第2回大会を終えるまで評価/候補にも挙がっていなかったデッキでした。
・【赤リオ】
「展開(1T目)→チャージ(2T目)→リーサル(3T目)」の動きを行う事で再現度の高い3TKが安定して行える上に、《ゼウスの粛清》によりヒメリアの各種トラップの存在を無視できるこのデッキは、キルターンが4T目以降である【青ヒメリア】【黄ヒメリア】に対しては明確に有利を主張できる構成でした。
【赤ヒメリア】に対しても気持ち程度の有利がついていましたが、やはり「サビル」「エーカ」ともに厳しい対面であったため)、青ヒメリアのシェアが多い環境においての勝ち山…といった印象でした。
・当日のシェア
第3回大会のシェアは以下の通り。
練習/調整を共にしたげーちす氏は、出場地点で【赤リオ】の存在を認知していたため、サビルや黄リオに対しても有利を主張でき、赤リオに対しても抗戦出来得る【赤ヒメリア】を選択しました。
第3回大会では【青ヒメリア】のシェアが多く、それに不利とされる【赤エーカ】の姿は見当たらなかったようです。
【青ヒメリア】に対して有利を主張できる構成として、黄リオでは無く【赤リオ】を選んだ優勝者は流石だと思います。
また、第3回大会シーズン中に「EAT/PAINT Championship」の開催日程と特殊レギュレーション「竜魔戦」が発表されたため、げーちす氏との練習/調整の傍ら、並行して竜魔戦の考察も行っていました。
▼E/PCS環境
「EAT/PAINT Championship」は、第1回大会の上位3名/第2回大会の上位3名/第3回大会の上位2名の計8名で行われる招待制の大会です。
簡易ダブルエリミネーショントーナメントで進行し、竜魔戦(デッキ選択ルールが存在するコンクエスト戦)によるBO3で勝敗を決します。
レギュレーション発表地点で使用する構成の目途はついていましたが、どちらにせよ改めて環境把握/ゲーム理解を行う必要がありました。
・使用候補の洗い出しと環境理解
E/PCSで使用しうる構成と、それぞれを選択する上で課題となる事項の洗い出しを行いました。
・【赤サビル+赤エーカ】
相手のヒメリアは通して、魔術師対面で2勝する事を目指す構成。【赤サビル】があらゆる魔術師対面で有利が取れるため「竜魔戦」が発表された地点での第一候補でした。
「ヒメリア」が明確に強い環境ではありますが、コンクエストではヒメリア対面を割り切る事でミラーから逃げる事が出来ます。
また、エーカミラーにおいて先手を獲得しやすい事もメリットとして挙げられていました。
・【ヒメリア+リオ】
ヒメリアミラーで先手を取り、「リオ」がヒメリアに対して有利を主張出来ている、ヒメリア対面で2勝する事を目指す構成。
強いキャラクターである「ヒメリア」を使うならば横に据える魔術師は「リオ」…と考えるプレイヤーは多く、これがE/PCSの環境を定義する組み合わせだろうと考えました。
これが持ち込まれる場合は、【赤ヒメリア+赤リオ】【青ヒメリア+赤リオ】辺りになると予想していました。
・【赤ヒメリア+赤エーカ】
サビルに対して有利かつ魔術師対面でも比較的勝率が安定する【赤ヒメリア】と、リオに対して有利かつヒメリア対面にも抗戦出来うる【赤エーカ】で2勝する事を目指す構成。
強構成2つで手広く見れる事が利点ではありますが、「ヒメリア」構成のミラーになった場合に大きなリスクを孕んでいる点や、そもそもコンクエストの都合このような「グー+チョキ」の持ち方が正当化されづらい点が問題でした。
3つの使用候補が出た段階で、まず「エーカミラーについての理解度強化が最優先事項である」という意見になりました。
また、エーカを使う場合は対竜人のプレイの理解度強化も必要になりましたが、こちらは1人回しとその知見の共有によってある程度解決可能な問題であるため、2人以上の練習では赤エーカミラーの対戦を多めに行いました。
・【赤エーカ】ミラーの再考察
竜魔戦が発表された地点では「赤エーカミラーは先手側有利」「後手側は《決死の断血》を2回打てた場合捲れる余地がある」「引きが渋い(手札のワークが《デメック》のみの)場合は先手後手関わらずかなり負けうる」といった程度の漠然とした理解しか出来ていませんでした。
【赤エーカ】自体がプレイ分岐が多くプレイが難しいデッキであった為、ミラーについての理解を深めるにはかなり多くの対戦/練習をこなす事になりました。
・赤エーカミラーの先後差について
まず議題になったのは、先手側はどのような方針でプレイするべきかについてです。基本的には先手側有利とされていましたが、インクを温存するのか、全展開するのか…どちらの方が勝率の高いプレイであるかについてはまだ深く考察出来ていない状態でした。
「第2回大会環境」の項目で先述した通り、ボードの取り合いについては"後殴り有利"である上、先攻1ターン目はアタックを1度しか行えないためそもそも展開する旨味が少ない事から、この地点での先手側は後1OTKを防げる程度のガード値を盤面に用意しつつ、相手の全展開を返すためのリソースを温存する事を目指してプレイするのが正解とされていました。
…が、初手に《ライプ》や《デメック》のみでインク回復の札が無い場合など、先2でチャージせざるを得ない上にその後の展開が続かない(ほど手札の状態が悪い)場合は"ワーク共通効果"やニャットで山を掘らざるを得ず、その過程でインクが枯渇するため《決死の断血》を絡めた全展開に移行せざるを得ないという問題がありました。
また、先1で《レオル》《ライプ》でライフを取りに行くプレイをした後に、後手側に盤面を返された場合も同様のリソース不足/ないしは後2キルの成立が問題になりました。
全展開をするにしても《強烈な速筆》《決死の断血》が無い場合の展開は弱く、後手側にかかる負荷はタカが知れています。《ニャット》が無い場合はそもそも展開するワーク自体を確保しづらい上、それらのカードを探し当てるために"ワーク共通効果"を使用すると盤面のガード値が下がってしまい面を返されやすくなります。
先攻1ターン目の全展開を返されると後攻2ターン目でのリーサルが概ね成立してしまうため、先1で全展開する場合においてはゲームに勝つための要求値が非常に高い事を認識しました。
先攻1ターン目のプレイ方針を決める指針が自分の初手しか無い反面、後手プレイヤーは相手の動きを見てから後攻1ターン目の動きを決める事が出来る(概ね全展開の形にはなりますが)ため、赤エーカミラーについて先手側有利であるという認識を改める必要があるのでは?と考えました。
・引きの差によるゲーム影響
また対戦数を重ねる内に《決死の断血》では無く、《強烈な速筆》《ニャット》の重要度が特に高い事に気付きます。
"ワーク共通効果"を使用した場合、コストとしてレストさせたワークは攻撃に参加出来ない上、ワーク共通効果を1回使用しただけで処理された場合、インクを消費して山を掘っただけになってしまいます。
《強烈な速筆》は、全展開する際に盤面に並ぶワーク数を増やしてくれるだけでなく、処理された場合の損失も軽減させてくれるカードです。(《ニャット》1体で"ワーク共通効果"を1度しか使えない場合、インク3ではなくインク2で出した方がインクの損失は少なくて済みます)
また、コスト軽減効果によって召喚可能なワークの数を増やす事が出来るため、《強烈な速筆》を一方的に持っている側はターンを跨いでも盤面にワークが残っている事が多いです。
その上、コスト軽減効果によってワークを盤面に維持するためのインクが少なく済んでいるため、盤面にガード値を確保した上でチャージ時に(次ターンにリーサルを狙う為の)十分量のインクを確保する事が出来ます。
実質的に手札消費無しで盤面を展開出来る《ニャット》も当然重要度の高いカードで、《強烈な速筆》と併せて握っていた場合はドロー効果+ワーク共通効果で手札を増やす事によって、強力な盤面を安定して形成する事が出来ます。
また、スタンド時のガード値が4であるため「《ニャット》の処理を後回しにすると高いガード値を押し付けられる」という圧力を相手に与える事が出来ます。(基本的には《レオル》の次に《ニャット》が処理されますが…)
《強烈な速筆》を使用するとワークを展開出来る数が増える…という事は"ワーク共通効果"ないしは《ニャット》でさらなる展開札を探しに行きやすくなるという事に直結しており、ワークを展開出来ていればいるほど、盤面が返されづらい上チャージする際の後隙が軽くなります。
また、先述した通り《強烈な速筆》適用中に召喚されたワークについているインク数は少ない上、さらに"ワーク共通効果"でインクが捨て札に置かれていくため、チャージ時は少ないインク数で盤面のガード値を保持しつつインクを大量に回復する事が出来ます。
全展開する→返しに盤面を処理される→チャージ…という流れで、返すターンでのリーサルが成立しない場合はチャージした側が概ねリーサルを決める事が出来ますが、チャージをした際の盤面が弱い場合はそのままリーサルを取られる展開になります。
《強烈な速筆》《ニャット》を一方的に持っていると、持たざる者は盤面を返した上でのリーサル成立を実現出来なくなるため、持っている側は前者のゲーム展開に持っていく事が出来ます。
赤エーカミラーにおいては先後差はあまり無く、《強烈な速筆》《ニャット》を持っているか持っていないかの格差が大きいのでは?と認識されるようになりました。
・先手側のプレイ方針について
ここまでの練習/調整の結果、《強烈な速筆》《ニャット》を持つ側が優位にゲームを進められる事は理解出来ましたが、「先攻1ターン目はどのような方針でプレイするべきか」「先攻/後攻どちらの方がより勝率を出せるのか」については大会前日の調整会でようやく結論が出る形となりました。
まず、先攻1ターン目でのプレイ指針について改めて検討が行われ、「基本的には全展開するべきである」と言う方針で議論が進みました。
《強烈な速筆》《ニャット》を引いているかどうかによる展開の格差もありましたが、《決死の断血》によるインク回復+展開もやはり重要なファクターであり、先攻側がセーブした展開を行った場合に後攻側の全展開で使用可能なリソース量に差をつけられてしまう事から、先攻1ターン目でも全展開してそれらのカードを探しに行かなければならない事は明白でした。
全展開すると当然盤面を返されるリスクが発生します。そのため、先攻1ターン目では、盤面を返すハードルを上げるためにガード値が4である"スタンド状態の《ニャット》"や《ライプ》を用いて盤面形成を行わなければなりません。
そうすると、《ニャット》をワーク共通効果のコストとして使用できなくなるか、《デメック》召喚時効果をニャットに充てる必要が出て来ます。
勿論、先攻が理想的な盤面展開を出来た上で、後攻側の初手に《ライプ》《レオル》と言ったパワー4以上のワークが居ない場合はそのまま先手側が押し切る展開になりがちでしたが、後手側が全展開する過程で《レオル》《デメック》《激励の一手》を引き込んで盤面を返す試合も多かったため、後攻側の手札の質が良かった場合は展開する事が裏目になるのでは?と考えられました。
しかし、展開をセーブしてインクを温存するするプレイは先述した通りそもそも遂行が難しく、展開をセーブするとリソース差をつけられて圧殺されます。最終的に先攻1ターン目はやはり「全展開して後2キルが成立しない事を祈って先3キルを狙う」方針でプレイするべきだと結論付けられました。
・先攻時/後攻時における勝率の差について
先攻1ターン目で取るべきプレイ方針が明確に定まったため、「E/PCS本番で赤エーカミラーになった際に先手/後手どちらを取るべきか」について改めて考えられ、主に2つの理由から「赤エーカミラーは後攻側が勝率を出しやすい」という意見になりました。(E/PCSで赤エーカミラーになった時に手番選択の権利を持っている試合は全て後手を選択していました)
①先手側に課される高い要求/展開ハードル
先述の通り、先攻1ターン目は「ガード4のワークを複数体押し付け、相手が盤面を返すハードルを高めながら先2ないしは先3キルの為の要求パーツを探す」プレイを行います。
《強烈な速筆》《ニャット》から動けた上で《決死の断血》を2回打てる構えが整った場合は概ね先2キルないしは相手にチャージを強要しての先3キルが成立しますが、《ライプ》や《デメック》から動かざるを得ない場合はそのプランが成立しなくなります。そもそも《ニャット》を引けない場合もあります。
また、展開/リーサルの要求パーツを探しに行きながら《ニャット》のスタンド状態を維持するのは渋い初手を握らされた場合においてはかなり厳しい上、レスト状態の《レオル》もインク3ワークで返されてしまうため、手札の質の如何だけで無くインクなどのリソース面においてもシビアな要求を課されていると認識しました。
②乗り越えるべき要求が明確な後攻側
後攻1ターン目は概ねどの試合でも基本的に盤面を返していく/ないしは全展開する事を目指してプレイをしていくため、《ニャット》のスタンド状態を維持する必要に迫られる事がほぼありません。
ワーク共通効果の使用回数を増やせるという事は、手札を整えやすくなる事に繋がり、高い質/多い枚数の手札は「相手に課された要求を乗り越えやすくなる事」を意味します。
先攻1ターン目の初手に《強烈な速筆》《ニャット》が絡んでいた場合はかなり強固な盤面形成をされる事になりますが、自分もそれらを握れている場合はそれらを全て返して後2キルを狙いに行けますし、そもそも赤エーカミラーがある意味では「引きゲー」であるため、先1でそういった"満点の動き"をされるのは割り切るべきだと考えられました。
先攻1ターン目においては特に、ガード4ワーク複数体を用いた盤面形成は再現性が低く、特に《ニャット》が絡んでいない場合は手札の質も整い切れていないため盤面を返された後はチャージ以外のプレイが弱い選択肢である場合が殆どです。
【赤エーカ】は手札の質の低さがそのまま盤面に反映される上、ワーク共通効果によって(加えた手札や捨て札の)公開情報が増えて行くため、後攻側はそれらを基にプレイを選択する事が出来ます。
ワーク共通効果の使用権利を多く持つ後攻側は盤面の展開/取り合いにおいて優位性があり、手札の質がほぼ同様の場合は勿論、手札の質が多少悪い場合においても試合を行う土俵に上がりやすいのは後攻側であると結論付けられました。
・ヒメリアvs.魔術師 についての精査
大会前日地点で【赤エーカ】の練度/理解度がかなり仕上がって来たため、ヒメリアvs.魔術師についても軽く認識のすり合わせを行いました。
・【赤エーカ】vs.【黄ヒメリア】(55:45)
赤エーカ側が有利(70:30)であると認識されていたこのマッチアップですが、想定していたほど有利が取れていないのでは?と認識が改められました。
《雷号》《疑われた湖上》などで除去されつつ受け回されると、エーカ側は2-3ターン目から《寒星》《願われた三日月》などによる高いガード値を超えライフを削るための要求が跳ね上がっていきます。
基本的にはエーカ側がワークを大量展開し押し切るゲームになりがちだと考えられていましたが、エーカ側の事故ないしは黄ヒメリア側が十分量のトラップを構えられている事も多く、エーカ側の微有利(55:45)程度であると結論付けられました。
・【赤エーカ】vs.【青ヒメリア】(50:50)
青ヒメリア側が有利(70:30)であると考えられていましたが、対戦を重ねてみると青ヒメリアが初手に《藍い融解》を撃てているかどうかがあまりにも大きすぎる事が認識されました。
ワークの除去を《藍い融解》《忘れられた朝露》《疑われた湖上》に依存している青ヒメリアの盤面除去能力は先1で半竜になれるかどうかに依存しており、そもそも半竜状態のガード値が無ければエーカ側の速攻を受け切れない事が分かりました。
また、進化出来ていない/ないしは《潮騒の帰還》が絡んでいない状態だと《秘色の波動》を撃てないため、《レオル》《ライプ》の除去がかなり困難になります。
このマッチは青ヒメリア側が初手に《藍い融解》を撃てるかどうかに大きく依存しており、対戦数をこなしていくと勝率は五分五分に収束するのでは?と考えられました。
・【赤リオ】vs.【黄/青ヒメリア】(80:20)
先述した通り、赤リオ側がトラップを無視した再現性の高い3キルを行ってくるため、このマッチは基本的に赤リオ側が非常に有利(80:20)です。
リオ側が後3の動きで《ゼウスの粛清》を絡められなかった場合は一応勝負にはなります。
・【赤リオ】vs.【赤ヒメリア】(60:40)
ヒメリア側は黄/青よりは抗い易いですが、先3キルを狙う為には初ターンに《朱い切断》《薔薇の再生》《膨張の愛:2ドロー以上》を要求されているマッチアップになります。
スタンド状態で盤面に居る《プロメテウスの厳愛》のガード値5、《ニケの棄却》のガード値4を超えながら先3キルを狙うのは非常に難しく、先3キルが成立しない場合はもれなく《ゼウスの粛清》が絡んで後3でゲームが終わります。
チャージ時に盤面に居るワークが《ガイアの祈祷》である場合は先3キルの要求は多少下がりますが、3ターンで31点以上を要求される上、《朱い切断》をエナジー加速として扱えないため、このマッチアップは赤リオ側有利(60:40)であると結論づけられました。
・【赤サビル】vs.【赤エーカ】の精査
このマッチアップについては「赤サビル側が非常に有利である」という結論は覆りませんでしたが、エーカ側にも勝ち筋が存在している事が分かりました。
・エーカ側の勝ち筋①:後1キル
【赤サビル】のデッキ内にトラップが無いため、エーカ側の初手に要求札が揃っている上でサビルがレスト状態であるならば後1キルが成立します。
ただし、後1キルの再現性は低い事と後1キルが無かった場合のプレイが弱くなってしまう事から、大会中にサビルを使用する際は後1キルを割り切ってプレイする事にしていました。(スタンド状態にしてターンを返す事で、エーカの後1キルをケアするプレイを行わない)
・エーカ側の勝ち筋②:後2キル
後1からワークを展開したところで赤サビル側はそれらを処理した上で再現性の高い先3キルを通してくるため、赤エーカ側はワンショットを狙わなければなりませんでした。
そのため、赤エーカで赤サビルと戦う際はビートダウンのプランでは無く「後1キルの要求札が揃っていない場合、後攻1ターン目はチャージを行い、手札6枚:インク17の状態で後2キルを狙う」ワンショットのプランの方が勝率を担保出来るのでは無いか?と考えました。
サビル側が半竜の状態でスタンドしてターンを返してくると要求打点が上がる、そもそも更地だとサビル側の先2キルが通りやすい…という問題がありましたが、「後1キルが成立しない際に従来通りのゲームプランを行ってしまい赤サビルにフリーウィンされる状態」からは脱却出来ました。(とは言え大会ではサビルの対エーカ勝率は100%だった様子)
・サビル側の勝ち筋①:普通にゲームする
赤サビル対面について十分な精査を行えていない(ビートダウンプランを取って来る)赤エーカに対しては、順当にゲームを行えば赤サビル側が勝ちます。
こんな感じ。
・サビル側の勝ち筋②:先2キル
エーカ側が後2キルを狙って後1チャージを行った場合、サビル側は先2で「半竜状態でスタンドしてターンを返す」or「リーサルを取る」必要があり、基本的には後者を選択する事になります。
サビル側が後1キルを割り切ってプレイする必要があるのは、ビートダウンに対してきちんと勝ち切るためだけでなく、後2キルを狙うエーカに対して先2キルで返せるようにするためです。
・エーカ側の勝ち筋③:盤面展開
《朱い切断》のパワーが2、《登竜門》《流星群》のパワーが3であるため、ガード4のワークで盤面を固められるとサビル側は《紅の斬撃》でしかダメージを通せなくなります。
半竜状態の効果でニャットを寝かせると《朱い切断》を通せるようになりますが、そのためには《彼岸花》《登竜門》などリソース消費の軽いカードでHEATを溜められている必要があります。
しばく会の3人は赤エーカvs.赤サビルはチャージからのワンショットで勝つ事を目指していましたが、E/PCSでは「ガード4で盤面を固め、断血を2回打って差し切る」形でプレイしている他参加者も存在していました。
・構成選択について
しばく会からは筆者、池粕、大村あたるが参加。
前日調整を始めた地点では3人それぞれが別の構成を持っていく…と言った案も出ていましたが、最終的には3人全員が【赤サビル+赤エーカ】を選択しました。
筆者は調整の帰り道で【赤ヒメリア+赤エーカ】か【赤サビル+赤エーカ】のどちらにするか迷っていました。【赤ヒメリア+赤エーカ】も、赤エーカミラーで後手を取れる上にサビルに対してヒメリアで1勝を拾える点が魅力的でしたが、
上記したいくつかの理由に加え、「やっぱりしばく会全員で同じ構成を持っていく方が"結論感"あってカッコよくね?」と言う心理的な要因から、最終的に【赤サビル+赤エーカ】と心中する事を決断しました。
・当日のシェア
【赤サビル+赤エーカ】が6名、【青ヒメリア+黄リオ】が1名、【赤サビル+青エーカ】が1名となりました。
大会前日地点では3~4人居ると考えていた【ヒメリア+リオ】の使い手がキダさんしか居らず、彼以外の7人は【サビル+エーカ】を使う環境になりました。
参加者全員が「竜魔戦においては【赤サビル+赤エーカ】が勝算の高い構成である」と認識しており、ヒメリアの対魔術師性能への不信/エーカvs.リオの相性などについても概ね同じ様な見解を持っていました。
「ヒメリアを構成に入れるプレイヤーは半数程度存在する」という環境予測は外しましたが、赤エーカミラーについての理解度を上げる練習方針は正しく、大会前日に赤サビルvs.赤エーカについての理解度を上げる事が出来たのも僥倖でした。
以下にお気持ち程度の対戦レポートを記します。試合内容を殆ど覚えていないため、公式からE/PCSの対戦動画が上がり次第加筆/修正を行う予定です。
・1回戦 たみさん(第2回2位)
①赤サビルvs.赤サビル
先1で切断を撃つプレミをするが何とか勝ち。なんか耐えた。
②赤エーカvs.赤サビル
後1チャージから入り先2で負け。
③赤エーカvs.赤エーカ
頭回ってなかったことしか覚えてないが勝ち。
リーサル確定の場面見逃してて悩んでしまい申し訳なかった。
・2回戦 キダさん(第2回優勝)
①赤サビルvs.黄リオ
相手の手札が渋めでドローにインクを割く事になってしまい、泥濘ゼウス構える分のインクが足りず。ポコポコ殴って勝ち。泥濘ゼウス構えられてたら負けてたかもなあ。
②赤エーカvs.黄リオ
アカン覚えてない。動画上がってくれ~
・3回戦 ふらさん(第3回2位)
①赤サビルvs.赤サビル
相手がHEATを溜めてプレイを進めていたため、スタンド状態で切断を弾くのは諦めてプレイを進める。順当に強い動きをされ先3で負け。
②赤サビルvs.赤エーカ
先1で切断+彼岸花:薔薇で5EN1Hの構え。相手がスタンドニャットライプ+断血を絡めて硬い盤面を作り後2キルの圧力をかけてきたため、先2キルないしは盤面を全て返す事を目指してプレイ。
登竜門でHEATを溜めつつ、半竜に進化しニャットを寝かせて切断。盤面を更地にしてチャージを強要し先3キル。1-1
③赤エーカvs.赤エーカ
お互いに激渋ハンドだったが、後手の自分がワーク共通効果でニャットを捲れたためその差で勝ち…みたいな試合だったはず。後攻は全ツッパすれば良いだけから、楽だ……
・決勝戦 池粕(第1回優勝/第2回3位)
①赤サビルvs.赤サビル
相手の動きが先1斬撃→先2斬撃と非常に弱い上、自分が後1切断から入れていたため後2キルを目指す。成立して1勝。
②赤エーカvs.赤サビル
手札にニャットが絡まなかったが、後2キルの芽がかなりありそうな手札だったためチャージ。先2キルを成立され負け。1-1。
③赤エーカvs.赤エーカ
手番選択の権利を持っているため後攻を選択。先1で全展開されたため、後1は全展開で盤面を返す事を目標にプレイ。
盤面を概ね返して先2でチャージされたため、後2キル通して勝ち。
「モノクロームでライプ出したのプレミじゃね?」って後から言われたけど確かにそうかも。相手が先2で動くルートの時にガード4あると安心かな~思たけどチャージされたしレオル2体で良かったらしい。
▼あとがき
E/PCSの対戦レポート雑過ぎてすみません。2回戦以降の全ての試合は録画卓でプレイが出来たので、上がった動画を基に文章を書こうと思っていました。…が、
悠長に記事を書いていたら新拡張のお知らせが出て来てしまったので急いで記事を仕上げています。しかしYUTRIOの二人、あまりにもハチャメチャに忙しそうなので竜魔戦の動画は座して待ちましょう。どちらも楽しみ過ぎて無限に首が伸びてます。俺はタケルライコ……
実はEAT/PAINT自体は初頒布前から試遊会だったりで遊ばせて頂いていました。その時から「結構面白そうだなあ」と思っていて、大会シーズンについてもちゃんと楽しむ事が出来たな…と言うのが感想です。運営の不備も殆ど無くて有難い。プレイヤーファースト最高や。
あと初版の環境は本当にカスだったのでエラッタ入れてくれて本当に良かったです。エラッタカードがあると尚良い。 EAT/PAINT、貴方もやってみてね☝
2ndシーズンも勝ちに行きます!
質問/感想、誤字脱字等あればコメント欄/Twitter(@t4ks_)/Bluesky(@fiontks)にてお待ちしています。ほなまた。