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スケバン刑事主演女優さんにまつわる思ひ出

写真:東映ビデオ『スケバン刑事3部作一挙見Blu-ray』©和田慎二・東映

初代 斉藤由貴  

私はかつて、斉藤由貴さんのファンだった。
ファンクラブにも加入していた。「斉藤由貴友の会」。

しかし1990年、「Moon」というアルバムが発売された頃から、いつの間にか私は、彼女に対する興味を次第に失っていった。
まるで、砂浜から潮がスーッと引いてゆくように。

自分のことなのに自分でも不思議だった。多分あの頃、「Moon」はほんの数回しか聴いていない。
「Moon」発売の直前までは、やれコンサートだ、ドラマだ、映画だ、舞台だ、ニューアルバムだと騒いでいたのに。

理由は今でもホントによくわからない。彼女の何が特別にどうこう、ということはなかったし、他に好きな女性やタレントさんができた訳でもなかった。
無理やり理由を探せば、その頃の彼女が醸し出す世界観が、なんとなーく違う、と感じ始めたような気が……しなくもない。
それはそうなんだが、この理由もかなりこじつけに近い気もするし。
けれど所詮、人の気持ちなんて、そんなふうに移ろいやすく不安定なものなのかもしれない。

ただこれが、相手がアイドルだったからよかったものの、万が一結婚した後で奥さんに対してあんな気持ちになったりしたら……。あな、おそろしや。
幸い、今後もそんな状況には陥らずに済みそうだけど。

その後も「全く」と言っていいほど、斉藤由貴さんに興味は無かった。
結婚したのは、さすがにメディアでもよく取り上げられていたので知ってはいたけれど、子供ができたのは、彼女が自分の出産について本を出版していて、その本を本屋で目にして知った程度だ。
感想はいずれも、「ふーん」で終わり。
それからも映画はもちろん、テレビドラマでも「全く」と言っていいほど目にすることはなかった。

やがて月日は流れ、数年前のある日、たまたまYouTubeに斉藤由貴さんが歌う「卒業」のレコーディング風景を撮影した動画を見付け、ほんと20数年ぶりに斉藤由貴さんの歌をちゃんと聴いた。
「やっぱりこの頃の斉藤由貴は可愛いな」などと思っていると、「街角のスナップ」の動画があるのを見つけた。
曲の題名は覚えていたが、どんな曲だったかは全く覚えていなかった。
ただ、好きな曲だった、という記憶は残っていて、その「街角のスナップ」の動画を何気なくクリックした。

「タッ、タッ、タッ タッタッ」という音が繰り返される。ああ、何か聞き覚えがある。あれ? こんなに長かったっけ。
と、思っていると突如イントロが始まる。「ドン ジャジャジャジャジャジャジャン♪」
そのイントロの音を聞いた瞬間。懐かしさ、というよりも、それを含んだ何だか訳の分からない、色んな感情がどっと頭の中に流れ込んできた。
それを言葉では説明できない。大学生だった、大学の寮に住んでた、斉藤由貴さんの熱心なファンだった頃の、記憶のかけらのようなモノたち。

丁度そのYouTubeの動画を見た頃、「街角のスナップ」の歌詞の内容とは違うが、似たようなシチュエーションにあった私は妙にその曲に惹かれてしまい、そのことをきっかけに20数年ぶりに昔の斉藤由貴さんの曲を改めて聴きたくなった。
「âge」と「Moon」のCDは持っていたので、それ以前の当時カセットテープで聞いていた曲を聴こうと、複数のCDを買い集め、聞きまくることになる。あの「スキャンダル」が起こるまでは。
最初のスキャンダル勃発の時は既に興味を失くしていたので、全くショックを受けずに済んだし、その次のは知りさえもしなかった。
しかし最後の奴はあまり意識はしていないつもりだったはずだが、やはりそれなりに思うものはあったのだろう。
でも、それからだいぶ時間も経ったし、もう何も気にしないで聞いている。

ちなみに、特に私の好きな曲。初期では「雪灯りの街」、中期では「Side Seat」、後期では「終りの気配」。
シングルでは「青空のかけら」、あと「白い炎」かな。どちらもちょっとした振り付けがある。「青空のかけら」はそれが何とも可愛いらしいし、「白い炎」は、そこはかとなく色っぽいのである。
「Moon」より後の曲は聞く気になれない。思い入れ、というよりそれらの曲についての思い出がないからだろうか。

などと思っていたらつい最近、「なぜ」という曲を初めて聴いた。ちょっと鳥肌が立ってしまった。斉藤由貴ってこんなにシンプルで、なおかつ切ない歌詞が書ける人だったのかと、改めて感心した。現時点では彼女の曲の中で、私はこの「なぜ」が一番好きである。


スケバン刑事の現代版というような小説もどきを書いてみたが、そもそもスケバン刑事放映時は、斉藤由貴さんのファンという訳ではなかった。
初回から見ていたかも、よく覚えていない。「てめえら、許せねえ!」というセリフは、確かに自分の周りでは流行っていた。
もちろん「青春という名のラーメン」のCMで、初めてブラウン管に現れた時はちょっとした衝撃だったし、ずっと可愛い人だとは思っていたが、その頃の色んな可愛いタレントさんのうちの1人、という感じ。

やがて「スケバン刑事」放映終了から約1年後、「はね駒」の放送が終わった後かな? 自分が通う大学の学園祭で知り合いが何かの企画をやっていて、一応そこに顔を出した。けれど後は特にやることもなく、暇だなあと思っていたところ、映画研究会かなにかが、ちょうど斉藤由貴さん主演の映画「雪の断章」を上映していて、たまたまそれを見た。
そこでの「雪の断章」のあるシーン、一人で川の中を歩いているシーンでのあまりの由貴さんの可愛さに、ものすごく心を惹かれてしまった。
単なる可愛いらしさとは違う、何か「ほっとけなさ」みたいなもの。
そんな気持ちにさせられたアイドルは、彼女が初めてだった。
(この間、数十年ぶりに「雪の断章」を見ました。やっぱりあんな女の子がもし自分の身近にいたら、絶対、惚れるわ)

聞けば、由貴さんは何かと理由を付けて、よく学校を休む人だったらしい。
そういえば中学2年の時の、私の初恋の相手だった女の子も、よく学校を休む子だった。俺ってそういう人に弱いのかも。

そうして私はついに、アイドルのいわゆる「ファン」というものになってしまったのである。
それまでも好きなアイドルという人は、いたのはいたのだが、余り長続きはしなかったし、ファンと名乗るほど入れ込んでもいなかった。
でも斉藤由貴さんは違った。出るテレビ番組は録画しまくり、映画も見まくり、知り合いからカセットテープに曲を録音させてもらって聴きまくった。コンサートにも行ったし、舞台も見に行った。「レ・ミゼラブル」は当時の貧乏学生にとって、チケット代が高くて行けなかったけど。
ただ、彼女はこの頃から芸能活動の軸足を、アイドルから女優へ移していくのだけどね。

今思うと、あんなに夢中になれたアイドルは、彼女が最初で最後。
そして、デビューしてから数年までの、当時の斉藤由貴さんより可愛い、いや、「美しい」と思えるタレントさんを私は知らない。
なにより私にとって、その「美しい」表情を最も多く見ることができる作品が「スケバン刑事」なのだ。
「可愛い」斉藤由貴さんや、「綺麗な」斉藤由貴さんは他の作品でも見ることができる。
ただスケバン刑事での海槌三姉妹や他の捜査対象、時には神恭一郎を「キッ」と見据える表情の「美しさ」は、もう世界一だと、私は個人的に勝手に思っている。


二代目 南野陽子

スケバン刑事Ⅱの主役が南野陽子さんに決まったと聞いた時、確かまだデビューしたばっかりの子だよな、大丈夫なのか? と思ったことを覚えている。
斉藤由貴さんの麻宮サキ役は凄くよかったし、Ⅱ初回の放送時、南野陽子さんには期待と不安、どちらかというと不安の方が大きかったような気がする。
だが、いやはやどうして、2話目・3話目あたりからもう堂々とした、麻宮サキっぷりを演じてくれていた。その早い段階から、自分の中では麻宮サキ=斉藤由貴のイメージはほとんどなくなっていたような気がする。
(1話目はどちらかと言うと、ポカーン? という感じ。何? 鉄仮面って。それも子供の頃からずっとかぶってたなんて、ありえんやろ? と)

ⅡのⅠとはまた違う物語の展開はかなり面白く、最終回までずっと見続けることになった。
南野陽子さんも、相楽ハル子さんも、吉沢秋絵さんもみんなそれぞれに可愛かったなあ。
どちらかというと、あまりスケバンっぽくない南野陽子さんを、「スケバン」というイメージの面でフォローしていたとも思える相楽ハル子さん。かなり殺伐とした物語に、どこかほんわかした吉沢秋絵さんが加わることで、殺伐感をずいぶんと和らげていた気がする。良くバランスが取れた、いいトリオだったと思う。
改めて、スケバン刑事Ⅱを見て印象的に思うのが、南野陽子さんの瞳の美しさだ。
たしか影の総統のセリフにもあるのだが、ホントに美しい。そしてやはり初代と同様に、敵をキッと見据える目付き。ああ、美しい。

やがて約1年間の放映後、ついに最終回を迎える時はなんとも寂しかったが、「まだだ。まだ我々には劇場版がある」と多少の余裕はあった。
話は逸れるが劇場版「スケバン刑事」で、ある意味特に印象に残っているシーンが、英国への留学のため空港へ向かう雪乃さんの前にお京さんが立ちはだかるシーン。あれはグッと来たねえ。

スケバン刑事Ⅱをリアルタイムで見ていた頃、なぜか「さよならのめまい」にしろ「悲しみモニュメント」にしろ、あまりいい曲とは思わなかった。
主役なんだから、もっといい曲をもらえばいいのに、と。
エンディング曲が「風のマドリガル」になって、やっといい曲をもらったね、と思ったのを覚えている。
今聞くと、それぞれみんないい曲だとわかるし、今では物凄く大好きな曲だけど、やはり「風のマドリガル」は特別にいい曲。あのスケール感はたまらない。

それよりも、さらにいい曲だと思うのが「楽園のDoor」だ。
この曲は現時点で私が勝手に思う、いわゆるアイドルポップスの中の3大名曲の1つである。
(あとの2つは、薬師丸ひろ子さんの「Woman “Wの悲劇”より」と、松田聖子さんの「ガラスの林檎」)

もう何十回と聴いているはずなのに、あのイントロが鳴りだした途端、胸の奥がざわざわとし始める。
まさに歌詞、メロディー、アレンジ、ボーカルの声、歌い方、それに振り付け、さらにメーテル風の衣装と、どれも完璧。どこにも文句を付けるところがない。
人によっては確かに名曲だけど、歌い手によらず後世に残すべき曲という意見もあるが、私としてはやはり、南野陽子さんのあのボーカルあってこその名曲だと思う。
もちろん彼女より「上手」に歌える歌手はそれなりにいるとは思うが、「楽園のDoor」の世界観を、歌い手として最も上手く表現出来るのは「あの時期の南野陽子」だけだと思う。すでに幼い少女とも言えず、まだ大人の女とも言いきれないあの頃の。
さらに私のように、わざわざ映画館に行って映画のエンディングで「楽園のDoor」を聴いた者に取っては、思い入れも特別なものがある。
そう。もうこれで、麻宮サキとしての南野陽子さんには会えないのだ、との感傷に浸りながら映画館で聴いていた者にとっては。

2020年の7月頃から、南野陽子さんの事がやたら気になりだしたのは、YouTubeで、ある動画を見たのがきっかけだった。
多分彼女のファンの人が作った、浜辺を歩く南野陽子さんの映像に、来生たかおさんの曲を合わせた動画である。
その曲と映像がなんともピッタリで、南野陽子さんの笑顔がなんとも素敵で、最後に映像がフェイドアウトする寸前の彼女の表情が、なんとも言えなくて。
繰り返し、何度も見てしまった。
その後、南野陽子さんの他の動画を見漁り、シングル集を始めCDをいくつか買い求め、「月夜のくしゃみ」という本を中古で手に入れた。
もちろん当時から好きなタレントさんではあったのだけど、「楽園のDoor」の次のシングル「話しかけたかった」が、当時はちょっと残念、という感じだった。
「楽園のDoor」が何というか少女から大人への旅立ち、みたいな感じの曲と受け止めていた自分にとって、「話しかけたかった」は少女に逆戻りというか、デビュー直後ならともかく、今この曲かい、と思ってしまい、それからちょっとずつ興味を失っていった記憶がある。
でも「話しかけたかった」で、オリコンでもザ・ベストテンでも1位を獲得した訳で、彼女の選択に間違いはなかった訳だし、今聞けばすごくいい曲だと思うけどね。

でも思えばこの年になって、またスケバン刑事にハマってしまったのも、元はと言えば再び南野陽子さんに興味を持ち始めたせいだとも言える訳で、あの浜辺を歩く南野陽子さんの動画をクリックしなければ、あの小説も生まれなかったのだと思うと、何とも感慨深い。


三代目 浅香唯

浅香唯さんの麻宮サキは何というか、可愛いことは可愛いのだけど、何にしろどうにも子供っぽい、という印象が強かった気がする。
スケバン刑事Ⅲのストーリーもちょっと分かりにくいし、スケバン刑事的要素に欠けるというか、風間唯が学生刑事「麻宮サキ」である必然性がどこまであるのか。
元々番外編の『スケバン忍法帖』として企画されたものらしいので、仕方がないといえばないのだけれど、当時はあまり入れ込まなかった気がする。浅香唯さん自体の素材はいいのに、何だかもったいない、と思っていた記憶がある。
でも最終回までちゃんと見たけどね。ただ、あの終わり方はないやろ的な感想は持った気がする。結局、その後の劇場版は見に行かなかった。

浅香唯さんに関してはスケバン刑事Ⅲの後の「C-Girl」や「セシル」を歌う、歌手としての印象の方が強かった。
「C-Girl」を歌う浅香唯さんは、いかにもはつらつとしていて、「やったね!」と、思った記憶がある。
なかでも「セシル」という曲は、特別に印象深い。
当時夏休み中のバイト先で、現場へ向かう時に乗せてもらった軽トラックのラジオから頻繁に流れていて、その軽トラの助手席でよく聴いていた「セシル」。
あの曲を聴いて、心を動かされなかった当時の年頃の野郎どもが、果たして何人いただろうか。それぐらい私の心を揺さぶった名曲である。
後からというか割と最近、その当時、今の旦那さんと恋に落ちていたと聞いて、なるほどねと思った。そりゃあんだけ情感たっぷりに歌えちゃうよね。

スケバン刑事Ⅲを改めて見てみると、やはり浅香唯さん可愛いやん。
じっちゃんに池に突き落とされて、じっちゃんをじっと見る目。
かわいいー。
それにⅢのエンディングでの、やはり目をキッと見据える表情。いいねえ。

その後、もう一度ストーリーを見ていて思い出したのが、当時は主役の浅香唯さんより大西結花さんが好きだったこと。長女役ということもあって、ちょっと大人びた雰囲気が良かったのかもしれない。元々映画『台風クラブ』を見た時から、気になる人ではあったのだ。
中村由真さんも可愛かったけど、役に似合わず(?)幼い感じがしてた記憶がある。実は三人の中では一番年下なのよね。

そして浅香唯さんが歌う、映画「スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲」の主題歌「Believe Again」は、上で述べた私が書いた小説のエンディングにわざわざ歌詞をのっけたほど、私が大好きな曲である。(現在は削除済)

その小説を書くにあたって、また全部見てみたいと思ったけれど、DVDを買うにはちと高いなと思い、なかなか手を出せずにいた。レンタルという手もあったけど、何だかめんどくさくて、そのままでいた。
でも今では、月500円ぐらい払えば、インターネットでⅠ・Ⅱ・Ⅲ全て見ることができるという。
いい時代になった、と言うべきなのか。

最後に、TVシリーズのスケバン刑事主演女優さん、斉藤由貴さん、南野陽子さん、浅香唯さん三名に、改めて心から感謝申し上げます。




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三日月 秋
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。