【読書】 村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
桜が満開で、皆が花見とかに出かけているというのに、この二日間、家から一歩も出ず、床にへばりついて廃人みたいに過ごしました。
(この読書メモは、2016年4月に書いたものです)
原因は、先日会社帰りに道端の古本屋でコイン2枚と引き換えに手に入れたわりと安いハードカバー。何の気なしに手にした本の予想外の吸引力で休日のやりたいことリストを台無しにすることがごくたまにあるのですが、最近は少なかったので油断していました。
別にハルキストというわけじゃないぼくがこうなのだから、やっぱりこの作家には少し気をつけた方がいい。
意味があるのか無いのか分からないにも関わらず、文章の断片に心をつかまれたりします。そして「意味」を探して、ともかくページを進めるしかない。なんだか中毒性のある、やばい吸引力です。そう言えば『海辺のカフカ』のときも似た感覚でした。
── 「省察を生むのは痛みです。年齢ではなく、ましてや髭でもありません」
── 「なあ、こういうのって大いなるパラドックスだと思わないか?おれたちは人生の過程で真の自分を少しずつ発見していく。そして発見すればするほど自分を喪失していく」
やれやれ。
月曜日が始まる前に読み終わって良かった。これでやっと社会復帰できる。
(2016/4/3 記、2024/10/20 改稿)
村上春樹『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』文藝春秋(2013年4月)
ISBN-13 978-4163821108
ISBN-10 4163821104