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【読書】ダーグ・ソールスター『NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン』

「自分が今求めているのは、人生にはまったく救いがないことを示しつつ、ユーモアのかけら(ブラックであれ、何であれ)も見受けられない小説なのだ──」

作中の登場人物のセリフですが、そのままこの本のイメージに当てはまります。なるほど、これが作者の狙いかとなんとなく納得。

それにしても、ほとんど日常から逸脱しない、しかも不愉快な現実を題材にして、これほど一気に読ませる物語が書けるものなのかと、その点は本当に舌をまきました。

村上春樹さんは訳者あとがきで、「乾いたシニシズムを含んだその独特の作風と、いくぶん風変わりなユーモアの感覚によって、ノルウェイのみならず、世界的にも幅広い読者を獲得するようになった」と著者ダーグ・ソールスターを紹介しています。

さらにその作風については、「この人の文章には心理分析というものがほとんど見当たらない。(中略)描写はただの描写として唐突に終わっていて、『だからどうだ』という展開が極度に乏しい。(中略)それが読者にシュールレアリスティックな『突き放し感』を与えることになる」とのこと。

さすが村上春樹さん。的を射ている気がします。ぼくが説明しようと思ったら「この本は著者がなにを言いたいのかよくわからなかったけど、おもしろかった」としか書けません。

本書はまったくファンタジーのない世界をひたすら淡々と描いた物語ですが、にもかかわらず展開はいつも予想外で、読み終えるまで飽きることがありませんでした。ですが一番驚かされたのは、これに続編があるということです。これ以上、いったいどんな展開があると言うのだろう。ぜひ読んでみたいのですが、今のところ(少なくとも2015年の3月時点では)ノルウェー語版しかないようです。

(2016/6/18 記、2023/12/13 改稿)


ダーグ・ソールスター『NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン』中央公論新社(2015/4/9)
ISBN-10 4120047121
ISBN-13 978-4120047121

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