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【読書】アゴタ・クリストフ『昨日』

アゴタ・クリストフは、ハンガリー出身の女流作家です。

ハンガリー動乱(1956年)のときに西側に亡命し、のちにスイスに定住。生計のため、執筆は母国語ではなく定住先で使われるフランス語で行いました。7月に75歳で亡くなったそうです(※)。

以前、同作家の『悪童日記』三部作を読んで衝撃を受けました。陰鬱で辛辣な文章。虚実入り混じって、読者に立ち位置を見失わせるような物語。そんな作風は、本作『昨日』でも健在で、印象的な文章に数多く出会いました。

たとえば、作中のこんな会話 ──

「あんたがた外国人ときたら、年がら年中花輪のための金集めをやってる。年がら年中葬式をやってる」
「わたしらなりに楽しんでるのさ」

それから、こんな表現 ──

夜、彼らは自分の家の扉に二重の鍵をかけ、辛抱強く人生が過ぎ去るのを待つ

全てが走馬灯の中の出来事であるかのような足元の危うさ、作品全体が持つ暗い浮遊感は、母国を出て、亡命先で異邦人として生きた半生があってこそ生み出されたような気がします。

ハンガリーは東欧の中でも民族的に東洋に近いと何かで読んだことがあります。だから「姓名」の順序で人名を記すし、心に響く音楽のタイプも日本人と似ているのだとか。

文学もまた然りでしょうか。

何で読んだんだっけな。小栗左多里さんのマンガだったかな……

※ アゴタ・クリストフの没年は2011年です(この文章は、2011年に書きました)。

(2011/9/19 記、2023/12/18 改稿)

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アゴタ・クリストフ『昨日』早川書房(2006/5/15)
ISBN-10 ‎4151200355
ISBN-13 ‎978-4151200359

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