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vol.151「無償だとモチベーションが保てる現象への説明。『じゃあ、先生にくんか』」

無償(ボランティア)だと頑張れて、報酬が出ると加減をしてしまう、という現象があります。
説明を考えてみました。

◆自分につく「値札」の决めかた。

所属している主たるコミュニティ、たとえば会社の、外の世界で勉強する。
目的は ①自分の時給を、自分で決定できる人間になること、かつ②現在の仕事に役立て、貢献できることです。
つまり、異質さは確保したい、無駄はなるべくなくしたい。ある意味ずいぶん虫の良いことを考えていることになります。

最終的には「自分の値段を高くつけたい」。そのためには「結論が出るまでは安易に値段を決めない」が重要だと思っています。一度ついた「値札」(相場感)を書き換えるのは、かなりエネルギーが要りそうだと想像しているからです。だから、何かのお手伝いをしててFeeの打診をされたとき、「いまはタダでいいです」と答えていました。

◆「分母がゼロだと割り算できないから」説。

この「無償で引き受ける」には強力なメリットがある。「モチベーションが高く保たれる効果」
仮に「労力÷得られる報酬」でその意味性を算出するとしたら、「無償」の場合は分母がゼロ。割り算ができない。正規化ができない。だからかえって頑張れる、と仮定している。

逆に、無償のうちはうまく行ってて、本来プラス材料のはずの報酬を設定したらうまく行かなくなって破綻した、という事象は、そこかしこで時々起こっていると思う。

ボランティア(volunteer、無償で自由意志で応募するが、結果成果を期待される)であることで、薄まらず品質が保たれる。
意欲が高いまま・勝手に創意工夫する・能動的に動く・改善や新しい企画を提案する、という経験は、これまでに何度か味わっている。わかりやすい例が、学生のときの文化祭だ。

なのに、「バイト代、いくら出すよ」となると、質的な伸びがとたんに止まる。「報酬●●円なら、このぐらいの働きだろう」といったさじ加減や、「これは私の仕事ですか?」「もっと給料もらってる人がいますよね」などの疑問(雑音)が生まれるからだ。

◆じゃあ、先生にくんか。

このテーマ「無償でしてもらっていたのを、代金を払うと言った途端にギクシャクした」を扱った短編小説が、中学か高校かの国語の教科書に出ていた。

・主人公(遠方から引っ越してきた、職業=教師だったと記憶)が、子どもたちから川魚をもらう
・「代金を払うよ」と言ったら毎日持ってくるようになった
・困った末に「もう買わないよ」と伝えたら、「じゃあこの魚、先生にくんか」と言われた。「くんか」とはこの地方の方言で「差し上げよう」といった最高級の敬語である。

作品名ないし著者名が思い出せず、ググってもなかなか出てこず。数年来の、ちょっとした、自分の中の持ち越し宿題だった。

それが、あるとき判明。たまたま読んでた本のなかで引用されていたからだ。山本周五郎『青べか物語』の中の一節だ。

...私はきっぱりと鮒の買取りを拒絶した。するとそこに、まったく予想しない事が起こって、私をおどろかせた。

私に拒絶されて、少年たちは明らかに失望し、途方にくれた。かれらは顔を見交わし、先生が駆引しているのではないかと疑い、そうでないことを認めるともっと失望し、どうしたものかというふうに、それぞれの手にした器物の中の鮒を見まもった。

「みんな」と長が急に云った、「それじゃあこれ先生にくんか」
くんかとは、贈呈しようか、というほどの意味である。途方にくれ、落胆していた少年たちの顔に突然、生気がよみがえった。それは囚れの繩を解かれたような、妄執がおちたような、その他もろもろの羈絆を脱したような、すがすがしく濁りのない顔に返った。

山本周五郎『青べか物語』より抜粋

楽なお金儲けに味をしめた少年たちが、断られると戸惑い、失望し、途方にくれる。途方にくれて、解決策を見出し、すっきりするオチが愉しい。「先生が駆引しているのではないかと疑い」、もリアルだ。
辞書で確認してみると、羈絆は「きはん」。「羈」も「絆」もつなぎとめること。行動する時の足手まといになること、とある。

山本周五郎『青べか物語』(青空文庫)https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57574_63587.html


「コスト対効果」と定義すると「得られる報酬÷労力」なのだろうけど、その逆数で測れることがある、という仮説です(感覚的なものです)。もうすこし整理してみます。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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