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vol.177「プロフェッショナルとは何か:人を釣りあげる名人、コアマン社 泉裕文さん【後編】」

惜しげもなく開示する、フラットに接する/ステージ上と降りたあとで態度が変わらない、人の悪口を言わない(興味がない)、精神論を問わない、は、分野を超えて、好きになる先生の共通点です。

後編ではビジネスパーソンとして、経営者としての泉さんの側面を書き出してみます。


◆リーダーとは「見せられる人」。(2017年3月)

泉さんのイベント「コアマンカフェ」が、自宅最寄りの釣具店(※)にやってくることを知り、覗いてきました。
(※東京在住当時。自転車で2分くらいの距離。神戸本社→年数回 各地でイベント、なので奇跡に近い確率)

泉さんは話が上手、かつ話をよく聴かれるから、ファンの方が次々に並んで話し込みます。夕方、終了時刻ちかくになり、ようやく空(す)いて来たので、いろいろ話すことができました。

企業秘密に類することや、まだ未リリースと思われる内容は省き、感じたことを、メモにまとめておきます。

①リーダーとは、「変化できる人」である。
一定の成功をしていて、かつ変わり続ける人の共通点に
「(しばしば、非常に)自己分析的、内省的」
というのがあります。

・過去の失敗を消化して、棚卸している
・自分の特徴、欠点を他者に説明できる
・他の人に興味が無い=悪口を言わない

大人になって以降、「成長する」は、ほぼ「変われる」と同義語です。
変われる人が、消えずに伸びるのだと思います。

②リーダーとは、「やめられる人」である。
人の上に立つ人間の重要な役割(機能)に、「決める」と「やめる」があります。
「一度はじめたことを、やめる」は、単純なようできわめて難しいことです。仮説を立てて、自信を持って立ち上げた企画、仕事、プランを、取り止める。縮小する。
「中止・退却の命令を出せるのが、優れた指揮官」と言っても良い。

③リーダーとは、「見せられる人」である。
「これは有意義なミッションだ」「重要な仕事だ、頑張ってくれ」では、人はついてこない。
言葉だけでは『見透かされている』と思ってまちがいない。自分以外の人、特に“部下”や“後輩”。こちらが思っているより、ずっと賢いのです。

・営業マネージャーなら、お客さま先に行って、部下の見ている前で、頭を下げる
・部門の責任者なら、上層部なり他の部門へ掛け合って、リソースを調達してくる
・経営者なら、自分の時間を割くか、人員を投入するか、お金をかけて買ってくる

つまり、目にみえる形で「見せる」ということ。

月並みだけど、「見せる」が、すなわち「魅せる」のだということです。
釣りの話が1割。仕事観の話が9割。有意義な時間でした。
これまでに5回お会いして、いちばん濃かったと思う。

泉さん、長時間、相手をしてくださり、ありがとうございました。


コアマンカフェ。

◆「当てられる人」になろう。(2017年11月)

その年の晩秋、やはり都内の釣具店で開催されたイベント(複数のメーカーがショップを出す大掛かりなもの)に行ってきました。
会場内に入るところで、肩をたたかれれた。振り返ると泉さんです。

「今からトークショーで舞台に上がるので、その間ゆっくり見ていってください!」
泉さんとRED中村さんのトークセッションです。

観客席に座って聴講していると、泉さんから当てられた。
泉「このルアー、使ったことあります?」
山「ないです!使ってみます!」
泉「ありがとうございます!」

しばらく対談が進むと、また泉さんから当てられた。
泉「RJのRって何の略かわかります?」
山「ローリングジグヘッドですか?」
泉「正解です!」

立ち見のお客さんも含めると30名くらいでしょうか。
仮に25名として、観客席への質問2回に当たる確率は、単純計算すると625分の1。もちろん偶然ではあり得ません。(観客を当てたのはこの2回だけ)

セミナーや講演で、壇上の人が観客を当てる(質問等を振る)とき、ランダムに当てる場合と、選択的に当てる場合があります。
後者、選ぶ場合の基準は、「0点ではないコメントを、とにかくちゃんと返しそうな人」です。

野球に例えると、「ストライクゾーン内に投げそうな人」ないし「キャッチャーが取れる範囲内に投げそうな人」。球速やキレは、アマチュアレベルでよくて、「投げ返してきそうな相手」に当てる。

泉さんが私を選んだのは(ご本人に確認してないので推測)過去の接触から、「良識的な・前向きなことを言いそうだ」と判断したから。別の言い方をするなら、「場に協力するだろう」という期待値があった。信用ポイントを積んでいた。

この「信用ポイントを積んでおく」「信用できそうな印象を与える」というアプローチは、釣りのショーに限らず、分野を問わず、効果があります。(「好かれるかどうか」「善い人かどうか」とは必ずしも相関しない)機会があればおためしください。

舞台から戻って来た泉さんに、2017シーズンの実績報告と、2、3の質問。
話していて毎回思うのは、どんな質問にも即答されること。または、即、逆質問がくる(例:詳しいシチュエーションを確認する)こと。
これも分野を問わず、"その道の一級のプロ"に共通する事項です。

即答できる理由は2つ、
①レベルの差で、即答できる。
②「即答する」と決めている。

からだと考えています。

帰りに立ち寄った隅田川で、教わったことを試したら、すぐに結果が出ました。トッププロのアドバイスは、素直に実践すると確実に効果があります。


帰り道にアドバイスを試すとすぐ釣れた。

◆悪口を言わない人。(2018年4月のメモ)

泉さんの、もうひとつ好きなところ。
ルアーメーカーとしての探求・品質。釣りのスキル・知識の精度。科学として検証するスタイル。惜しげなく教える方針。謙虚、気さくな態度。
これらに加えて、他者(他社)の陰口、ゴシップを言わない。

強力なライバル、評判のたかい同業者の話題が出たとき、微妙に陰口を言う人っているものです。さりげないつもりで、懸命に同業者の悪評を吹き込もうとする。こちらが会ったことのない、またはこれから会う人物の悪口を、先回りして知らせようとする。
実際にはほぼ100%意図とは逆の効果を生む。言っている側の評価が下がります。言うなら「自社(自身)の良いところを」「具体的な根拠を示して」言うほうが有利だと思います。

<おすすめ情報2>
コアマン社のルアーはさらに本気でおすすめ。湾奥・河川のシーバスはこれだけで事足ります。

東京湾奥釣り実験で、コアマン社のルアーはRapala※のカウントダウンシリーズと互角でした。(2016 CD9 31匹 vs IP-13 15匹→2017 CD9 19匹 vs IP-13 24匹)

2017シーズンはIP-13(緑)がRapala(赤/ピンク)を逆転。

あるとき「同じ河の同じ岸際コースを、行き:Rapala※、帰り:コアマン で通して、「実証実験」してみました。結果はコアマンに軍配です。
ルアーは「はじめて通したときが確率最大。2回めは慣れてしまう」という大原則があり、「後攻で勝つ」ということは圧勝を意味します。
「昼間の東京湾奥の、濁った夏の河川」というシチュエーションでは、「世界一のルアー」と言っていいと思います。

※Rapala・・・フィンランド本社の世界的に有名な名作。車の世界でいえばワーゲンビートルかローバーミニ。


Rapala CD7 と コアマンIP-13

◆カッコつけない人。(2023.9)

大阪から福岡に転勤して、「もう当面お会いできる機会もないだろうな」と漠然と考えながら同社の公式サイトを見たら、福岡市内の釣具屋さんにイベントでこられるとの情報をキャッチ。行ってきました。

Tシャツにハーフパンツにサンダルにキャップ。オール黒。髪はぽさぽさ、肌は日焼け。歳を重ねて、着飾らず、ラフな格好をする、というのが泉さんの面白いところです。
※釣りメーカーのオーナーであり、ご自身も釣りのトッププロ=屋外のプロ、というブランドと合致してこそのことだと思います。

以前と同じように、周囲にはすでにファンの方が入れ替わり立ち替わり話をしに来ている。九州にはそうそう来られないから、誰にとっても一言話すチャンスなのです。
広い店内の遠くから様子をうかがうと、こちらに気づかれ「おや?」とおどけたポーズで、ニヤリと会釈されました。
空いてきたのを見計らってご挨拶に。近況を報告し、記念の2ショット撮影をしていただきました【写真右下】。

人柄は変わらない。やっていることは進化している。
これも業界を超えて、一流のプロの共通点だと、あらためて思いました。


似たような格好をしてることに気づく。

過去写真を整理確認してると、服装の色み・形がけっこう一致していることに気づく(白シャツ、青系フード、黒T)。もちろん偶然です。

泉さんの、飾らず、しかし多くの人に信頼される。あの雰囲気を真似て近づきたい。そういう質感を備えたい、と思えてくる。
シーバスを釣るトッププロだけど、同時に人を釣りあげる名人でもある。釣られたいちファンの独語でした。

最後までお読みくださりありがとうございます。


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