vol.100「せんせい おかげで生きとられるわ:『誠実なプロ』の条件 「できない」「わからない」と言いきること」
NHK総合『せんせい!おかげで生きとられるわ』、観ました。すくなからず衝撃を受け、直後の感想としてメモ書き残してみます。
舞台は三重県熊野市二木島町、町民200人のうち7割が65歳以上の超高齢化地域(同サイトより)。地区で唯一の診療所の医師と、高齢の患者さんたちに取材し続けた映像記録番組です。
◆「誠実なプロ」とはなにか。
いちばん衝撃を受けたくだり。
患者さん(高齢の女性)の容態が悪化。今日か明日か という場面。
「私にできることは何もない。家族で見送ったってください」
「人が、おだやかに人生をまっとうするにはどうしたらいいですか」
「わからん。僕にはわからん」
「プロの条件とは」と問われたら、いろいろ挙げられると思う。
専門性、高い技術、知識、経験値、希少価値、結果成果、成功率―。
その中で、「誠実なプロ」の条件、と言われたら、
「できないことはできないと顧客に伝える」(言いにくいことを言える)
「わからないことを『わからない』と言う」(無知の知)
なのだ。
録画再生で巻き戻して、何度か見直し、聴き直した。
衝撃で、一晩明けた今朝もいろいろ考えています。
引用からの「考えたこと」は以上です。
素晴らしいのはドクター(平谷先生)であり番組製作チームなので、内容全体を詳しく触れるのは(がまんして)省略します。ぜひご覧になってください。
◆「老いる」ということ。
診療所そのものがないという隣町も含めて、お年寄り、老人がほとんど。
90代、100歳代の要介護者を、70代の介護者が見る。平谷医師ご自身も奥様をご自宅で介護している(老々介護)。
介護、老いは、テレビドラマで描かれるような感動的なものではなく、単調で退屈で、回復の見通しは立たず、いわば"ゆっくりと絶望"していくものだ。誤解をおそれずあえて言うなら、"みにくく、汚い"ものだ。
子どもの頃、祖父や曾祖母の長期入院先のお見舞いの時間が苦手だった。匂い、あの空間の雰囲気、老いるということ(死)を感じ取って、嫌悪・忌避していたのだと思う。
人間は皆ひとしく、生まれた瞬間が光輝いていて、そこから何年か何十年先かは分からないまま、終着点にむかって老いていく生き物だ、とも思える。
母が一昨年に亡くなり、後期高齢者の父が、今のところそこそこ元気で生きているけど、遠くないうちに必ずやってくる。備えを、「今日明日は大丈夫だ」と思わずに行おうと、考えさせられました。
※自分への備忘で書いています。
◆「地方局製作番組」の魅力。
今回の番組はNHK三重局の製作だと思います(注釈など見当たらず、要確認。もしくは小規模な企画製作会社かもしれない)。NHKならではの、地味で基礎的な取材力があること。取材側の発言が少ないこと(※)。過剰な編集や感動の演出がない(少ない)こと。
エンドロールによると一人担当者(カメラ1台)で取材して作られたようです。NHKの、地方局製作のドキュメントは学ばされる、衝撃を受けるものが多い。一つの番組を作るのに時間をかけられる、CMが入らないことも後押ししているのだろうと思います。
※取材側の発言・・・
一方で、全国版(本局)の製作番組では、演出や編集、取材側の発言も増えてくる。
宮崎駿監督の同行取材(『プロフェッショナル 仕事の流儀』だったと記憶)で、取材者が「いまどんなお気持ちですか」と質問して、「君はこんなときにそんなことを聴くのか!(くだらない!)」と一喝されるくだりがあった。とっさに「黙っていればいいのにな」と思った場面でした。
ある分野のプロに対して「お気持ちをお聞かせください」は、分野に依存しない抽象質問であって、「取材している=情報を引き出している」とは言い難い、と思う。だけど「視聴者の多くがそれを求められているから」だとも言える。「メディアのレベルは、視聴者のレベル」の鉄則が成立するから、自身に置き換えて、自分のできることをやろう。
「沈黙」の効果と難しさについては、別途記事に書く予定です。
できないこと、わからないことをわきまえる。ときに口を閉じて、黙る。
非常に大切なこと、そして難しいことでもあります。
最後までお読みくださりありがとうございます。
【6/3 22:40追記】この記事を読んでくださった、とある方から個別のメッセージを頂きました。詳細をここで紹介するのは避けますが、びっくりするような、非常に嬉しい内容でした。「インプットとアウトプット、自分の意見を発信するものだなぁ」と、意を強くした次第です。
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