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vol.019「話し方:永久に苦手なこと~『事実』と『抽象化』にこだわりながら、とにかく練習をする」


「自分の意見を発信して、フィードバックをもらうこと」の続きで、いちばん基本的な、「話す」と「聴く」について。
どちらを先にするか、すこし迷って、「話す」について整理してみます。
 



1.永久に苦手なテーマ「話し方」

 
いつ頃のことか、はっきり思い出せないけど、とにかく
「自分はプレゼン(話すこと)が下手くそなのだ」
と気づかされた。
 
「話が上手か下手か」は、流暢(りゅうちょう)に話せるかどうか、多弁か朴訥かは、いっさい関係がなくて、『伝わるかどうか』で決まる。
私は、伝えるのが、超絶にへたくそ。「話が長い」「重複が多い」「脱線が多い」の三重苦だ。
 
二十代ぐらいまで、自分ではそこそこ上手、すくなくとも苦手ではない。苦にしていなかった。
評価するものさしを持ってなかったこと、「聴き手にはどう聴こえるか」の視点が足りなかったこと、フィードバックを受け取る仕組みを持ってなかった(そもそも意識してなかった)ことが原因だ。
「知らない恐さ」の典型的な、教科書に載せて良いぐらいの事例だと、いまではわかる。
 

◆これまでに試したこと

 
仕事をするかぎり、生きていく以上は、「苦手だから話しません」というわけにいかない。怪我や病気と違って、時間が経てば良くなるものではないから、あれやこれや、あがいて対策を講じようとする。
 
これまでに試したことを書き出してみる。
 
読む。プレゼン技術の書籍を読む。関連メルマガを購読する。 
聴く。Youtubeや音声メディアで著名人、プロの話し方を聴く。
メモを取る。講師の話をメモする。参加者の発言もメモする。取り入れられそうな言い回しを探す。
再加工する。メモした内容を概要にまとめる。議事録を書いてシェアする。
教わる。話し方講座に参加する。高額のプレゼン研修を受ける。
練習する。SNSに1日1回投稿する。ひと知れずブログを書く。
紙に書く。書いたものを人目につく所にさらす。自分の言葉で書いて、人に渡す。
話す。「質疑タイム」は自動的に手を挙げる。予定にない陪席であっても発言する。
準備する。話す前に箇条書きで原稿を書く。話しながら条線で消し込んでいく。
スキマ時間を使う。通勤や移動時間に聴く。一人のとき口の中でぶつぶつ言う。
 
整理すると、
(1) 自分より賢い人から仕入れる
(2) 真似ながら実地で訓練を積む
(3) 強制的に恥をかく状況を作る

の三つに集約できる。
入力→出力→フィードバックの環境を持つ、の順番だ。システムでいうと制御系を構築する、ということだ。
 

◆試した結果、確からしい対策


出来ているかは別にして、間違いなさそうなものを挙げてみる。
 
①型をつくる
・結論をさきに言う
・一文(句読点の。から。まで)を短くする
・情緒的になりすぎない
 
②中身を整える
・数値=定量的な事実がある
・背景=理由、目的を説明する
 
③事実を話す
・事実をベースに組み立てる
・感情を入れたいときは、事実と主観を分ける
 
④短く話す
・思っている「妥当な長さ」の3分の1を目指す
・質問して、相手に話させる
 
⑤声を安定させる
・高いキー、早口にならないよう話す
・間(ま)を取る
 
「結論を先に言う」「短く話す」の2点だけでも、単純なことなのに、難しい。
 

◆何を言って、何を言わないか 


⑥全部を説明しない
・資料に書いてあること全部を話さない。飛ばしとばし気味に話す
 
相手は、似たようなケースを過去に知っており、先回りして予測できている。話す速度より、目で読む速度のほうが2~3倍速い。先まで目を通して、説明が終わるのを待つことがある。だから飛ばしぎみに話す。
 
 
⑦「原稿」を書く
・今から喋る内容の原稿を書く
・箇条書きにする
・喋るセリフそのまま書き出す。アドリブも書く
 
「書き出しておく」ことは、ものすごく有効。コスト対効果が大きい。
話す内容にかんするかぎり、人間の記憶力(=私や貴方の能力)を過信することは絶対にダメ。
また、原稿を用意する御利益として、「こちらが言い忘れても、相手が指摘してくれる」ことがある。わざと大きめの文字で書き、相手の目に留まるように置く。
 
 
⑧原稿を複数パターン準備する
持ち時間の変更に備えて「5分バージョン」「3分バージョン」「60秒バージョン」のようにあらかじめ数パターン準備する。


コラム: 話す時間を「調整」する
 
プレゼンやスピーチで、前の人までの時間が押したとき、どうするか。

・持ち時間の予定通り話す
・ほかの人も長く話したのだから、自分も長く話す
・予定より短く話す
 
と三つの選択肢がある。「予定より短く話す」のが良い。
 
・聞き手からみると、全体で1つ。スピーカーの数名で1つのかたまりと認識する。合計時間は想定通りのほうがうれしい。
・短く話すほうが有利である。手短に話して、合計時間の調整、全体最適の役まわりを買って出ると、心証は良くなる。
・前置きはなくていい。「時間が押しておりますので手短に」「雑駁ですが説明は以上です」と言わない。



◆我慢して、内容を絞りこむ

 
⑨一度にひとつ話す
一つの文に、一つのメッセージを入れる。混ぜない。凝らない。小細工しない。
 

⑩「形容詞」をつかわない
「形容詞=自分の感動」を強調しても共感されない。人を動かすのは説明者の「熱意」や「感情表現」ではない。
「実現可能性」と「相手にとっての価値」で決まる。
 
SNSで、形容詞を駆使したくなることがある(例:感動の、必見だ etc.)。
しかしこれらは「投稿者の」感動であって、相手には関係がない。「感動」は、保存・複製・転送ができない。熱く語る投稿に対して「いいね!」がつかないのは、この現象だ。
話すときに、形容詞を多用しないのも、これらを避ける効果があると考えている。

「実現可能性」・・・
何らかの呼びかけ、協力依頼を受けたとき、頭に浮かぶ問いの一つは、「実現性はあるのか」。出資なり賛同が、ムダになると萎えるからだ。
実現可能性の見えないことに参画するのは、とても勇気のいること。「パーティーを開催するから来てね」と誘われたとき、「行って、寂しい会だったらどうしよう(そこに居るイタい自分がイヤだ)」という不安感に似たものがある。
 
「相手にとっての価値」・・・
呼びかけられる側が受け取る価値は何か。
・自己研鑽や人脈や知識の場合:実益があること。有効であること。
・善意の貢献や人助けの場合:意義があること。他の選択肢のなかからそれを選ぶ意味があること。 
逆にいうと、「その人にとっての意味」を説明することができれば、"成功の確からしさ"は必須ではない。難度が高いことこそが説得材料になることもある。

人に話す、物事を説明するのは本当にむずかしい。得意な人は得意なんだろうけど、不得手というのはなかなか克服できないものだ。 
何もしないと現状維持どころかゆっくり劣化するから、仕方なく研究して、練習している。

 

2.練習する、「抽象化」と「事実」で話す

 
話すことはそれだけ難しいし、ほうっておくと劣化する。
それなのに、リモートワークの拡大、働いて稼ぐ方法そのものの変質によって(乱暴にいうと、終身雇用という保険が失くなって個々人の価値・プレゼンスが重要になった)、ウェイトはさらに上がっている。
 
だから対策が要る。「練習メニューづくり」「時間の確保」「抽象化と事実のバランス」あたりがポイントだと考えている。
 

◆「人に与える印象の三要素」

 
第一印象を構成する要素を、「ランニングコストがかからない」という条件で挙げると、
①体の使い方(例:手ぶり、頷き方、視線、立ち方)
②声の使い方(例:大きさ、高さ/低さ、話す速度)
だと考えている。
お金がかからない、つまり「直接お金で買うことができない」から、「練習次第で、かなり結果が変わる要素」と言ってもいい。
 
これに 
③会話する技術
を加えて、かりに「人に与える印象の三要素」とする。

「会話する技術」はさらに、「発信する技術」「受信する技術」の二つで構成されている。

これら二つの技術が威力を発揮するのは、もちろん「知らない人と話すとき」だ。

ふだん属しているコミュニティだと、「お互い知ってる前提」で話せる。要するに楽をしている。
ところが、コミュニティ外の人と話すときには、そうはいかない。話が通じないことに愕然とさせられる。
そんなとき、役立つパーツとしては、たとえば次のようなものだ。
 
「発信する技術」の例
・相手が知らないことを、わかるように説明する
・「貴方のことを理解しましたよ」と意思表示する
 
「受信する技術」の例
・知らないことを、興味関心を持って傾聴する
・分からないことを「教えてください」と質問する
 
かたまりとして見えているものを、一つのシステムとして記述する。そのシステムを、構成する各要素に分解できると、ずいぶん取っつきやすくなる。
 
当然、できないより、できたほうが有利だ。
 

◆すき間時間で、練習をする

好きなYoutuberのひとり、シェフ Ropia さん。プロの料理人で、経営者で、すごい質と量の発信をしている人だ。 
『飲食店経営 お店オープンまでに必要な事』https://www.youtube.com/watch?v=PklXekuRgbw

『皆さんどうぞ』では響かない。『いまYoutubeを見ている、28歳の男性で、来年結婚する貴方、彼女と一緒に食べに来てください』、このくらいでようやく伝わります

『飲食店経営 お店オープンまでに必要な事』10′10″あたりから

対象となる顧客を、たった一人に絞ってみよう。そのかわり、その「一人」は極限まで詳しい人物像を描いてみて、と言っている。
 
大勢、不特定多数に発信するのに、「ただ一人向けのつもりで話す」のは、「誰か一人に話しかけることで、それ以外の人がかえって注目する(耳をそば立てる)効果」があるからだろう。
「皆さん」と声かけすると誰も注意を払わない、「みんな」という人は存在しない、といった話も、同じことを言っていると思う。
 
※Ropiaさん「飲食店経営」シリーズは、話し方だけでなく、ものすごく勉強になる。「このレベルのコンテンツが無料で提供されている」という事実は、何かの「情報」を売りたい(値段をつけたい)ときの参考になる。だから定期的に視聴している。

苦手なことを勉強し直す時間はない。スキマ時間を上手に使うしかない
1000人にプレゼンするなら999人を捨てなさい
練習もしないで勝とうとしない

深沢真太郎さん『数学的コミュニケーション入門』より抜粋・意訳

深沢さんの「999人を捨てよ」は、Ropiaさんとまったく同じことを指摘したものだ。
 
サブタイトルにもある、「なるほど」と言わせる話し方。論理的な話し方。端的に伝えること。前にも触れたように、昔からヘタクソで、苦手意識を持ったままだ。
 
苦手なことは練習しなければ上達しないまま。それどころかさらに下手になる。練習とは、①単位動作を反復すること、②アウトプットすることだ。
 
アウトプットすることは、イコール「人前で恥をかくこと」とほぼ等しい。要するに苦痛を味わうことだ。
苦痛を、「成長痛です」ということは簡単で、耳ざわりがいい。現実にはそんなに美しくない。実際の成功率(投入した努力やエネルギーがロスせず変換される率)だって、そうそう高くない。
 
「アウトプットする」は言い換えると、「思い出すだけで嫌になる記憶を、わざわざ増やす行為」でもある。
 
 

◆何に時間を割くか:「内容」と「媒体」

 
人生の時間の質は、付き合ってもらえる人の質で決まる。付き合う人の質は、「自分が何を考えているか」ではなく「相手にどう伝わったか」で決まる。 
伝わらなければそれだけ人からの評価が下がる。または切られる。結果、それまでに費やした時間を捨てることになる。

「伝え方」は、たんに話し方(等)だけではなく、使う伝達の手段、タイミング、伝える場、間合い、、、といった様々な要素で構成される。いわゆる「距離感」の調整をまちがうと、仮に内容が正しくても、相手に拒絶されることがある。



人生の時間の質は、投入する時間の量で決まる。その内訳で決まる。
 
「話し方」について言えば、
 
①どれだけ練習を積むか と同じくらいに、
②いかにお手本に触れるか が重要になってくる。
 
「なにに時間をつかうか」を同じくこれまでよりも考えるようになったのと掛け合わせてみる。「話し方」が参考になり、かつ「内容」が学びになるのがいちばんお得だ。
 
 
・集中して聴けば、内容がためになる、
・聴き流しても、話し方が参考になる、
のようなイメージ。
 
 
かりに「評価計算テーブル」をつくると、
 
(内容)
 ・話し方が上手      =3点
 ・関心のあるテーマ(実益)=2点
 ・関心のあるテーマ(趣味)=1点
(フォーマット)
 ・聴覚だけで完結する   =2点
 ・視覚も拘束される    =1点
  
のようなイメージだ。
 
話メインのYoutuberか、音声のみの配信サービス(例:Voicy)が有力候補になる。
 
すこし前まで、「話す・書く・読む に関わるジャンル」を中心にしていた。「関心のあるテーマ(実益)」重視のラインナップだ。
最近はすこし軌道を修正して、「現在位置から一定の距離のある分野」を追加した。(例:財務分析、ミニマリスト、農業、地域開発、ジャーナリスト。好きなパーソナリティのおすすめを元に、関連検索でフォロー追加更新。)
 
それと、サブスク(有料課金)メニューの入れ替え戦を定期的におこなうようにしている。お金の問題よりは、捨てる練習、頭のなかのノイズを減らす練習だ。
  

◆賢い人はどうやっているのか


「抽象化」という言葉がある。Wikipediaによると「思考における手法のひとつで、対象から注目すべき要素を重点的に抜き出して他は捨て去る方法」とある。
 
「抽象的」とも言う。こちらのほうがなじみがある。検索すると「1.抽象してとらえるさま。2.具体性を欠くさま。物に即して考えたり述べたりしないさま」とある。子どもの頃から、新社会人になったのちも、2.の意味で言われてた。1.の意味(抽象化の意味)は、最近になって知ったように記憶している。
 
「抽象化」でググると、「結果を出している人は、抽象化と具体化を無意識に行き来している」といったフレーズがヒットする。①成功するための法則を抽象化で取り出して、②具体化で自分に置き換える、みたいなことだと思う。
 
大西哲也さん(同じくYoutuber、プロ料理人)が、
・料理のあるジャンルを研究しようと思ったら本棚の端から端まで読む
・相手のことを考えて、いろいろ試す。嫌われるかもしれないが距離を縮められるかも等、仮説を立てて話す
・インターネット検索と試行錯誤で自分を育てた。知らないことはGoogle keepにメモ。後で調べる
・自炊はしない。自分で作った料理(味があらかじめ判ってる)を食べたくない
と話していた。
 
仮に抽象化すると、
(1) やること(同時にやらないこと)を決めて、習慣化する
(2) インプットとアウトプット、両方やる

となるだろうか。
 
抽象化してみると、味気のない、一般論に近づく。あたりまえながら「抽象的」になる。ところが、賢い人がやると、そうならない。彼らは、それまで気づいてなかった共通の概念みたいなものを見つけて、取り出しているものと想像している。
一流と二流の差もそこらへんにあるのだろうと仮説を立てているのだけど、まだやり方は見つかっていない。
「抽象化」はテーマの一つとして取り組み続ける。
 
 

◆得意・不得意は増幅する

 
特にリモートワークに切り替わって、あれこれ考えたすえ、「とにかく、話す能力を訓練する」という結論にいたった。
今後の人生において「話し方=伝える技術」のウェイトが大きい。弱点を修正しないことには、どうしようもないな、という感覚、うす昏(ぐら)い危機感によるところが大きい。
 
テレワークを用いると、言語能力というのか、コミュニケーション力がより多めに求められると思っている。単純に、対面に比べて使える情報量が少ないからだ。

電話会議の場合、あたりまえだけども、音声だけで伝え、受け取る。
短めの文節で、届く声で、なるべくクリアに喋らないといけない。これが難しい。手みじかに、結論を話す習慣がついてないから、人一倍苦労する。
映像つき(テレビ会議)であっても、たとえば発声するタイミングを考えさせられる。相手側とぶつからないように、ほんのちょっとした間(ま)だ。また身ぶり手ぶりや、その場でささっと何か描いたり、は限界がある。
 
ふだん対面で使っている情報量があんがい多いと気づく。体の反応、身じろぎ、視線、顏の向き、息を一瞬吸う音。無意識にたくさんのメディアを利用しているのだ。
 

◆「事実」で話す

 
話すとき、技術や才能に関係なく有効なのが「事実をベースにする」ことだ。
 
上司が部下を指導するとき、「感情にまかせて叱責しないこと」「怒る ではなく 叱る である」という。部下が上司に報告するとき、「事実と推測をわけて話しなさい」などの言い方がある。
同じことを言っている。
 
例はいずれも仕事の場面だけど、プライベートの状況だと注意力がオフになることがある。

たとえばお店で出た料理が(期待したよりも)美味しくないと思ったとき、
「これ、まず~い!」と大声をあげる。もちろん、良い印象を与えない。
特に、同席しているのが「意中の相手」や「仕事上の重要人物」のとき、ささいな言動で、お付き合いが変わってしまうことがある。

二人以上で外食する場合、そこには何かの目的があるはずで、目的があるなら戦略があるはずだ。 
「戦略とは何か」をあえて一言で表現すると、『思いつきで行動しないこと』だと考えている。目的があって戦略があり「会食における会話」なら、『同席者に与える印象を管理する』がそれだ。

この場面でのおすすめは、「想像してたのと違いました!」(笑顔)
「不味(まず)い!」との違いは、「メニューを選んだのは自分であると認識してますよ、結果をユーモアをもって受け入れますよ」という情報が、セットされている点だ。
 
つまり、言外に
・私は自分を客観的に見ることのできる人間です
・立場の弱い相手(店員)にも攻撃的ではありません

という「補足説明」をしている。
 
お店への非難や誹謗(感情)ではなく、「自分はこう思ったよ」(事実)を話す。「感情」ではなく、あくまで「感想」として話す。推測ではなく事実を話す、ということだ。



「話す技術」は賞味期限の長いテーマだから、きっとまた続きを書くと思います。
 
次回は、「聴く技術」について整理してみます。

(つづく)

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