vol.135「就活の学生さんにかならず話していたこと。『質問』の目的は状況によって変わる。」
誰にでも特技・とりえはあるもの。私の場合「相手の話を整理する能力」「フィードバック(または質問)する能力」です。
役立てた場面のひとつが「就活支援」活動。自社のリクルーターとして、または出身校で、就活のお手伝いをしていた時期があります。他社を選んだ学生さんから「無事に配属されました」と御礼の連絡をもらったりしました。「利害関係が消失して気を遣う必要のない会社の人」へのフィードバックはフラットだと仮定すると、一定レベルのサービスを提供できていたものと自己評価(棚卸し)しています。
◆学生さんに、最初に話したこと。
学生さんにお会いしたら、かならず最初に話していたのが、「就活(企業から見れば採用活動)は、一見 受ける側が不利に見えるけど、実はイーブンなゲームだ」ということです。
STEP1.学生さんがエントリー登録するまで、企業側は何もできない。だから広告を打ったり、一生懸命PRする。エントリーしてもらえたら、セミナー等を通じて面接を受けてもらえるよう熱心に勧誘する。【就活生が有利】
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STEP2.面接になると、あれやこれや質問をする。採用側に選択権が移動する。「いついつ二次面接があります」とか「今回は御縁が」等と連絡する。【企業が有利】
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STEP3.合格を勝ち取ると、学生さんに選択権が移動する。「他社も受けてから決めます」となる。【就活生が有利】
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STEP4.内定すると企業側が再び有利に見える。でも辞退して他社を受け直す人はいる。だから企業側の人事はいわゆる囲い込みに躍起になる。【互いにイーブン】
以上をざっと話して、「要するに野球と同じで、攻撃と守備が交替で発生する。かならず選択権が移動します」と説明します。学生さんたちは はっと気づいた表情を浮かべます。
「面接を受けるとき、企業側が一見 圧倒的有利に見えるけど 実は錯覚です。『人事部門の誰それです』と言われると何となく気圧されする。単に生きてる年数の差です」
「相手の攻撃ターンだから、こちらが不利な感じがします。サッカーのPKに似てるかも。向こうは好きに質問する、こちらは答えるしかないから、なんだか追い込まれた気がする。でもそこをしのげば(合格すれば)選択権は移動します」
「その年代で、買い手市場、売り手市場 という大きな山波はあります。だけどそれも十年、数十年スパンで積分すると、プラスマイナス0周辺に収れんするはずです」
と補足すると、皆さんたいてい笑顔が出て、場がほぐれます。
どんなときでも、「いま自分が参加している場は、どういうルールで動いているゲームか(どんなルールが隠れているか)」を知ることは、落ち着けて取りかかるのに非常に有効なアプローチです。
この場合は学生さんが気づいてないことのほうが多いから、解説して、視点を提供しているわけです。
◆質問は選択権を持つ側がおこなう。
質問は「選択権」を持っている側が好きにおこなうことができます。「攻撃権」を持つ側、「PKを蹴る側」といったほうが正確かもしれません。
就職活動/採用活動の例でいうと、
企業側のターン:
「それはあなた以外でも出来たのではないですか」
「留年してるあいだ何か取り組んだことはありますか」
「他社の内定状況を教えてください」
学生さんのターン:
「何々についてもう一度詳しく教えてください(給与体系、異動や転勤、福利厚生」
「社員の方のお話を聞く場を設けていただくことはできますか」
といったことです。※イメージ例です。実際にはもっとやわらげて聞くものと思います
そして、例でもわかるように、質問は効率性を重視したものになります。
必要なことを、最短コースで、すこしでも詳しく知るために聞く。
こちらに攻撃権があって、このあとの選択(入社するかどうか・採用するかどうか)を間違えないようにしたいから、当然といえば当然です。
目的に合致する質問をする。関係のないことを質問する必要はありません。
◆質問の「効率性」は、目的による。
場面が変わると、質問の目的も変わります。「質問することが目的」になることもある。
何かの場で紹介された相手とのアイスブレイクがそうです。質問する→答える→関連質問をする→今度は自分が質問を受ける、、、と会話のラリーをつなぐと思います。内容の一つひとつはさほど問題ではない。話を続けながら打ち解けることが目的になっています。
組織の仕事でいうと、新しくチームメンバーになった人との1on1ミーティングもそうです。
チームリーダー側(いわゆる上司)は、メンバーの経験やスキル、得手不得手を把握したい。またはケアしたほうがいいこと、サポートが必要なことがあれば知りたい。
でも、その目的に向かって直線的に質問攻めにしたりはしません。出身や趣味や経歴を聞く。所感を言う。共通点があれば自分のこともシェアする。
「何度か行ったことあります。角の駄菓子屋のおばあちゃんってまだいるのかなぁ」
「いや、いまは息子さん夫婦に代替わりしてますよ」
という会話は、業務遂行という観点では直接関係ないように見えるけど、この場合は、質問と答えのやり取り自体が目的なわけです。
◆信頼獲得にはかならず「冗長性」がある。
この「一見ムダな会話」の意義を理解してないと、関係構築ができにくい。
リーダーが効率重視で会話したり、面談を手みじかに終わらせようとすると、メンバー(いわゆる部下)側は敏感に気づきます。あたりまえですよね。リーダーは別に人格的に優れているから抜てきされたわけでも何でもなく、役割として任命され、そこにいるだけだからです。ましてメンバーのほうが人生経験が長いようなケースではななおさらです。
リーダー→メンバーでも、メンバー→リーダーでも、信頼を獲得しようと思ったら、エネルギー効率100%、ムダ無し、ということはあり得ない。
この「冗長性」を、設計する、というと計算高い、恣意的に聞こえるけど、あらかじめ覚悟して臨むことが必要なのだと思っています。
以上、就活学生さんに話していたことから連想して、質問の持つ性質(目的によって変わる)についてのお話でした。
ムダ、空撃ちが必ず発生する(そもそもムダでは無いけど)、という感覚、「あらかじめ誰も保証してくれないのだ」という感覚を持つことが、人間関係を築くうえでとても大切だと考えています。
でも実際にはなかなかできない。効果があるかわからないこと、すぐに目に見えないことをあと回しにする。腰が引ける。このあたりはまた整理できたらシェアしてみます。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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