
vol.154「『こちらも見られているのだ』という感覚をもつこと。タクシー運転手さんの素敵なミニ授業。」
コロナ発生よりもずいぶん前のこと。大阪でタクシーに乗る機会がありました。
北新地・南新地では22時から翌01時までタクシーの乗降が法律で禁止されているんです、という話題から。
「乗せてくれたらええやん、と無理を言ってくるお客さんはいないですか」
「キタでは、接待等で使われるお客さまが多いからか、ほとんどいないですね」
「なるほど。たしなみ・お作法が身についているのでしょうね」
「相手の企業の方と同席ですから、観られている、ということで鍛えられているのだと思います」
「たしかに。酔って店員さんやタクシーの運転手さんにいばる人で、超一流のビジネスマンは少ない気がしますね」
「ええ、そう思います。大阪でも名のある企業に御用命頂くことが多いのですが、若い方でもしっかりされてます」
「そうですか。上司の方に教わるのでしょうね」
「そうですね。(降りる自宅の)『近くまでは来たのですがここからが少しわかりません』と言うと『では僕が道案内しますよ』と言ってくださったり、『途中、すこし寝るから起こしてください』とおっしゃって、起こすとぱっとすぐ起きられますね」
「人間の生まれつきの資質なんてそうそう差があるわけないから、環境や周囲の人の影響が大きいですよね」
「そう思います。訓練されているかどうかだと思います」
「偉くなったらなったで、指摘、進言してくれる部下がいるかどうかですね」
「そうですね。でも、一流企業の方は、偉くなる前の若いときから鍛えられて、ちゃんとされていますよ」
(目的地に到着)
「はい、お釣りです。お忘れ物のないように」
「ありがとうございます。お気をつけて」
飲食店の店員さんやタクシーの運転手さんを相手に、横柄な態度を取る人で、一流のビジネスマンはいない。そして、たぶん異性にも同性にもモテない。(※私の主観です)
社名を名乗らなくても、乗り降りする場所、会話で、(どこそこの社員だな) とわかる。
おだやかで温厚で、それでいて視点が鋭く含蓄ある、素敵な運転手さん。とてもためになるお話でした。
本来なら授業料を上乗せしてお支払いすべきところです。こういう体験をすると、とっても得した気分になる。
なにかのサービスを利用してお金を払うとき、また採用などの面接をするとき、自分の立場が上だと思い込みそうになるけど、
「こちらも見られているのだ(向こうも観察しているのだ)」
という感覚は、持っておいたほうがいいと思っています。
※「お客様は神様」は、サービスを提供する側が思えばいい(思わなくてもいい)ことであって、受ける側(お客)が言うことではない。
「お客のほうが偉いのだ」という主張は、よく考えてみなくても根拠がないからです。提供される価値と支払う代価は等価であって、「値段と同じかそれ以上の価値がある」と思うから購入するわけです。とすると、"得させていただいている"のはお客のほうだということになります。
自分の自由意思で商品を手に取り、得だと思って買っているのだから、威張ってよい理由がありません。
お客側が威張っていい正当な根拠はないのに、が多少横柄でも、提供者側が低姿勢にするのは、単に現金という道具のほうが、交換可能性が高いからです。「その道具を渡す人間のほうが立場が上」というのは単なる錯覚です。
最後までお読みくださりありがとうございます。
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