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よったり松坂亭(20年11月21日)

■演目
一、 オープニングトーク(一同)
一、 転校(信楽)
一、 金明竹(かしめ)
~仲入り~
一、 元犬(好二郎)
一、 浮世根問(談洲)

■所感
甘い汁を吸い尽くしたい信楽さんが発案、“劇団乞食”が企画する、談洲さん結婚記念会。
コロナ禍で始まったリモート落語会/雑談会のハイブリッド演芸会 第1回。『客が集まらない』と散々言っていたので、それこそ両手集まらないレベルかと思っていたが、蓋を開けてみれば20名強集客。確かにコロナ禍前であれば、このキャパでこの人数という話かもしれないが……とは言え、コロナ禍。最近、上野鈴本演芸場に行く機会があったので、この集客で十分では、と思ってしまう所、コロナ禍に常識を塗り替えられているのかもしれない。客構成は1名除いて全て女性客、年齢層は40代~が主という印象。演芸を、若手二ツ目を応援しているのが、この層という側面もあるだろうし、うしろシティのような売り方になっている側面もあるだろうし、という色々な複雑な想いを抱く客構成。ただ、今、足を運ぶ人が演者にとっての“客”だよな、というのは紛れもない事実で。

かしめさん「金明竹」。
配信担当の苦労を語りつつ、こしら一門特有の“制度の利点を見出す”圧に晒されている話、Bluetoothイヤホン話からの本編。与太郎が或る魔法の言葉に気が付いている所からフックが始まり、気になる点がチラホラ。身振り手振り、及び言葉の切れ目と息継ぎのタイミングが丁寧な道具七品の説明(寸志さんサポート)を楽しんでいる所で、トンッと或る設定が放り込まれて事態が一変。噺の見え方が、登場人物達の立場がグルッと入れ替わるのが面白い。

好二郎さん「元犬」。
“マカロニサラダ”用語解説、結婚式に足を運んだ際のプロ意識話からの本編。表情と声、仕草による、語られていない空間の描写力が巧い。シロと相対する登場人物、特に口入屋の主が見せる表情で見えない所でシロが何をやっているのか想像して、直後の台詞で答え合わせがされる楽しさ。また或る行動で制御出来ることに気が付いた後の、突拍子も無い事態に直面した後……数拍置いてからの……アノ行動という流れ。想定通りの仕草に繋がる、その煽られた期待感が実現する充実感を楽しんだ。

談洲さん「浮世根問」。
冒頭のプレーンな浮世根問で『あれ?この噺、あんま面白くないぞ』と思わせてからのシフトチェンジが楽しい。現代版にアレンジされた浮世根問は、現代用語の由来に始まり、そこから夢追い人・偽装人への遠慮無き罵詈雑言に繋がる劇薬構成。皆が知っている或るモノの名前の由来を無茶苦茶なこじつけで乗り切る……という基本線に対して、噺の中でポンッと出てきた或る用語『チルってる』が本当に会場の皆様が分かっていない雰囲気にゲラゲラ笑った。高野政所のチルミナティも、とんかつDJアゲ太郎も、チェアリングも知らないであろう今回の年齢層がリアルに頭の上にハテナマークを付けつつ、そこは知っている振りをしようとしている感じが、そしてそれを見て無駄な優越感に浸っている小さい自分も含めて、カオスな空間だった。
結婚を機に『落語本編に演者の本心が……』と言われるのに飽き飽きした演者が『それなら演者の本心、入れてやるよ』とばかりに超特濃の悪意を垂れ流している感じが最高だった。
以上

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